金曜日, 8月 15, 2025
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ウェザーニューズにおけるPlatform Engineering


まとめ

本記事では、ウェザーニューズにおけるPlatform Engineeringの取り組みについて紹介します。

ウェザーニューズは、「ウェザーニュース for business」や「Sea Navigator」などの複数のBtoB SaaSプロダクトを並行開発する中で、Platform Engineeringを導入することで以下の価値を実現しています:

Platform Engineeringの4つの特徴

  1. CloudFormationベースの体系的なインフラ管理

    • 機能別モジュール設計による疎結合なアーキテクチャ
    • ARM64アーキテクチャに特化したテンプレート標準化
    • 変更影響範囲の最小化による安全で迅速なインフラ更新
  2. 標準化されたCI/CDパイプライン

    • 多様な技術スタックを統一フローで管理
    • CodePipeline/CodeBuildによる完全自動化
    • 1コマンドでの本番環境までの自動デプロイ
  3. セキュリティ・運用の標準化

    • CloudWatch AlarmとSlack通知による統合監視・アラート体制
    • 数分以内の迅速な障害検知と通知
    • 共通IAMポリシーによる多層的なセキュリティ対策
  4. 開発者フレンドリーな設計

    • 統一された開発環境による品質担保
    • Lambda Layer活用による効率化
    • 技術的複雑さの隠蔽によるビジネスロジックへの集中

これらの取り組みにより、各プロダクトチームは顧客への価値創造に集中でき、開発効率の向上、運用コストの削減、技術的負債の抑制を実現しています。

気象データで社会インフラを支えるという重要なミッションのもと、ウェザーニューズにおけるPlatform Engineeringの取り組みは堅牢で効率的なプラットフォームの基盤となっています。

はじめに

はじめまして、株式会社ウェザーニューズ陸上気象事業部のA-nktです。
2022年に新卒で入社し、現在4年目のソフトウェアエンジニアとして、BtoB向けSaaSプロダクトの開発に携わっています。

本記事では、ウェザーニューズにおけるプロダクト紹介とともに、複数のSaaSプロダクトを並行開発する中で、いかに効率的な開発体制を構築するか、その技術基盤であるPlatform Engineeringの取り組みについて共有します。

Platform Engineeringとは何か

Platform Engineering は、共通インフラ/運用/ガードレール/ツールをセルフサービス化した内製プラットフォームをプロダクトとして継続改善し、開発チームのドメイン実装への集中を支える取り組みです

本記事では特に次の4つの焦点で整理します:

  • 再利用可能で疎結合な Infrastructure as Code
  • 異種スタックを統一する標準 CI/CDパイプライン
  • セキュリティ / 監視 / 権限を組み込んだ運用ガードレール
  • 学習コストと認知負荷を下げる開発者体験(DX)最適化

これらは「重複実装」「運用ばらつき」「セキュリティ統制の散在」「新規プロダクト立ち上げ初期コスト増大」といったマルチプロダクト開発特有の課題に対するアプローチです。

なぜPlatform Engineeringが必要なのか?

ウェザーニューズでは、前述したように複数のBtoB SaaSプロダクトを並行して開発・運用しています。
各プロダクトは異なる市場向けに提供していますが、技術的な基盤部分では多くの共通要素を持ちます。

そこで、ウェザーニューズでは、各プロダクトが顧客への価値創造に集中できるよう、Platform Engineeringを活用しています。

マルチプロダクト開発における課題

Platform Engineeringを行わず、各プロダクトチームが個別に開発を進めた場合、どのような問題が生じるでしょうか?

1. 開発効率の低下
各プロダクトチームが個別にインフラ構築、CI/CDパイプライン、監視システムなどを構築していると、同じような作業を重複して行うことになり、開発リソースの無駄が発生します。

2. 運用コストの増大
プロダクトごとに異なる技術スタックや運用手順を採用すると、運用担当者の学習コストが高くなり、障害対応時の属人化リスクも高まります。

3. 技術的負債の蓄積
プロダクトチーム間での技術的知見の共有が不十分だと、各チームが独自に技術選定を行い、結果として技術的負債が分散して蓄積されてしまいます。

次のセクションでは、ウェザーニューズにおけるPlatform Engineeringの具体的なアーキテクチャについて詳しく説明します。

ウェザーニューズのPlatform Engineeringの特徴

1. CloudFormationベースの体系的なインフラ管理

ウェザーニューズでは主要クラウドとして AWS を採用し、Infrastructure as Code の実践として CloudFormation を基盤に体系的インフラ管理を行っています。手動構築を排し宣言的コード化することで、一貫性・再現性を確保しています。

機能別モジュール設計

私たちのプラットフォームでは、以下のようにアカウント設定、アラート、インフラ、レイヤー、API、DBといった機能ごとにモジュール化を行っています。

この設計思想により、各モジュールが独立性を保ちながらも、必要に応じて連携する疎結合なアーキテクチャを実現しました。

cfn/
├── account/ 
├── alert/
│ ├── alert-chatbot 
│ ├── alert-slack 
│ └── alert-topic 
├── infra/
│ ├── infra-backup 
│ ├── infra-cicd 
│ ├── infra-resource 
│ └── infra-security 
├── layer/
│ └── layer-python313 
├── api/ 
├── store/ 

特に注目すべきは、変更影響範囲の最小化です。

例えば、アラート設定を変更する際には、該当するアラートモジュールのみを更新すれば済み、他のインフラコンポーネントに影響を与えることなく、安全で迅速なインフラ更新が可能となっています。これにより、本番環境での運用リスクを大幅に軽減しています。

テンプレート標準化による効率化

ARM64アーキテクチャに特化したテンプレート群を整備することで、現代的なクラウドインフラの要求に応えています。
Python、HTML、Lambda Containerといったランタイム別に最適化されたテンプレートを用意することで、開発者は技術スタックに関係なく一貫した開発体験を得られます。

新規プロジェクトの立ち上げ時には、適切なテンプレートを選択するだけで、従来数時間から数日かかっていたインフラ構築が数分で完了します。
これは開発チームの初期コストを大幅に削減し、ビジネス価値の創出により多くの時間を割けるようになったことを意味します。

2. 標準化されたCI/CDパイプライン

開発から本番環境までの一貫したデプロイメントを、標準化されたCI/CDパイプラインで実現しています。これにより、品質を担保しながら迅速なリリースサイクルを確立しています。

多様な技術スタックを統一フローで管理

現代のソフトウェア開発では、プロジェクトごとに異なる技術スタックが使われることが一般的です。
私たちのプラットフォームでは、Python 3.13などの最新ランタイム、コンテナベースのLambda関数、静的サイト(HTML)などの多様な技術要件に対応しながらも、統一されたCI/CDパイプラインを提供しています。

各技術スタックに最適化されたテンプレートを用意することで、開発者は技術的な違いを意識することなく、同じ手順でデプロイメントを実行できます。

これにより、チーム間での知識共有が促進され、属人化の解消にも貢献しています。

CodePipeline/CodeBuildによる完全自動化

各ランタイムに特化したパイプラインテンプレートを活用し、ビルド、テスト、デプロイの自動化を実現しています。開発者はコマンドを一行実行するだけで、コードが自動的にテストされ、品質チェックを通過したものについて、本番環境まで自動デプロイされます。

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Ex: リソースのデプロイ例

3. セキュリティ・運用の標準化

気象データという社会インフラを支える重要な情報を扱うウェザーニューズでは、セキュリティと運用の標準化に特に力を入れています。信頼性の高いサービス提供のため、包括的な監視体制と堅牢なセキュリティ基盤を構築しています。

統合監視・アラート体制による迅速な障害対応

CloudWatch AlarmとSlack通知の連携、ChatBot統合による迅速な障害対応体制を構築しています。
CloudWatch Logsベースの詳細なログ監視により、システムの状態を常時把握し、障害発生から通知まで数分以内の迅速な検知体制を実現しています。

この統合監視システムにより、夜間や休日でも自動的に通知が届き、サービスの可用性を最大限に保つことができています。

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Ex: SlackにLambda Functionsのエラーが通知されている例。いつ・どこで・何のエラーが発生したかが一目で確認することが可能

セキュリティガバナンスの徹底

共通IAMポリシーによる権限管理の統一、セキュリティグループのテンプレート化、外部認証情報の安全な管理など、多層的なセキュリティ対策を実装しています。アカウントレベルでの共通セキュリティ設定により、すべてのリソースが一貫したセキュリティポリシーの下で管理されています。

4. 開発者フレンドリーな設計

開発者の生産性向上と学習コストの削減を重視した設計により、チーム全体のパフォーマンス向上を実現しています。技術的な複雑さを隠蔽し、開発者がビジネスロジックに集中できる環境を提供しています。

統一された開発環境による品質の担保

リンター、及びフォーマッターのルール統一化による一貫したコード品質管理(Ruff並びにbiomeを使用)、言語ごとの一般的な設定ファイルを用いたプロジェクトの標準化、環境パラメータの外部化による設定管理など、開発環境の統一により、プロジェクト間での品質のばらつきを解消しています。

新しいメンバーがチームに参加した際も、統一された環境により迅速にプロジェクトに貢献できるようになります。これは特に、多様なバックグラウンドを持つエンジニアが集まる現代の開発チームにおいて重要な要素となっています。

Lambda Layer活用による効率化

共通ライブラリをLayer化することで、関数サイズの削減とデプロイ時間の短縮を実現しています。依存関係管理の簡素化により、開発者はライブラリの管理に煩わされることなく、本質的な機能開発に集中できます。

プロダクト紹介(適用事例)

ウェザーニューズは、お天気アプリ「ウェザーニュース」でご存知の方も多いかと思いますが、BtoC向けサービスだけでなく、BtoB事業も幅広く展開している企業です。

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出典:2025年5月期決算説明資料より抜粋

実際の売上構成を見ると、ストック売上高比でBtoC事業のInternet Domainが約40%、BtoB事業のSea/Sky/Land Domainが約60%を占めており、売上高で見るとBtoB事業の方が高い割合を示していることがわかります。

BtoB事業では複数のSaaSプロダクトを展開しており、以下にその主要なプロダクトをご紹介します。

下記プロダクトでは、冒頭で述べた標準テンプレート / 監視 / 権限モデルが以下プロダクト群で再利用され、個別機能開発の立ち上がりを短縮しています。

ウェザーニュース for business

ウェザーニュース for businessは、企業向けに特化した専門気象情報サービスです。

単なる天気予報サービスではなく、高精度な気象データとIoTセンサー、APIを組み合わせることで、企業の安全性向上、効率化、リスク管理を実現します。

スマートフォンやPCで高精度な気象データを確認でき、各業種の課題解決に特化したソリューションを提供しています。

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Link : ウェザーニュース for business

ウェザーニュース for businessの主要サービス

  • 企業向け専用気象情報
    企業向けに専用設計された気象情報をスマートフォンやPCで確認できるサービスです。

  • クラウドカメラ
    拠点周辺の気象変化や被害状況をリアルタイムと過去映像で確認でき迅速な状況把握と意思決定を支援するサービスです。

  • 交通影響予測
    全国の道路・鉄道・空港・港湾の交通支障リスクを最大4段階で72時間(高速道路は10日先)まで予測し現況と先行リスクを可視化して計画的な輸送・出退勤判断を支援するサービスです。

ウェザーニュース for businessの技術的特徴

  • モバイル対応
    「ウェザーニュース」アプリをプラットフォームに利用したサービス。日頃から使い慣れたお天気アプリをビジネスシーンでも使えるシームレスなサービス設計。アプリのPUSH通知機能を活用して、専門的な気象情報についても通知を受け取れます。
  • 高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」とリアルタイム連携
    設置された観測データをリアルタイムで確認することができます
  • 企業向けに特化した専門気象情報サービス
    様々な業種の企業や自治体の独自ニーズに合わせたコンテンツを多数ラインナップしています

Sea Navigator

Sea Navigatorは、これまで個別に提供されていた5つの航海気象サービスを1つのプラットフォームに集約した統合型サービスです。

海運事業者(船主・船舶管理会社・運航船社)が、環境性・安全性・経済性の中から重要視するプランに合わせて必要なサービスだけを選択し、航海前の計画から航海中、終了後までワンストップでモニタリングすることが可能です。

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Link : 統合型の航海気象サービス「Sea Navigator」を提供開始

Sea Navigatorの主要サービス

  • Voyage Comparison
    最適運航のための航路・船速別の到着時間や燃料消費量を算出
  • Emission Dashboard
    CO2排出量や燃料実績格付け制度などの環境データを分析
  • Fleet Status Monitoring
    荒天影響船をモニタリングし、本船へのアラート送付状況を確認
  • Navigation
    航海計画と海図情報を用いて、座礁などのリスクを把握

Sea Navigatorの技術的特徴

  • モバイル対応
    地震・津波などの緊急時にスマートフォンから即座に確認可能
  • AI技術活用
    独自のAI技術を用いたサービス開発
  • 統合プラットフォーム
    複数のサービスを一元管理
  • リアルタイムモニタリング
    航海前から終了後まで継続的な支援

これらの特徴により、ウェザーニューズのPlatform Engineeringは、構造化されたインフラ管理、標準化されたCI/CD、統合されたセキュリティ・運用、開発者中心の設計で、気象データで社会インフラを支えるという重要なミッションのもと、堅牢で効率的なプラットフォームを実現しています。



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