Starlinkを率いるイーロン・マスク氏に対する反発や、ウクライナへの衛星通信の提供が継続されるかどうかが不透明なことから、EUではStarlinkに代わる衛星通信を確保する動きが進められています。そんな中、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長がヨーロッパの同盟国に対し、アメリカと中国のどちらかを選ぶ必要があると警告したことが報じられました。
FCC head Brendan Carr tells Europe to get on board with Starlink – Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2025/04/fcc-head-brendan-carr-tells-europe-to-get-on-board-with-starlink/
Europe must choose between US or Chinese satellite tech, says FCC chair | The Verge
https://www.theverge.com/news/649052/fcc-brendan-carr-starlink-europe-satellite-internet
FCCのカー氏は、イギリスの経済紙・Financial Timesに対し、「同盟関係にある西側の民主主義国は、真の長期的な脅威である中国共産党の台頭に焦点を当てる必要があります」と話しました。
この発言は、アメリカ政府がウクライナでのStarlinkのサービス停止をちらつかせたことを受けて、EUの政府や企業がStarlinkの導入や使用に慎重になっていることを念頭に置いたものです。
マスク氏がCEOを務めるStarlinkは、記事作成時点で7135基の衛星を軌道に投入している世界最大の衛星コンステレーション運用企業で、ウクライナ戦争でも活用されています。
しかし、マスク氏がX(旧Twitter)で、「ウクライナによるStarlinkへのアクセスを停止すればウクライナの戦線全体が崩壊するでしょう」と発言したことや、実際にウクライナ軍によるStarlinkの利用が制限されたことなどから、EU諸国の間でStarlinkに対する懸念が広がりました。
SpaceXがウクライナ軍の「Starlink」の利用を制限したと判明、「兵器化する意図はなかった」と幹部 – GIGAZINE
しかし、EUがStarlinkに代わる衛星通信技術を手に入れるのは前途多難だといわれています。例えば、最有力候補であるフランスの通信衛星運営企業・Eutelsatは、運用している衛星の数がStarlinkの約10分の1で、端末の料金は約10倍にもなるとのこと。
一方中国の低軌道(LEO)衛星会社であるSpacesail(千帆)は、まだ90基しか衛星を保有していないものの、急ピッチで宇宙開発を進めており、2030年までに1万5000基の衛星を打ち上げる計画です。
トランプ大統領によってFCC委員長に任命され、マスク氏の長年の盟友としても知られているカー氏は、マスク氏のアメリカでの事業は「規制による嫌がらせ」を受けていると主張し、マスク氏のビジネスを擁護してきました。カー氏はまた、欧州委員会について「保守主義」で「反米」だと非難しています。
カー氏は「Starlinkが心配なら、中国共産党バージョンができるまで待ってみなさい。そうすれば本当に心配になるでしょう。ヨーロッパが独自の衛星コンステレーションを保有するのは素晴らしいことですし、衛星は多ければ多いほどいいと思いますが、広い視点で見れば、ヨーロッパはアメリカと中国の間で板挟みになっているように思われます。今こそ選択の時です」と話しました。
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