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概要
この記事は、アートの価値が「意味」や「物語」によって決まる時代について論じています。特に、バンクシーのシュレッダー事件を例に挙げて、物そのものの価値よりもそれにまつわるストーリーや背景が重要視される現象を紹介しています。この「イミ消費」の概念が、人々の共感を生み出し、価値を動かす要因となっていることを強調しています。
要約の箇条書き
- アートの価値が単なる物理的な特性よりも「意味」に基づいている。
- バンクシーのシュレッダー事件が象徴的で、破壊された作品が逆に高価に取引された。
- 価値は「なぜそれが生まれたのか」と「そこに何を感じたのか」にシフトしている。
- 多くの人が共感できる「意味」が、お金を生む要因になっている。
- 意味が共有され、共感することでアートの価値が形成される。
- 次回は、意味すらないことが逆に魅力的とされる時代について考察する予定。
アートに例えると?
では──「意味にお金を払う」とは、どういうことなのか?
マーケの世界では「イミ消費」なんて言葉がありますが、アート界でも同じような動きがあります。それを象徴する事件が、2018年のアートオークションで起きました。
バンクシーの「シュレッダー事件」、覚えていますか?落札直後に作品が裁断され、世界が騒然としたあの瞬間です。
でも、なぜ破壊されたはずの作品が、さらに高く評価されたのか。
世界は、その「破壊の意味」に反応したのです。
モノより「意味」が
評価された事件
2018年、ロンドン・サザビーズのオークションで起きたバンクシー・シュレッダー事件。
落札と同時に額縁に仕込まれていたシュレッダーが作動し、作品はバラバラに。
Image: © Sotheby’s. Used here for informational and commentary purposes
通常なら価値を失うはずの事件に、むしろ世界は熱狂しました。その後の作品名は《Love is in the Bin》=ゴミ箱の中の愛。そしてなんと、再オークションでは約25億円で落札されたのです。
破壊されたにもかかわらず、さらに高値がつきました。
──なぜか?
それは、意味が上書きされたからではないでしょうか。破壊されたという行為自体に、新たな物語が生まれた。それまでの絵の価値を超えて、シュレッダー事件という時代の象徴として記憶されたからです。
同じモノに、別のストーリーが乗っかった。意味が価値を生むということを立証した事件でした。
──でもは、なぜ、意味に価値を感じるのか?
それは、その出来事が「誰かの感情」や「信念」にリンクするからではないでしょうか。
共感+自分ごと化が
価値を動かす
作品そのものよりも、そこに込められた意図や仕掛け=「意味」に人は共感します。たとえば、バンクシーの行為は、アート界への批判、消費社会へのアイロニー。それを「自分の中の正義」や「時代のメッセージ」として感じ取った人たちが大勢いました。
つまり、多くの人が共感し、自分の物語として重ねられた結果、その意味にお金が払われたのです。
「意味」にお金が払われる時代
かつて価値は、完成されたモノに宿るものでした。でも今は、「なぜそれが生まれたのか」「私はそれに何を感じたのか」
──そんな「意味」が、価値として受けとめられる時代です。
「意味」が共有され、物語に共感する。そんな「イミ消費」が価値を生む時代。けれど最近、こうも思うのです。「意味すら、ない方が惹かれる」──。
価値とは、意味のあるものだけに宿るのでしょうか?
次回は、そんな「わからなさ」にこそ惹かれる時代について、書いてみます。
Top Image: © Sotheby’s. Used here for informational and commentary purposes.
出典:Sotheby’s “Weston Super Mare” Lot 53
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