キーコーヒー2025年3月期決算を読み解く：コーヒー業界に何が起きているのかとつきコーヒー　宵月の星雫ロースター

朝のひとときにをはじめ、生活に彩を加えるのに欠かせないコーヒー。その背景で、実は業界全体が大きな変化の波に直面しています。創業100年を超える老舗、キーコーヒーの最新決算からは、私たちが普段飲んでいるコーヒーを取り巻く環境の変化が鮮明に見えてきます。

決算のポイント：売上は好調、でも利益は厳しい現実

要するに何が起きた？ 売上高は778億円と過去最高を更新したものの、営業利益は前年比20.6%減の6億円に大幅ダウン。理由はシンプルで、コーヒー豆の値段が歴史的なレベルまで上がってしまったから。

これって実は、コーヒー好きの私たちにとっても他人事ではない話なんです。

コーヒー豆価格の衝撃：なぜこんなに高くなった？

キーコーヒーの決算資料で一番驚いたのが、コーヒー生豆の価格推移グラフ。2024年春から急上昇し、今年に入ってからは「過去5年で最高」という未体験ゾーンに突入しています。

何が価格を押し上げているのか

気候変動の影響が深刻になっています。ブラジルやベトナムといった主要産地で、干ばつや霜害が頻発。良質なアラビカ種の収穫量が大きく減っているんです。

円安も追い打ちをかけています。1ドル150円超えが続く中、輸入に頼る日本企業にとってはダブルパンチ状態。

さらに、コモディティ市場への投機資金流入も価格を押し上げる要因になっています。

事業の中身を見てみると

コーヒー関連事業：主力なのに苦戦中

売上は698億円（6.4%増）と好調な一方、営業利益は10億円（13.2%減）。これが原材料高の直撃を受けている証拠です。

でも、面白い取り組みもたくさんやっています。

注目の新商品・サービス

• ニュージーランド産のコーヒー用フレーバーシロップ「SHOT」を日本初導入

• 家庭用ブランド「KEY DOORS+」で商品ラインアップを大幅拡充

• 廃棄予定だったコーヒー豆の麻袋を使った環境配慮パッケージを世界初採用

特に「KEY DOORS+」は発売1周年で、カフェインレス、水出しコーヒー、大容量タイプなど、多様な飲み方に対応した商品を次々投入。コーヒーの楽しみ方が広がっているのを感じます。

飲食関連事業：イタリアントマトが復活

前年14百万円の赤字から26百万円の黒字に転換。地道な改善努力が実を結んだ形です。

• 食材の廃棄ロス削減

• 店舗オペレーションの徹底改善

• 毎月の季節限定メニュー投入

こういう基本的なことの積み重ねが、結果につながっているんですね。

お金の流れから見える現実

貸借対照表を見ると、在庫が大幅に増えています。

これは価格高騰を受けた戦略的な備蓄の側面もありそう。一方で、短期借入金も約29億円増えており、運転資金の確保に苦労している様子がうかがえます。

未来を見据えた取り組みが興味深い

「コーヒーの2050年問題」への本格対応

気候変動で2050年にはコーヒー栽培適地が半減するかもしれない、という深刻な問題があります。キーコーヒーは2022年に「コーヒーの未来部」という社長直轄部門を設立して、この課題に正面から取り組んでいます。

具体的な取り組み

• 国際研究機関ワールド・コーヒー・リサーチのアジア初ボードメンバーに社長が就任

• 産学官連携による品種改良・生産技術革新

• 小規模生産者支援プログラムの拡充

愛知の工場で再エネ100%達成

中部工場（愛知県春日井市）では、太陽光発電などで使用電力をすべて再生可能エネルギーに切り替え完了。「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」というメッセージを、ちゃんと行動で示しているのが印象的です。

値上げは避けられない現実

原材料高への対応として、段階的な価格改定を実施中。

• 業務用：取引先への納入価格を順次改定

• 家庭用：2024年8月と2025年3月に出荷価格改定

急激な値上げで需要を落とさないよう、段階的にコストを転嫁する戦略。消費者としては痛いですが、品質維持とサステナビリティ実現のためには必要な措置なのかもしれません。

来年はどうなる？

2026年3月期の業績予想：

• 売上高：850億円（9.1%増）

• 営業利益：7億円（15.2%増）

価格改定効果が本格化することで、収益性の改善を見込んでいます。とはいえ、原材料価格の動向次第では、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。

これからのコーヒー業界はどう変わる？

短期的な課題

原材料価格の高止まりは当面続きそう。企業側は価格転嫁を進める一方、消費者の価格感応度も上がってくるでしょう。為替リスクの管理も重要課題です。

長期的な変化

従来の「安ければいい」から「品質・付加価値重視」への転換が加速しています。

• プレミアムコーヒー市場の拡大

• サステナビリティへの関心の高まり

• 新興国での需要増加

• 技術革新による新しいコーヒー体験

私たちコーヒーファンにとって何が変わる？

短期的には お気に入りのコーヒーの値段が上がるのは避けられなさそう。でも、その分品質向上やサステナビリティの実現が期待できます。

長期的には

• より多様なコーヒー体験の選択肢

• 生産者との距離が近いトレーサブルなコーヒー

• 環境に配慮したサステナブルなコーヒー

• 技術革新による新しい抽出方法や保存技術

まとめ：変化を楽しむコーヒーライフを

キーコーヒーの決算を通じて見えてきたのは、コーヒー業界が大きな転換点にあるということ。確かに価格上昇は痛いけれど、その背景にある生産者支援や環境保護、品質向上への取り組みを知ることで、一杯のコーヒーをより深く味わえるのではないでしょうか。

創業100年の老舗が次の100年に向けてどんな挑戦を見せてくれるのか。コーヒー好きとしては、その変化を楽しみながら見守っていきたいと思います。

毎朝のコーヒータイムが、少し違った意味を持ってくるかもしれませんね。

この記事は公開されている決算資料をもとに作成しています。投資判断は自己責任でお願いします。