土曜日, 5月 31, 2025
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エッフェル塔の気象観測員で画家だったベルナール・ビュフェのように、バス運転手で詩人になりたい男がいたisa

🧠 あらすじと概要:

映画「あらすじと要約」

あらすじ
映画「パターソン」は、アメリカのパターソン市で市営バスの運転手を務める男が主人公です。毎日が決まったルーチンに従いながらも、彼は心の中で詩を紡ぎ、独自の感性を持っています。彼の生活には、自由な発想を促す愛する女性がいて、彼女の料理や創造的な行動が彼の日常に彩りを加えています。詩を大切にしながらも、彼は世間の一般的な価値観とは一線を画す存在です。

要約
主人公の男性は、規則正しい日常を送る一方で、詩的な感受性を持っています。彼はアメリカ東部の街で市営バスの運転手として働き、詩を通じて自己表現を行います。彼の日常に彩を加えるのは、創造的で独特な発想を持つ恋人です。2人の性格や生活スタイルは対照的ですが、その違いを受け入れ合うことでバランスを保ちながら共に過ごしています。映画は、日常生活の中に潜む小さな幸せや愛を描写し、詩の力が持つ癒しの側面をテーマにしています。

この作品は、観る者に静かな感動を与え、日常の何気ない瞬間に対する深い洞察を促します。詩や創作活動を通じて、主人公がどのように自己を見つめ直し、愛を育んでいくのかがバランスよく描かれています。

エッフェル塔の気象観測員で画家だったベルナール・ビュフェのように、バス運転手で詩人になりたい男がいたisa

記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

見出し画像

isa

男は、アメリカ東部のパターソンという街の市営バスの運転手だった。

「君は、むしろ魚になりたくないか」という変な詩が、男は好きだ。

水の中で、誰にもじゃまされず、泳いでいられる浮遊感をうらやましく思った。

水槽のような市バスの運転席で、魚の孤独を味わっていた

そして、この男の詩を大好きになった、女と結ばれた。

カンヌ映画祭監督賞ノミネート
ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(2016)

男は、バスの時刻表通りの、仕事をする従順さをそなえていた。

女は、楽しそうなことを優先する。だから、ルールは無視。

たとえば、インカ帝国の食糧、キヌアを食卓に載せたり。あるいは、レシピ通りの料理をしないで、男を驚かせる。

チーズとハーブを、ピザの生地に乗せる代わりに、包み込んだピザもその一つ。

「これは、料理本で見つけたの?」「ワタシの創作よ、どう、美味しい?」「美味しい」と男はうなずきながら、グラスの水を飲みながら流し込んでいた。

女が、一生懸命つくってくれたものを味わう番だった。

水を飲みながら流し込む。男には、文句も一緒に飲み込むやさしさがあった。

(バスが故障したとき、乗客の子供から携帯を借りたこともあり)「あなた、携帯を持つべきよ」と女が言ったら

「あんなものなくても生きてこられた。いまさら持つ必要はない」と男は答えた。

性格も考え方も違う、バランスの悪いふたりでも、思いやりがあればうまくいく。

そして、ふたりとも、一人っ子らしく、一人時間の過ごし方がうまかった。

男の1日は早い・毎朝6:10に起きるバス運転手に、女は付き合わない

・朝のテーブルで、男は静かに朝食をとる

いつものように、コーヒーを淹れて、シリアルを食べる

・お昼、男は詩を考えながら、女の創作料理を食べる

草間彌生のドット柄が気に入った妻の手づくりマフィン
お弁当箱の蓋には、自分の写真が貼ってある

(その頃、女は、カーテンの白いシーツをペイントしたり、余ったシーツで自分のワンピースを仕立てたり、部屋の壁をミント・グリーンに塗り替えたりする。
できるだけお金をかけないで、楽しく家事をする)

・休憩時間は、男は、車庫の近くを歩く

その日は、人通りが少ないところで、家族を待っていた10才の少女がいた。家族が来るまで守ってあげようと、少女の横に座った。そこで、少女が、自身の詩を読み聞かせてくれた。

水が落ちる 明るい宙(そら)から長い髪のように少女の肩にかかりながら水が落ちるアスファルトの水たまりは汚れた鏡雲やビルディングを映す水は私の家にも私の母にも私の髪にも落ちる人はそれを雨と呼ぶ(詩は、監督のジャームッシュ作)

少女が立ち去るとき「エミリー・ディキンソンは好き?」と、聞いた。

「ああ、好きだよ」と男が答える。うれしそうに少女は、ぴょんとスキップした。

「詩は、無限の世界におけるなぐさめ」と言う、崇高なエミリー・ディキンソンが好きな少女に出会えて、男はうれしかった。

※エミリー・ディキンソンのトリビアディキンソンが生まれた19世紀は「女には不朽の名作はできない」とされ、

不遇だった。発表作は10篇、死後1800篇が発見され、彼女の偉大さが認められた。

「従順すぎる子供より、才気走った子供の方が望ましい」と言う父に寵愛された。

「私の魂は、私のもの」と妥協せず、古い価値観と対立し続けた。「成功にうんざりしてみたい」と笑い飛ばす孤高の女性だった。

韻を踏まない詩のスタイルは、谷川俊太郎にも影響を与え、黒柳徹子は、彼女の詩が大好きだった。ディキンソンの詩「心にはいくつもの扉があって」をご視聴(YouTubeをダブル

クリック)してください:

彼女が、加齢について問われると「老いはやってくるわ」その時はどうするの?「なるべく留守にするわ」と言って、56才で亡くなった。


・帰宅後、階段下の小さな仕事部屋に、男が消えると、邪魔をしないよう、女は
ネットを楽しむ

彼の名はマーヴィン

・夕食後の犬の散歩は、男の役割。馴染みのバーに寄って、バーテンと話し、安いビールを飲むのが彼のルーティン。

小一時間の散歩でも、女は文句を言わない。

二人は、比重の違う、水と油。油は水を曇らせないよう、まじわらない距離感を
保っている。

ある日、女が言った「あなたの詩をコピーして欲しいの。私以外、あなたの才能を誰も知らないなんて、もったいない。どこかの出版社が目をつけてくれる日のために」

「恥ずかしい」とシャイな男は、まず思った。しかも、彼にとっては、心を一度離れた言葉に、愛着も未練もなかった。コピーする意味を感じなかった。

「コピーなんて、10分くらいで終わるでしょ」
「もう少しかかるよ」男は言いながら、コピーを約束した。

「もう一つのお願いがあるの。私にギターを買ってほしい。弦とか教則本など合わせて、200〜300ドルだと思う」男が即答できる金額ではなかった。

「歳を取ると、新しいものへのチャレンジが必要なの」こういう言葉に、男が弱いことを、女は知っていた。

「カントリーシンガーとしてデビューするの」「ナッシュビル?」「そう、ナッシュビルよ」

もう、止まらない。

「そのうち」と男は言ったつもりだったが、「そのうち」は、イエスだと女は解釈する。

楽器店に電話して届いたときには、ステージ衣装も出来上がっていた。

ギターを初めて手に取って、入門編の曲まで披露して男を驚かせた

その翌日は、週末のフリーマーケットで、女がカップケーキを売る日だった。

女はプロ並みのカップケーキを作り上げた

美味しいとみんなに褒められて、280ドル売り上げたという。

男は、ギターの代金にしてほしいと思ったが、女には、言えなかった。

女は、ずっと行っていない映画に一緒に行きたいと言った。

愛犬の散歩は、今夜はお休みして劇場へ。

マーヴィンは、二人に嫉妬した

帰宅すると、詩集ノートは、犬に見事なまでに食いちぎられていた。

男は、過去を失った。

しかし、記憶の中には消えないものもあった。彼女へ捧げた詩だった:

君より早く目が覚めると君は僕の方を向いていて頭は枕の上髪は広がっている僕は勇敢に君の顔を見つめ愛の力に驚く君が目を開けないかとかおびえないかと恐れながらでも日光が去ったら君はわかるだろうどんなに僕の頭や胸が破裂しそうか彼らの声はとらわれたままだまるで日の光を見られるのかと恐れる胎児のように開口部がぼんやりと光る雨に濡れた青灰色に僕は靴紐を結び階下へ降りて

コーヒーをいれる

ほどよい距離感が心地よいと、男は思っていた。

離婚した男女に欠けていたのは、この距離感かも知れない。

エミリー・ディキンソンは、この距離感を壊していた。

エミリーの愛人に捧げた哀歌は、バイセクチュアル同士のもつれた感情が入り混じっていた。

エミリーの兄と結婚した愛人は「こうなれば、あなたの家の隣に住んで、行き来ができるでしょ」

この言葉にエミリーは、溶けた。

でも、後日、深い後悔におそわれる。

「セックス&シティ」のシンシア・ニクソンが好演した
エミリー・ディキンソン伝記映画「静かなる情熱」(2016)

初めてあなたの顔を見たとき

あなたを讃えようと心に決めた

今 恥を知っているとすれば

出会わなければよかったと思う

愛を捧げた私と 好意を寄せたあなたが

言い争わなければならないの

いいえ 私の心はしっかり堅く

もつれを解くこともできない

もし私があなたを讃えすぎても

どうかそのあやまちを許して

私の手があなたに触れようとしたときは

私から離れてかまわないから

別れ際に愛を告げたあなたが

今度は私を突き放すの

私はまだ あなたを愛している

なんという運命のいたずら

「真実から絞り出した言葉が、詩になる」と、ディキンソンは言った。

isa

思春期を海外で過ごし、楽しかった残像で息をついています。いまだに、夢は日米語。登場する人で言語が変わります😅つぶやくことは、映画とウクレレしかないので、お気楽です。すべての差別を無くして、インクルージョン。LGBTをサポートする意識を大切にします。



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