🧠 概要:
概要
この記事では「インナーマッスル」と呼ばれる筋肉群の定義や機能、誤解について解説しています。特に、インナーマッスルが関節の安定化や姿勢制御にどのように寄与するかを、解剖学や神経学の視点から明確にしています。また、インナーマッスルとアウターマッスルの違いや、よくある誤解についても触れています。
要約の箇条書き
- インナーマッスルの定義: 深層に位置する筋肉群で、関節の安定化や姿勢制御を担う。
- インナーマッスルの特徴:
- 運動の主動作ではなく、持続的な低負荷で働く。
- 例として多裂筋や腹横筋が挙げられる。
- アウターマッスルとの違い:
- アウターマッスルは表層に位置し、主動作に関与。
- よくある誤解:
- インナーマッスルは意識的に鍛えるものではなく、無意識的な姿勢制御によって活性化される。
- ドローインだけで鍛えられない。
- インナーマッスルの機能:
- 動かす筋ではなく、支える筋としての役割を持つ。
- 日常生活やスポーツにおいて重要な安定性を提供。
- 部位別インナーマッスルの例:
- 腹横筋や多裂筋、横隔膜などがある。
この記事は、インナーマッスルの理解を深め、効果的なトレーニング方法を考える上で有用な情報を提供しています。
インナーマッスルの定義
「インナーマッスル」は医学的な正式名称ではありません。一般的に“インナー”という表現が指しているのは、関節に近接した深層部に位置する筋群であり、英語では “deep muscles”、あるいは “local stabilizers(局所的安定化筋)” として分類されます。インナーマッスルの大きな特徴は、以下の2点に集約されます。1.深部に存在し、表層から触知が困難であること2.運動の主動作ではなく、関節の安定化や姿勢制御に関与することたとえば、腰部では多裂筋(multifidus)や腹横筋(transversus abdominis)が代表的なインナーマッスルです。これらは、脊柱を大きく動かすのではなく、「関節が過度に動きすぎないように安定化する」役割を果たしています。
インナーマッスルとアウターマッスルの違い
ここで重要なのが、“アウターマッスル”との違いです。アウターマッスル(outer muscle)は、表層に位置し、筋肥大や運動時の主動作に関与する筋です。たとえば腹直筋、大腿四頭筋、大殿筋などがこれにあたります。
特に注目すべきは、インナーマッスルが“持続的・低負荷で働く”という特徴です。このため、いわゆる筋トレ的な負荷では十分に活性化されず、「呼吸」「姿勢」「重心移動」などの状況依存的な入力によって自然に活動を促されるべき筋群なのです。
よくある誤解と臨床的な問題点
誤解1:「インナーマッスルは意識的に鍛えられる」多くの指導現場で、「インナーマッスルを意識してドローインしましょう」といった声かけがなされています。しかし、脳科学的に見ると、インナーマッスルは意識的運動(随意運動)よりも無意識的な姿勢制御(非随意運動)によって活性化されることが多いとされています。実際、多裂筋や腹横筋は、四肢運動に先行して活動するという報告があり(先行随伴性姿勢制御:APA)、これは反射的かつ予測的な運動戦略によるものです。意識的な「収縮させよう」という介入は、むしろ自然なタイミングのズレや過剰な緊張を生むことがあるため注意が必要です。誤解2:「インナーマッスルを鍛える=ドローイン」ドローイン(腹を凹ませる動作)は、腹横筋の促通方法として知られていますが、単独の動きであり、日常動作における機能的連動とは乖離しています。特に、呼吸を止めながらのドローインは横隔膜との協調が崩れやすく、「コアシステム」としての一体性が損なわれます。
インナーマッスルの代表例(部位別)
体幹部•腹横筋(TrA):腹腔内圧を高め、体幹を内側から固定•多裂筋(MF):椎間安定を支える背筋群•横隔膜(diaphragm):呼吸と腹腔圧の調整を担う•骨盤底筋群(pelvic floor muscles):骨盤内臓の支持と腹圧の底面を形成股関節•腸腰筋(iliopsoas):歩行初期での脚の引き上げと骨盤安定に重要•深層外旋六筋(piriformis, obturator internusなど):股関節の深部安定肩関節•ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋):上腕骨頭を関節窩中心に保持
「安定化筋」という視点での捉え方
インナーマッスルは“動かす筋”ではなく“止める筋、支える筋”と表現されることもあります。つまり、運動のための“プラットフォーム”を提供する筋といえるのです。この機能は、スポーツだけでなく日常生活動作においても非常に重要で、たとえば:•座っているときの骨盤・腰椎の安定•歩行時の片脚支持期での体幹安定•荷物を持ち上げるときの脊柱固定など、あらゆる動作において“支える力”として不可欠です。
第2章:インナーマッスルの分類と機能解剖学的視点
からだと動きのプロフェッショナルたちへ。このメンバーシップでは、理学療法士・作業療法士・柔道整復師…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
Views: 0