ケイブが開発し、アトラスが1995年5月に発売したアーケードゲーム「首領蜂」が、2025年5月で稼働30周年を迎えた。
本作は、自機を8方向レバーと、ショットまたはレーザー発射ボタン、ボンバーボタンの2ボタン(※オート連射ボタン増設時は3ボタン)で操作し、敵を倒していく縦スクロールシューティングゲーム。1周全5ステージで、各ステージのボスを倒すとステージクリアとなり、ミスをして自機のストックがゼロになるか、2周目のステージ5をクリアするとゲームオーバーとなる。2人同時プレイにも対応している。
以下、本稿では、かつて本作の攻略記事を執筆していた経験も持つ筆者が、発売前から取材していた当時の記憶をたどりつつ、本作の面白さ振り返ってみた。
久々の新作シューティングの登場に狂喜乱舞! 斬新な「GPシステム」にも興味津々
時は1994年の年の暮れ。筆者が当時お世話になっていた編集者から「元東亜プランのスタッフが作った、シューティングの新作が出るぞ」と、メーカーから送られてきた宣材(※紙の資料と、ポジフィルムで撮影された画面写真)を見せてもらったのが、本作との最初の出会いだった。
資料の詳しい内容は忘れてしまったが、本作の基本ルールと、全3種類の自機の性能が書かれていたように記憶している。根っからのシューティングゲーム大好きっ子であり、「究極タイガー」や「TATSUJIN」「V・V(ヴイ・ファイヴ)」など、同年に倒産してしまった東亜プラン作品の大ファンでもあった筆者は、すぐさま「紹介記事を書かせて下さい! それから、プレイ取材ができるようになったら、ぜひアポを取ってください!!」とお願いした。
年が明け、メーカーからプレイ取材オーケーの報が入ると、担当編集者とライター仲間数名とともに、確か東京・飯田橋にあったアトラスのオフィスに馳せ参じた。最初にプレイした本作の基板は、発売前の未完成バージョンだったと思うが、ゲームの面白さは筆者の期待どおりであった。
前述したように、本作の基本操作はレバーとショットとボンバーを使用する、極めてオーソドックスなものだったが、広範囲に広がり連射ができるショットと、ボタンを押しっ放しで前方に強力な攻撃を繰り出すレーザーを、いつでも好きなタイミングで切り替えられるのが新鮮な体験だった。既存のほとんどのシューティングゲームは、武器を変更する際は、特定の場所に出現する、あるいは敵を倒すと出現する専用のアイテムを取ったうえで、装備を切り替えるシステムだったからである。
レーザーはザコ敵を貫通し、ボスキャラなど耐久力の高い敵に撃ち込むと、ショットよりも大ダメージを与えられるので、爽快感がとても高い。レーザー発射中は自機の移動速度が落ちてしまうが 敵弾が多数バラまかれる場面では、逆に自機の位置を微調整しやすくなるメリットがあることにもやがて気が付き、「これはナイスアイデア!」と唸らされた。
最初の取材で、ショット性能と移動速度がそれぞれ異なる、3種類の機体が登場すること以上に、特に印象に残ったのが「GP(ゲットポイント)システム」の面白さだった。
「GPシステム」とは、0.5秒以内に複数の敵を連続で倒すとヒット数がカウントされ、ヒット数が増えれば増えるほど高得点が獲得できる、本作独自のシステムのこと。例えば2ヒットに成功すると、2ヒット目に倒した敵の得点に加え、1ヒット目の敵と2ヒット目の敵の得点を合計したGP(ボーナス得点)が加算される。以下、3ヒット目以降も同様に計算されるので、たとえザコ敵であっても数十機の敵をまとめて倒せば、得点がものすごい勢いでアップする。
当時は、おそらく「スーパーストリートファイター」が最初だったと思うが、対戦格闘ゲームで連続技による攻撃に成功すると、ヒット数に応じたボーナス得点が獲得できる「コンボボーナス」が相次いで導入されていた。そんな時代にあって「ナルホド! シューティングのコンボボーナスもアリだな」と、筆者もすぐに「GPシステム」を気に入った。
ショットとレーザーの切り替えに「GPボーナス」という、今までに遊んだ旧東亜プランの作品とはまた違った面白さがあることを、誌面を通じて読者にぜひ伝えたい。ライター仲間同士で1プレイごとに交代、あるいは2人同時プレイで遊びながら、稼働後はどうやって攻略記事を展開するのか、取材中に脳内で構想していたことも、おぼろげながら記憶している。
以下、取材当時の余談を少々。
当時の筆者は、まだキャリアの浅い若造であったが、アトラスのスタッフの皆さんには、とても親切に対応していただいた。最初の取材では、プレイ中に「ボスキャラが爆発した際のアニメーションの一部に、実写取り込み使用した」などと本作の見どころを解説して下さり、取材後も各種ボーナス得点の計算方法や、隠れキャラ(「蜂」のマークと1UPアイテム)の出現条件と場所などの質問にも、懇切丁寧にお答えいただいた。今さらではあるが、当時お世話になった方々にはとても感謝している。
ショットか、レーザーか、それともボンバーか? パターン作りは楽しかったが、誌面に十分に反映できず……
記事の執筆を任された筆者は、その後も何度か録画機材を持ち込んだうえで、アトラスへプレイ取材にお邪魔した。初めのうちは、録画したビデオを繰り返し再生しながら原稿を書いていたが、ありがたいことに本作が発売されるタイミングで基板をお借りすることができたので、一時期は編集部に泊まり込んで夢中になってやり込んだ。
各ステージの道中では、ザコ敵の編隊にはショット、耐久力の高い大型の敵にはレーザーを浴びせるといった要領で、武器を臨機応変に切り替えながら敵を倒すのが実に快感だった。対ボス戦でも、レーザーをメインに使用して短時間で倒せるパターンを作ったり、敵弾が飛び交う中で狭いスペースに自機を潜り込ませ、ギリギリでかわしたりするのが本当に楽しかった。
ステージ4と5のボスは手強かったものの、それほど苦労せずに1コインでの1周クリアを達成したと記憶しているが、限られた誌面の中で、機体ごとに異なる攻略パターンをどうやって紹介すべきかが筆者の中では大問題だった。当時の筆者は、並行して別のゲームの攻略も担当し、平日は学校の授業にもすべて出席(多分)してメチャクチャ忙しかったので、1人で3タイプの機体でパターンを作るほどの余裕は全然なかった。
そこで、まずは自身が「一番使いやすくて、誰にもオススメできる」と思ったタイプCに固定したうえで、1周5ステージ分の攻略パターンを先に紹介してから、腕利きのライター仲間に残りの機体の攻略記事を任せることにした。初回の記事では、初心者用の基本ルールと、腕に自信がある人向けの「GPシステム」解説の二本立てでまとめ、以降は各ステージの攻略法、および高得点が稼げるポイントでヒット数をつなぐコツ、隠れキャラの取り方などを順次掲載した。読者には、1周クリアを大目標として遊んでもらいつつ、連続ヒットで得点が跳ね上がる面白さも伝わるよう、若造なりに意識して書き上げた(つもりである)。
本作の自機は、いずれもボンバーを3個ストックした状態でスタートするが、ボンバーを3回使用するごとにキャパシティ(最大ストック数)が1個ずつ増え、最大7個まで増やせる特徴がある。さらにステージクリア後には、ステージ数と同じ個数のボンバーが補充される、その名も「マルチボンバーシステム」を導入しているのも、本作ならではの面白いアイデアだ。
ただし、キャパシティを増やすごとに、ステージクリア後にもらえるクリアボーナスが減点されるデメリットが生じる(※ちなみに2周目以降は、1ステージクリアするごとに何と500万点も加算される)。プレイ中に困ったら、どんどんボンバーを使ったほうが攻略が楽になるのは自明の理だが、高得点を獲得するチャンスをみすみす逃すのはいかがなものかと、記事を書き始めた当初はかなり悩んだ。迷った挙句、最終的にはメインの攻略記事と並行して、1周全5ステージ分のおすすめのボンバー使用場所をまとめた記事を書いたことも、今でもよく覚えている。
2周目に入ると、敵を破壊した地点から自機に向かって大量の弾、いわゆる「撃ち返し弾」が飛んでくるので、ショットボタンをずっと押しっ放しでプレイし続けると、たちまち逃げ場を失ってしまうので難易度は劇的に上がる。
難しいのは確かだが、成功するとさらに本作が楽しくなる、各ステージの撃ち返し弾のさばき方も細かく説明をしたかったが、残念ながら他の記事との兼ね合いで十分な紙幅を得られなかったこともあり、すべてのパターンを紹介できなかったのは今でも大いに悔いている。
また最終回の記事では、2周目にだけ出現する真のラスボス戦の攻略法を紹介したが、こちらも希望どおりのページ数を確保できなかった。編集者と相談のうえ、画面写真のサイズを最小限にして、なるべく解説を多めに書き込む方針で執筆したが、原稿提出後にデザイナーさん(※誌面のデザインを起こす人のこと。本記事は外部のデザイン会社に依頼していた)から「どうしてもスペースが足りないので、写真を何点か削って」とのお願いをされ、大幅な修正をすることになった。後日、校正の段階で想定を超える大忙しになったが、それ以上に編集者とデザイナーさんには、かなりの迷惑を掛けてしまった苦い思い出も残っている。
ここで、またまた余談をひとつ。
本作は、テストモードでボタン設定を変更すると、Aボタン(ショットまたはレーザー)、Bボタン(ボンバー)に加えCボタンが使用可能となる。Cボタンはショット専用の発射ボタンで、しかも押しっ放しで超高速で連射するので実に便利だ。
本作の発売後、メーカーからCボタンの存在を教えていただいた筆者は、早速記事中でも紹介したが、かなりわかりにくい場所に書いてしまったため、読者およびオペレーター(※ゲームセンターの経営会社)にうまく伝わらず、大失敗したことを今でも大いに反省している。また、当時よく出掛けていた某ゲーセンには、店員さんに口頭でCボタン設定の方法を教えたらとても喜ばれたのも、今となっては良い思い出だ。
筆者が調べたところ、本作は2010年にプレイステーションアーカイブス(※PS3とPSPの2機種に対応)で配信されて以降、残念ながら一度も移植されていない。「弾幕」の存在を多くの人に知らしめた、続編にあたる「怒首領蜂」、および後継シリーズの源流となった本作の「大復活」も大いに希望したいところだ。
(C)ATLUS/CAVE (C)1996 SPS
🧠 編集部の感想:
「首領蜂」の30周年、おめでとうございます!このゲームは、アーケードシューティングの金字塔として、今でも多くのファンに愛され続けています。連続ヒットで高得点を狙う「GPシステム」が独自の魅力を生み出し、再びプレイしたくなる作品ですね。
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