土曜日, 7月 19, 2025
土曜日, 7月 19, 2025
- Advertisment -
ホーム財務分析キーエンスはなぜ、EC事業に参入したのか?金入 常郎/経営コンサルタント

キーエンスはなぜ、EC事業に参入したのか?金入 常郎/経営コンサルタント

🧠 概要:

概要

キーエンスは、2025年から製造業向けの電子商取引(EC)事業に参入した。この記事では、その理由や背景を探求している。キーエンスはファクトリーオートメーション(FA)分野で高収益を上げており、EC事業はその事業モデルの拡大を目指す戦略の一環とされている。

要約の箇条書き

  • 企業概要: キーエンスは工場の自動化や省力化に特化した高収益企業。
  • 決算情報:
    • 売上高: 1兆591億円
    • 営業利益: 5497億円 (営業利益率: 51.9%)
    • 売上総利益率: 83.8%
    • 自己資本比率: 94.5%
  • ビジネスモデル:
    • フィットした製品を提供する「直販」「顧客に合わせた独自開発」に重きを置く。
    • ファブレス企業であり、製造コストを低く抑えている。
  • EC事業参入:
    • メイカーズという子会社を通じてFA関連部品を扱うECサイトを開設。
    • ミスミグループとの競合関係を意識。
  • 参入の狙い:
    • 付加価値最大化を実現することで製造原価を低減。
    • 顧客の取引効率を向上させ、品質や商品力を強化する狙いがある。
  • 将来の展望: ものづくりの国際競争力を保つための戦略としてEC事業が重要視されている。

キーエンスはなぜ、EC事業に参入したのか?金入 常郎/経営コンサルタント

こんにちは、お金が入るでかねいりです。

2025年4月24日の日経新聞に「キーエンスがEC開始」という記事がありました。キーエンスと言えば、高収益企業として有名な企業です。
そこで今日は、なぜキーエンスがECサイトに参入をしたのかについて調べて考えたことをお伝えできればと思います。

■キーエンスの特徴

キーエンスは、工場の自動化・省力化(ファクトリーオートメーション:FA)の分野において、センサー、計測機器、画像処理システムなどの製品を開発している企業です。

2025年3月期の決算短信から財務状態を見てみると
売上:1兆591億円
営業利益:5497億円
純利益:3986億円
売上高売上総利益率:83.8%
売上高営業利益率:51.9%

2025年3月期 決算短信より

本業での儲けを表す営業利益。売上高営業利益率の上場企業の平均値は、5~10%と言われており、その中、キーエンスは51.9%
製品の付加価値を示す売上総利益。高い付加価値を生み出している代表的なメーカーとしてトヨタ自動車が挙げられますが、そのトヨタの売上高売上総利益率は26.1%。それに対して、メーカーでありながらキーエンスは83.8%

どれだけキーエンスが高収益企業なのかがわかります。

余談ではありますが、会社の長期的な安全性を示す自己資本比率通常、20%以上あれば正常値と言われていますが、キーエンスは94.5%と驚異的な高さを示しています。

なぜ、これだけの高い収益を生み出しているのかというと、ひとつは、メーカーではありますが、自社では製造をしないというファブレス企業という特徴があります。ファブレス企業の代表はアメリカのアップルです。自社で製造をしないため、その分、売上原価が低くなり、売上総利益が高くなります。

もうひとつの特徴は、キーエンスの営業担当者が顧客の実現したい目的を聞き取りながら、コンサルティングを通じて生産性の向上につながる商品を独自に開発するというモデルです。
ここでのポイントは、「直販」・「顧客に合わせた独自開発」という点です。通常のメーカーは、卸や代理店などをはさみ、製品を販売していますが、キーエンスは直接、顧客と接点を持っていることが、このモデルを成立させている大きなポイントと考えます。

■EC事業は高収益につながるのか?

今回、キーエンスが参入したのは、製造業向けの流通事業子会社のメイカーズを通じてFA関連部品を扱う電子商取引(EC)を4月から展開しています。ECでは、センサーやモーターなどを支える治具やそれらと一緒に使われて装置を構成する機器や部品を揃えています。

「FA関連でECを展開」ということから競合として浮かぶのが、ミスミグループです。ミスミグループは、初めてECで機械部品を販売するモデルを立ち上げた会社。機械部品の業界は特注対応・受注生産が基本だった中、標準化を実現。顧客が型番・寸法の指定をすれば、ほしい部品をすぐ注文できる仕組みを構築しました。製造業界において長らく課題となっていた機械部品の調達における「非効率」・「高コスト」・「長納期」の解決を実現した企業です。

ミスミグループの直近実績の営業利益率を見ると、11.5%(2025年3月期)。部品メーカーとしての顔も持つため、純粋な流通事業だけの数字ではありませんが、キーエンスの本業である高付加価値センサーなどの製造販売と比較すると、そこまで儲からないと言えます。

これまで高収益ビジネスを展開してきたキーエンスが、なぜそうではないビジネスを始めるのでしょうか?

■参入したECビジネスの狙いとは?

ECを展開している完全子会社のメイカーズとは、どのような会社なのでしょうか?

メイカーズは、2024年2月14日にキーエンス100%出資による資本金1億円で設立。ECサイトで販売するのは、機械の接続部品として使うアルミフレームやボルトから油圧ホースまで多岐にわたります。キーエンスは、工場や倉庫作業の自動化に使うロボットや制御機器に使われる製品が多い。報道資料を見ると、顧客はキーエンスの既存顧客を想定しているとのこと。現時点では国内向けが主となっています。

メイカーズのホームページを見ると、「ものづくり現場の ”付加価値(企業の利益創出)” 最大化に貢献する」というメッセージがありました。そして、その理由を以下のように発信しています。

これからの先進国におけるものづくり産業は、国際競争力を維持・強化するため、徹底した原価低減と商品力向上の両立、つまり「ものづくりの付加価値最大化」が必要不可欠になっていくと私たちは考えています。昨今あらゆる製品やサービスの価格が上がり続ける中、製造原価の低減は企業利益に直結する重要課題となっています。品質や商品力など「こだわるべき部分」と「それ以外の部分」を戦略的に選択することが今後より一層重要となります。

株式会社メイカーズは、ものづくりを担う世界中の「作り手(MAKER)」をデジタルテクノロジーの力で繋ぐことで、お客様がいつでも最適な商品を見つけることができ、今より 安く・安心して・安定的に調達できる世界を実現します。



続きをみる


Views: 0

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

- Advertisment -