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概要
この記事は、ジャズの定番曲「Black Coffee」の解説を行っています。この楽曲は、様々なアーティストによって演奏されており、その歌詞の深い意味や解釈について触れています。著者は歌詞のポイントとなる部分を紹介し、異なるアーティストのバージョンの特徴を比較しています。
要約
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曲の紹介
- ジャズの定番曲「Black Coffee」、強烈なブルースフィーリング。
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ポイント1: Peggy Lee
- 1953年録音。クールでセクシーな歌唱が印象的。
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ポイント2: Sarah Vaughan
- 1949年録音。ジャズ的な仕掛けが多く、多彩な表現。
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ポイント3: Marianne Faithfull
- 2008年録音。不完全ながらも説得力のある表現。
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ポイント4: 歌詞の意味
- 恋の不安を抱える女性が眠れぬ夜を過ごす様子を描写。「ブラックコーヒー」を飲むことで、待つ気持ちを表現。
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ポイント5: ブラックコーヒーの理由
- 眠れないから余計に飲む、興奮効果を期待するため、苦い味が恋の終わりを暗示。
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ポイント6: 曲の構成
- AABA’ 構成。メロディに抑揚が少ないため、ブルースフィーリングを出すことが重要。
- ポイント7: 様々なバージョン
- 多数のアーティストによる異なるバージョンの紹介(Maria Muldaur, Ray Charlesなど)。
このように、記事は「Black Coffee」の歌詞とその解釈、アーティストの違いに焦点を当てて詳細に説明をしています。
ジャズ(ボーカル)セッションの定番曲。強烈にブルースフィーリングを感じる曲です。歌詞の内容を少し深掘りしてみましょう。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Peggy Lee
1953年録音。Peggy Leeのクールなセクシーさが際立つ名唱です。メロディには抑揚があまりなく劇的な展開も無いので、ブルージーな雰囲気で引っ張る歌唱力が必要。演奏も含めて、この曲が今ラジオから聴こえてくると一気に1950年代にタイムスリップしたような良い意味の違和感があります。
この歌唱の印象が強いのでアレンジしくにく曲だと思われがちですが・・・
ポイント2:Sarah Vaughan
こっちの方が実は早い1949年録音。Peggy Leeバージョンと比べるとこちらはジャズっぽい仕掛けが沢山ある演奏/歌唱。私はこの人の大袈裟なビブラートがどうも好きになれないのですが、発声のバリュエーションが多彩でこの単調な曲に様々な表情を付けています。
ポイント3:Marianne Faithfull
2008年録音。色々あった人。すっかり声も枯れて、基本的に歌の上手い人ではありません。だからこそこういう曲を歌う時の説得力は半端ないです。ずっと可憐で綺麗なままでいる女性よりも、年齢を重ねて得た個性のある女性の方がこの曲には似合うのかもしれません。
ポイント4:歌詞のポイント
I’m feelin’ mighty lonesomeHaven’t slept a winkI walk the floor and watch the doorAnd in between I drink
Black coffee
Love’s a hand-me-down brew
I’ll never know a Sunday in this weekday room
恋する(大人の)女性が、態度のハッキリしない恋人にヤキモキして、落ち着かない夜を過ごしている様子を描いた歌詞です。眠れないから「(濃い)ブラックコーヒー」を飲む、さらに眠れなくなる、という図式。
彼女は自分の部屋を歩き回って、恋人がやってくるかもしれないドアを見つめている、その合間にコーヒーを啜る。眠る為ならお酒の方がいいのでしょうが、恋人が来たのに気づかないと嫌だからコーヒーにしているのかな。
「Haven’t slept a wink」は「一睡もしなかった(瞬きすらしなかった)」という表現です。
「hand-me-down」は「誰かのお下がり」「二番煎じ」要は新鮮さが無いという意味。「brew」とあるので「出涸らしのコーヒー」みたい、だと。
恋人は離れた街に住んでいるのか、会えるチャンスは日曜日だけのようです。だから土曜日の深夜にやってこない場合には、また一週間待つ日々を過ごすことに。(不倫の関係ならむしろ週末に会えないというのがよくある設定ですね)
I’m talkin to the shadowsOne o’clock till fourAnd Lord, how slow the moments goWhen all I do is pour
Black coffee
Since the blues caught my eye
I’m hangin’ out on Monday, my Sunday dreams to dry
彼女は真っ暗部屋で夜中の1時から明け方4時まで独り言を呟きながら過ごしています。手持ち無沙汰でコーヒーを注いで飲みながら。
「the blues」は音楽ではなくて「憂鬱(な気分)」ですね。結局のところ恋人は現れず、素敵に過ごすはずだった日曜日は訪れず、つまらない月曜日がやってくる。
「I’m hangin’ out on Monday, my Sunday dreams to dry」は詩的な表現で解釈が色々ありますが「日曜日に泣いた枕を、月曜日に干して乾かす」みたいな感じで「涙」を暗示させるのもアリだと思います。
Now a man is born to go a-lovin’A woman’s born to weep and fretAnd stay at home to tend her ovenAnd down her past regrets
In coffee and cigarettes
古臭い典型的な男女像。男は奔放に生き、女は家に篭って泣き嘆く。美味しいものを作ってあげようとオーブンを磨く。コーヒーとタバコで気を紛らわせる。この歌詞が書かれた1948年当時でも少し陳腐な設定だったかもしれません。
ジャズの歌詞には珍しい「匂い、香り」も漂ってきますね。香ばしく苦いコーヒーの香り。そのほろ苦さは主人公の気持ちも反映しています。
ポイント5:「ブラックコーヒー」をわざわざ飲む理由
余談その1:「ブラックコーヒー」をわざわざ飲む理由
諸説ありますが、米国で(苦い)ブラックコーヒーを好んで飲む人の割合は4割程度と意外と少ないと言われています(クリームを入れないものがブラック、だから砂糖は入っている場合もある、とも)。恋人を待って眠れない、眠らないようにする為に、夜中なのにブラックコーヒーを飲んでいる、という設定。しかもタバコに合うのはブラックコーヒー。
余談その2:「ブラックコーヒー」をわざわざ飲む理由
特に女性がブラックコーヒーを飲むのは、鎮静効果よりもカフェインの興奮効果を期待している、という設定。恋人が訪れたらお酒に切り替えるのでしょうが、そこまで気持ちと身体を高めておく為に。
余談その3:「ブラックコーヒー」をわざわざ飲む理由
口の中に残る苦い味。それがこの恋の行方を暗示しているのかもしれません。なかなか寄り添ってくれない恋人。キスの味さえ苦い。
余談その4:「ブラックコーヒー」をわざわざ飲む理由
これは穿った解釈ですが、待っている恋人の肌の色を暗示しているのではないか、と。夜の闇に紛れてやってくると期待している恋人の真っ黒な肌。特に白人女性歌手が歌うとこの背徳感が増します。1950年代にはまだまだ異人種間恋愛はタブーでした。
ポイント6:曲の構成
下記は男性キーのリードシートです。AABA’ 構成。Aパートはメロディに抑揚が少なく低音域が続くので、いかにブルースフィーリングを出すかがポイントです。 Bパートでは音域があがりますが、やはりメロディに抑揚があまりないので、譜面通りに歌っても面白みが無いので、工夫のしがいがありますね。
リー7ドシート例(途中まで)
ポイント7:様々なバリュエーションを聴いてみましょう
Maria Muldaur、2003年録音
Peggy Leeに捧げたアルバムの中の一曲。
Chris Connor, Maynard Ferguson、1961年録音
派手なトランペットのオブリが絡む歌唱
Sinéad O’Connor、1992年録音
Ray Charles、1957年録音
ピアノでのインスト演奏
Sonny Criss、1966年録音
優しい音色のサックス演奏で、過剰にブルージーにならず好感が持てます。
Canned Heat、2003年録音
これは完全にブルースに降った演奏/歌唱。
Bobby Darin、1960年録音
深みは無いが、ジャズ歌手の一面も持っていたBobby Darin。The Beatlesが1960年代の米国のポピュラー音楽シーンを滅茶苦茶にしてしまった時代の犠牲者のひとりでした。
◼️歌詞
I’m feelin’ mighty lonesomeHaven’t slept a winkI walk the floor and watch the doorAnd in between I drink
Black coffee
Love’s a hand-me-down brewI’ll never know a Sunday in this weekday roomI’m talkin to the shadowsOne o’clock till fourAnd Lord, how slow the moments goWhen all I do is pour
Black coffee
Since the blues caught my eyeI’m hangin’ out on Monday, my Sunday dreams to dryNow a man is born to go a-lovin’A woman’s born to weep and fretAnd stay at home to tend her ovenAnd down her past regretsIn coffee and cigarettesI’m moanin’ all the morningMoanin’ all the nightAnd in between it’s nicotineAnd not much heart to fight
Black coffee
Feelin’ low as the groundIt’s drivin’ me crazyThis waitin’ for my baby
To maybe come around
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