金曜日, 5月 16, 2025
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スピンオフ作品に興味が湧かない問題~「キャラクターで物語を見てない」の反証になる?~楠乃木 千早

🧠 あらすじと概要:
この記事は、キャラクターを重視しない視聴者の視点からスピンオフ作品に対する興味の薄さを考察しています。著者の楠乃木千早氏は、キャラクターの選択や感情を重視せず、物語の展開を楽しむスタイルを持っています。その結果、人気作品のスピンオフに手を伸ばさない傾向があることを示します。

記事では「スター・ウォーズ」のスピンオフ、特に「ローグ・ワン」と「ハン・ソロ」の比較を通じて、物語重視のアプローチとキャラクター重視のアプローチの違いが論じられています。「ローグ・ワン」は新しいキャラクターを紹介しつつ、既存のストーリーに疑問を投げかける内容であるのに対し、「ハン・ソロ」はキャラクターのバックストーリーに焦点を当てているため、特定のキャラクターに興味がある観客にしか響かない可能性があると指摘します。

最終的に、キャラクターと物語は不可分であり、魅力的な物語がキャラクターへの興味を引き出すことを理解し、著者自身の視点も広がったという考察が締めくくられています。

スピンオフ作品に興味が湧かない問題~「キャラクターで物語を見てない」の反証になる?~楠乃木 千早

楠乃木 千早

こんにちは。

長編シリーズ作品大好き&「キャラクターに興味ない」視聴者代表、楠乃木千早です。このでは散々書いていることなのですが、僕は「キャラクターに興味がない、キャラクターで物語を見ない」ことをよく言っています。キャラクターがなぜその選択をしたのか?と言うことに着目せず、選択の結果の「物語的展開」を味わっているタイプの視聴スタイルと言えます。

そのため、繊細な感情のやり取りを描く日常ものの作品より、冒険ものやSF、ファンタジー作品を好む傾向にあります。

ただ、長編シリーズの作品を見ているときに、主人公が違うスピンオフ作品をなかなか見ないなあ…ということに気づきました。

代表的なもので言うと「ハリーポッター」シリーズのスピンオフである「ファンタスティック・ビースト」「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前日譚「ホビット」シリーズ「ブレイキング・バッド」のスピンオフ「ベター・コール・ソウル」「ゲーム・オブ・スローンズ」の前日譚「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」など。これらは人気作品であるために各種スピンオフが制作されているわけですが、公開されても見る気がなかなか起きず、公開からしばらく経って見ても1作のみで止まったり…ということがよくあります。皆さんもこういうことってありませんか?

一度完結したシリーズをもう一度見始めるのは意外と大変なんだよな、というのもありつつ、でも同じシリーズの作品群なら完全新規の作品よりハードルが低いはずなのに、なぜ?とも思うのです。

僕の場合、物語をキャラクターで見ないなら、世界観が同じ別主人公のスピンオフ作品に手を出さない理由はなんだろう?同じ世界観で展開される物語なら、同じ読後感を求めてスピンオフを見るはずでは?という疑問が浮かんだと言うわけです。そして、受け手としては「物語重視」で良くても、「製作者」としてはキャラクターについて理解することを避けられないと思っています。

そこで、「スピンオフ作品に手をつけない」問題から、自分は物語に何を期待しているのかを考察していきたいと思います。

・「スター・ウォーズ」の2つのスピンオフ映画~「ローグ・ワン」と「ハン・ソロ」は何が違ったか?~

今回の考察は、スピンオフ作品を「見た」シリーズで考えていきます。対象作品はSF冒険映画の金字塔「スター・ウォーズ」。本編映画シリーズはスカイウォーカー・サーガと呼ばれる9本の映画と、2本のスピンオフ映画があります。おおまかに以下のシリーズに分けられます。エピソード4~6…オリジナル・トリロジー(旧三部作、1977~1983年)エピソード1~3…プリクエル・トリロジー(新三部作、1999~2005年)エピソード7~9…シークエル・トリロジー(続三部作、2015~2019年)そして、制作元のルーカスフィルムをディズニーが買収した後に2本のスピンオフ映画が制作されています。それが「ローグ・ワン」と「ハン・ソロ」です。この2本の映画が「何を」スピンアウトしているかについて、以下にまとめます。・ローグワン(2016年/ギャレス・エドワーズ監督)

時系列はエピソード4「新たなる希望」の直前。「新たなる希望」に登場する巨大兵器「デス・スター」の設計図をどのように盗んだのか?を描く。

観客はEP4を見ているので、デス・スターが本編主人公ルーク・スカイウォーカーによって破壊されることは知っている。・ハン・ソロ(2018年/ロン・ハワード監督)SWシリーズの人気キャラクター、ハン・ソロの若い頃を描いた作品。

時系列は「新たなる希望」の10年前。ソロの相棒チューバッカや悪友カルリジアン、愛機ミレニアム・ファルコン号との出会いを描く。

ローグ・ワンとハン・ソロはそれぞれEP4~6の旧作シリーズ(オリジナル・トリロジー)からスピンアウトされた作品という共通点があります。より厳密に言えば、第1作「新たなる希望」からのスピンオフと言ってもいいでしょう。では何が違うのかと言えば、「ローグ・ワン」はEP4のサイドストーリーで、「ハン・ソロ」はソロというキャラクターのバックストーリーということです。

物語のスピンオフか、キャラクターのスピンオフかというのが大きな違いです。

・「ハン・ソロ」はターゲット層が狭い?ソロは密輸業者で借金を抱えている悪党であり、現実を生き抜くために悪に染まっているが、根っから悪い人間ではないという、かなり俗っぽいキャラクターです。「ソロ」がキャラクターのバックストーリーを描く作品だということは、少なくとも彼のことを知っている人でないと手を出しにくい作品であるとも言えます。

映画を見にいくかどうかは、キャラクターの魅力にかなり依存すると言えるでしょう(もちろん彼はシリーズ屈指の人気キャラクターなので、会社としても勝算があってのことだと思います)。

しかし、僕の場合はソロというキャラクターが特別に好きなわけではありません。好みとしてはルークの方が好きです。少年時代の僕から見れば、悪党でシニカルなソロより純朴で英雄らしいルークの方が魅力的に見えていたのだと思います。しかし僕もSWファンを自称していますから、もちろん公開当時に劇場へ行きました。ただ感想としては、面白かったとは言えるが感動はないといった具合でした。若かりし頃の人気キャラクターや死んだと思っていたヴィランが再登場しただけでは、物語として面白かったとは言えないな、と思ったものです。

アイデア力、企画力といった点から見れば、「ハン・ソロ」はその力が弱いと言えるでしょう。

・「ローグ・ワン」はキャラクターをイチから知っていける作品である「ローグ・ワン」の企画の素晴らしい点は、「デススターにわかりやすい弱点があるのはなぜなのか?」というファンの長年の疑問に対してのアンサー作品である、ということです。ファンにとっては「長年の謎がついに解ける!」というフック(=企画としてのアイデア)があり、本編のスピンオフ企画として実に秀逸でした。観客の興味は「どのようにデススターの設計図を盗み出したのか?デススターの弱点はなぜ存在するのか?」という部分を軸に映画を追っていくことになります。物語開始時点ではどのキャラクターも過去作品には登場していないので、観客は作品を見ていく過程でイチから彼らのことを知っていくのです。

「ローグ・ワン」はスピンオフ作品ではありますが、主要キャラは全て新規登場なので、観客の間口は広いと言えるかもしれません。

・「ローグ・ワン」がさらにスピンオフ化されたのはなぜか?「ローグ・ワン」は興行的にヒットし評価も高かったため、メインキャラクターである反乱同盟軍将校キャシアン・アンドーのスピンオフドラマがさらに制作されました。(つまりスピンオフ映画のさらにスピンオフ作品)

コンテンツビジネスにおいての大きな収入源は「キャラクタービジネス」ですから、魅力的なキャラクターを作ることができれば、それを収益化していこうと考えるのは会社としての自然な流れです。

映画とそのスピンオフ作品という関係から考えれば、「ハン・ソロ」と「キャシアン・アンドー」がその相似形であると言えます。

ここから考えられることは、・エンタメ作品において、企画よりも先にキャラクターを好きになることはないということ。魅力的な物語を追っていくうちに、キャラクターに対する興味が生まれるということ。・キャラクターのスピンオフ作品においては、そのキャラクターの魅力が作品の成功に依存する。

・最終的にはキャラクターの好感度がビジネス的訴求力(=漫画作品における単行本の売れ行きや、映画の興行収入)と関連づけられるということ。

・キャラクターの魅力とはそのキャラが抱えている「物語」なのか?冒険活劇であるSWシリーズにおいて、キャラクターの過去は明かされないことが多い。そのバックストーリーを明かすのがスピンオフ作品であると言える。

「なぜこのようなキャラクターになったのか?」という疑問が、キャラクターへの興味を掻き立て、そのキャラクターの物語を見たくなるのかもしれない。

ということで、「キャラクターに興味ない問題」について考えてきました。物語を重視している、という自覚がある僕ですが、「物語」そのものがキャラクターを作り上げていると考えられる、ことに気付きました。

「キャラクター」と「物語」は不可分で、連動しているものだということが言えるかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました。

楠乃木 千早

昼は社会人、夜は新人漫画家としてお絵描きしているアラサー男です。主に創作に関するハラのナカに溜まったものを吐き出します。たまに漫画に関するお役立ち情報、日常エッセイなど。



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