
違法薬物や児童の性的虐待、テロなどに関連する有害コンテンツを規制するために制定されたイギリスの法律の規定が、フリー百科事典「Wikipedia」にまで適用され、Wikipediaが改ざんや破壊行為にさらされるおそれがあるとして、Wikipediaを運営するウィキメディア(Wikimedia)財団が法的異議申し立てを行ったことを発表しました。
Wikimedia Foundation brings legal challenge to new UK Online Safety Act requirements – Diff
https://diff.wikimedia.org/2025/05/08/wikimedia-foundation-brings-legal-challenge-to-new-uk-online-safety-act-requirements/
Wikipedia’s Nonprofit Host Brings Legal Challenge to New Online Safety Act (OSA) Regulations | by Wikimedia Foundation Policy | Wikimedia Foundation Policy | May, 2025 | Medium
https://medium.com/wikimedia-policy/wikipedias-nonprofit-host-brings-legal-challenge-to-new-online-safety-act-osa-regulations-0f9153102f29
Wikipedia challenging UK law it says exposes it to ‘manipulation and vandalism’ | Wikipedia | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2025/may/08/wikipedia-challenging-uk-law-it-says-exposes-it-to-manipulation-and-vandalism
イギリスでは、インターネットにおける子どもの安全を保護することなどを目的とした「オンライン安全法」が2023年に成立し、同年から段階的に施行されています。
しかし、この法律により言論の自由が脅かされたり、過剰な検閲が行われたりする危険性があることから、Appleや多数の人権団体が懸念を表明していたほか、ウィキメディア財団も当時から法律に反対してきました。
インターネットから子どもを保護しなかった企業幹部に懲役刑を科すオンライン安全法案修正にWikipedia運営団体や人権団体が反対を表明 – GIGAZINE
多くの議論を残しながらも見切り発車されたオンライン安全法ですが、2025年2月にはさらにこの法律の規制を具体化する改正案が議会で成立し、Wikipediaが最も規制が厳しい「カテゴリー1」に分類される可能性が濃厚になりました。
「カテゴリー1」は、公共への影響が広範に及ぶ大規模な商用プラットフォームやソーシャルメディアを念頭に置いた分類で、該当する企業はユーザーの身元確認や、匿名ユーザーによる記事の投稿のブロックなど、負担の大きいコンプライアンス規定が義務付けられます。
もし、これらがWikipediaに適用された場合、Wikipediaのボランティア編集者の安全やプライバシーが損なわれ、本来はコンテンツの保護や改善に充てられるべき資源が対応に費やされることにより、記事が改ざんされたり破壊されたりするおそれがあると、ウィキメディア財団は主張しました。
基準がいかに曖昧かを示す例として、ウィキメディア財団は、Wikipediaのトップページにある「今日の一枚」をユーザーが選ぶことさえ、カテゴリー1の分類要件のひとつである「コンテンツ推奨システム」に該当するおそれがあるとしています。
イギリスの高等裁判所に申し立てられた今回の司法審査は、オンライン安全法そのものに反対するものではなく、カテゴリー1のプラットフォームの指定方法を決定する改正案に異議を唱えるものです。
ウィキメディア財団の主任弁護士であるフィル・ブラッドリー=シュミッグ氏は、カテゴリー分類規則の司法審査を求めた訴えについて、「私たちはWikipediaのボランティアユーザーや、自由な知識への世界的なアクセス性と完全性を守るために、行動を起こしました」と話しました。
この記事のタイトルとURLをコピーする
Views: 0