近年はスマートフォンの急速充電技術が普及しており、スマートフォン黎明(れいめい)期とは比べものにならないほどの速度でバッテリーを充電することができます。そんなスマートフォンの急速充電規格にはさまざまな種類があるということで、バッテリーに詳しいGitHubユーザーのEb43氏が多種多様な急速充電規格について解説しています。

How to quickly charge your smartphone: fast charging technologies in detail
https://eb43.github.io/articles/fast-charging-technologies-in-detail.html


常にスマートフォンが手放せない現代では充電スピードが重要視されていますが、仮に「夜寝る前にスマートフォンに充電ケーブルを挿し、翌朝になってケーブルを抜けば1日中充電が続く」という条件であれば、古いフィーチャーフォンのような低電力充電が理想的だとのこと。これらの充電器では2~5Wほどの小さな電力出力を維持し、アダプターの電力とバッテリー容量に応じて5~7時間ほどかけて充電を行います。

このような低速充電はバッテリーの寿命を延ばす上で理想的であり、劣化を最小限に抑えることができるそうです。複数のスマートフォンバッテリーを用いて5Wと25Wの充電を比較した実験では、25Wの充電は100日ごとに最大1.6%のバッテリー劣化につながることが示されました。

しかし現代では、夜だけでなく日中や外出先でスマートフォンの充電が残りわずかになることも多く、充電器へ接続したまま数時間ほど放置することが難しくなっています。そのため、数十分~1時間ほどで大幅にバッテリーを回復できる急速充電が必要とされているというわけです。なお、「急速充電」の定義も時代と共に移り変わってきましたが、Android 15以降では充電器が少なくとも20Wの電力を供給した場合、スマートフォンに急速充電の通知が表示されるようになっています。


一口に急速充電と言ってもその規格はさまざまであり、スマートフォンと充電器が同じ規格をサポートしていない場合、急速充電を行うことはできません。Eb43氏は、世の中に存在するさまざまな急速充電規格を紹介しています。

◆USB PD(USB Power Delivery)
USB PDはスマートフォンだけでなくタブレット・ノートPC・ゲーム機、周辺機器などで使われる最も一般的な急速充電規格であり、USB Implementers Forum(USB-IF)という団体によって作成されました。USB PDの特徴としてはUSB Type-C接続のみをサポートしている点が挙げられ、USB Type-Aコネクターはサポートしていません。

USB PDにはさまざまなバージョンが存在しています。USB PD 1.0では5V・12V・20Vの電圧パラメーターに対応しており、USB PD 2.0/3.0では5V・9V・15V・20Vに対応、記事作成時点で最新のUSB PD 3.1では28V・36V・48Vにも対応しています。最大電力はUSB PD 1.0/2.0/3.0が100W、USB PD 3.1が240Wです。

◆Qualcomm Quick Charge(QC)
QCはチップメーカーのQualcommが策定した急速充電規格で、Qualcommプロセッサを搭載するさまざまなスマートフォンで利用可能となっています。QCにはいくつかのバージョンがありますが、記事作成時点で最新のQC 4/4+/5はいずれもUSB PDと互換性があり、最大100Wで充電することができます。

◆MediaTek Pump Express
台湾の半導体メーカーであるMediaTekが策定した急速充電規格がPump Expressであり、Eb43氏は「QualcommのQCと非常によく似た独自の急速充電規格」と形容しています。記事作成時点では、すでにMediaTekはPump Expressを積極的に推進していないようですが、約10年前に導入されたPump Express 4.0はUSB PD 3.0と互換性を持っているとのこと。

2016年に発表されたPump Express 3.0は充電に伴う発熱問題を解決するため、「スマートフォンに内蔵された充電制御回路を経由せず、アダプタから直接バッテリーだけに電流を流せるようにする」という仕組みを導入しました。この「DIRECT CHARGING」という給電方式により、Pump Express 3.0はスマートフォンの発熱を大幅に軽減することができました。

スマホのバッテリーを20分でゼロから70%まで充電できる世界最速の充電規格「Pump Express 3.0」 – GIGAZINE


◆Voltage Open Loop(VOOC)およびSuperVOOC
VOOCおよびSuperVOOCはRealmeやOppoなどのスマートフォンで使用できる急速充電規格ですが、親会社のBBKがサードパーティーの充電器メーカーに対するライセンス供与に消極的なため、スマートフォン購入時に付属するケーブルと充電器を使った場合にのみ急速充電可能となっています。

VOOCは2014年に初めてリリースされ、当時標準だった5V/2Aの充電規格に対し、5V/4Aをサポートして2倍の充電速度を提供しました。さらにその2年後にリリースされたSuperVOOCは、サポートするスマートフォンにデュアルセルバッテリーが備わっており、充電コントローラーがスマートフォンではなく充電器にあるという設計により、発熱を軽減しているとのこと。記事作成持点で最新のSuperVOOC 240Wでは、その名の通り最大240Wで充電できます。

◆Mi Turbo ChargeおよびXiaomi HyperCharge
これらはXiaomi・Poco・Redmiのスマートフォンと、それに付属するケーブルおよび充電器を使用した場合にのみ機能する急速充電規格です。Mi Turbo ChargeはXiaomiが提供した初期の急速充電技術の名称であり、記事作成時点ではXiaomi HyperChargeという名称になっています。Xiaomi HyperChargeで使用されるUSB Type-Aコネクターには、通常の4ピンではなく5ピンの物理的接点があり、通常のUSB Type-Aコネクターでは動作しません。


なお、Xiaomiは販促資料で最大120Wの充電をアピールしていますが、これが機能するのは240Vの電源コンセントに接続した場合のみであり、日本やアメリカを含む多くの国々では最大96Wにとどまるとのことです。

◆Motorola TurboPower
以前のモトローラは標準規格の急速充電手法を採用していましたが、最新のモデルでは独自規格のMotorola TurboPowerを使用しています。最新の充電器を用いた際の最大電力は125Wです。

◆Samsung Adaptive Fast Charge(AFC)およびSuper Fast Charge(SFC)
AFCとSFCはSamsungが提供する急速充電規格であり、AFCは最大18Wを供給し、最新のSamsungスマートフォンのほとんどと互換性があります。一方のSFCには最大25Wで充電できるSuper Fast Charge 1.0と、最大45Wを供給するSuper Fast Charge 2.0の2つのバージョンがあり、Super Fast Charge 1.0はUSB PD 3.0と互換性があります。

◆Huawei Fast Charge Protocol(FCP)およびSuperCharge Protocol(SCP)
FCPとSCPはHuaweiが推進する急速充電規格で、2015年にリリースされたFCPは最大18W、2016年にリリースされたSCPは最大100Wで充電できます。SCPにはさまざまな電圧と電力の組み合わせが含まれており、最新のMate 20 Pro・Mate 40 Pro・P60 Proなどのモデルにも搭載されています。


◆Anker PowerIQ
急速充電規格はスマートフォンやプロセッサのメーカーだけでなく、充電器やUSBケーブルを製造するAnkerも独自の規格であるAnker PowerIQを持っています。記事作成時点で最新のAnker PowerIQ 3.0は、USB PDおよびQC 3.0と互換性があり、最大100Wの充電が可能です。

なお、AppleもiPhoneユーザーにFastChargeと呼ばれる急速充電技術を提供していますが、これは単なるマーケティング名であり、実際のiPhoneではUSB PD規格が使用されているとのことです。

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