木曜日, 5月 15, 2025
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イワナの「あくびの長さ」が住んでる場所ごとに違うと判明!


あくびをするのはヒトだけではありません。

サルや鳥、犬猫、カエル、魚など、脊椎動物で広く見られることが知られています。

しかしこれまで、あくびの長さは同じ種内では変わらないと考えられていました。

ところが今回、北海道大学の研究チームが魚類の「イワナ」を対象に調査したところ、イワナは同じ種でも住む場所ごとにあくびの長さが違っていることが明らかになったのです。

研究の詳細は2025年5月5日付で科学雑誌『Journal of Ethology』に掲載されています。

目次

  • あくびは同じ種でも同じではなかった!
  • 住む環境で「あくび」も適応変化する?

あくびは同じ種でも同じではなかった!

あくびは、ヒトを含めた脊椎動物に広く見られる行動です。

これまでは動物のあくびの仕方や長さは種ごとに異なるものの、同じ種の中ではどこに住んでいても変わらないと考えられてきました。

ところが今回の研究では、その常識が覆されました。

研究チームは、北海道南部の異なる4つの河川からイワナの稚魚を134個体採集し、観察水槽で1匹ずつ9分間の行動を録画しました。

着底行動(水底に静止する状態)中と遊泳中のあくびをそれぞれ記録し、発生頻度と持続時間を比較しました。

結果として、あくびの頻度は地域による差はありませんでしたが、あくびの長さには明確な違いが確認されました。

例えば、ある生息地の稚魚は着底中のあくびが短く、別の生息地では遊泳中のあくびが長くなるなど、住む場所ごとに微妙な差異が現れたのです。

左:着底中のあくびの長さ、右:遊泳中のあくびの長さ/ Credit: 北海道大学(2025)

この違いは、水温や捕食者の有無といった各地域特有の環境要因によって引き起こされた可能性があります。

つまり、魚のあくびも環境に応じて進化的に調整されている可能性があるのです。

住む環境で「あくび」も適応変化する?

本研究は、動物界において初めてあくび行動の地域集団間の変異を実証した成果です。

これまで行動学の研究では「種内ではあくびに差はない」という前提がありました。

しかし、今回の発見により、その前提に疑問が投げかけられました。

恒温動物では、あくびが血流の促進や脳の冷却などの生理的機能と関わっていることが知られています。

今回のイワナの研究でも、同様にあくびの長さが環境適応の一部として変化している可能性が考えられます。

画像
あくびをするイワナの稚魚/ Credit: 北海道大学(2025)

この研究は今後、魚類だけでなく哺乳類や鳥類など他の動物でも同様の地域変異が存在するかを検証するきっかけになると期待されています。

また人間のあくびにも意外な地域差があるのか、将来的な研究対象となるかもしれません。

魚のような小さな生物でも、あくびに多様性があることが明らかになりました。

小さなイワナのささやかなあくびが、動物行動学に新たな問いを投げかけています。

今後のさらなる研究によって、動物界のあくびの不思議がどこまで解き明かされるのか注目が集まります。

全ての画像を見る

参考文献

イワナのあくびの長さは地域でちがう~動物のあくびの地域集団間変異を世界で初めて実証~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/05/post-1878.html

元論文

Fish yawn: interpopulation variation in yawning characteristics of juvenile white-spotted char Salvelinus leucomaenis
https://doi.org/10.1007/s10164-025-00844-w

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部



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🧠 編集部の感想:
この研究は、イワナにおけるあくびの長さが生息環境によって異なることを示し、動物行動学に新たな視点を提供しています。また、同じ種であっても地域によって行動が適応する可能性があることは興味深い発見です。他の動物にも同様の地域差が存在するかどうか、今後の研究に期待が高まります。

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