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概要
アインHDがM&Aで取得した「クラフト(さくら薬局グループ)」の財務状況について、詳細な分析と決算情報を調査した記事です。著者は、クラフトの経営歴や最近の財務改善の状況を追求しており、特にNSSKの介入によってクラフトが負債を減少させ、M&Aに至った経緯を説明しています。
要約
- アインHDがクラフト(さくら薬局グループ)の株式を取得したことが話題に。
- クラフトは2008年に上場廃止され、2022年に事業再生ADRを申請。
- NSSKがクラフトの約1000億円での株式取得を報道。
- 2022年から2023年の決算情報において、負債が大幅に減少し、純資産が改善。
- 営業利益が2023年から2024年にかけて3.6倍増加し、営業利益率も改善。
- アインHDによるクラフトの取得価格は591億円とされ、これが高いか安いかは他の評価指標によって変わる可能性がある。
- クラフトの財務改善がアインHDにとって魅力的なM&Aの理由となったと考えられる。
こんにちは。
東北地方の山の中で薬局を経営している馬場と申します。
今週は、薬局のM&Aでびっくりするような話がありましたね。
ニュースは色々出ていたのですが、もう少し突っ込んだ情報が欲しいなと思ったので自分で調べてみました。
クラフトについておさらい
wikipediaが良くまとまっていて分かりやすいですね。
2008年 4月 TOBで上場廃止(非公開会社化)
2022年 2月 事業再生ADRを申請
2022年10月 日本産業推進機構グループ(NSSK)が株式取得
NSSKによるクラフトの買収額は、1000億円程度(非公開のため詳細不明)と報道されていました。
会津若松でクラフトといえば、、
会津若松と相馬の薬局で付け替え請求で監査が入り、保険薬局指定取り消し処分になった事件です。会津若松のTKD病院前の一番賑わっていた薬局が突然閉まって他の名前の薬局になったという出来事は、地元民としては衝撃的で記憶に新しいところです。。(5年前)
クラフトの決算情報を探してみる
クラフト(さくら薬局グループ)は、非上場企業なので、基本的に決算情報は非開示です。ですが、株式会社は公告の義務というものがあるので、そこからみられることが多いです。合併や分割を行う際は、権利者に向けて公告をする必要があるので、必ずどこかには載っていますね。
さっそく、「クラフト (代取名) 官報」「クラフト (代取名) 公告」で検索してみます。
こんな感じ(官報や新聞などで公告することが多いです)
2022年3月、2023年3月の決算情報を見つけることが出来ました。2022年3月の決算情報は、日刊工業新聞に掲載されていたようなので、以下からバックナンバーを日付で探して閲覧しました。
見つけた決算情報は以下です。
2022年3月期
組織改編で合併してわけわからん
2023年3月期
借入と流動資産が爆増でキャッシュフロー改善してそう
2024年3月期
ちらっと探したけど、決算の公告は見当たりませんでした。アインHDのIRに載っていた株式取得のお知らせには以下の記載があります。
NSSK-WW → NSSK-W → クラフト な資本関係
3期分の決算まとめ
上記の決算情報をスプレッドシートにまとめてみました。
貸借対照表
2023年3月期→2024年3月期で純資産が△851億円→232億円になっており、1000億円増えてる??(どういうことー)
単位は(百万円)
損益計算書
単位は(百万円)
【決算表から考える】純資産と負債額から推定する
2024年3月期は、純資産232億円、総資産1636億円、差額は負債になるので負債合計は1404億円ですね。その前年度の2023年3月期は、純資産△851億円、総資産1717億円、負債合計は2569億円です。
純資産 △851億円 → 232億円(+1083億円)
負債 2569億円 → 1404億円(-1165億円)
NSSKの介入で、1年間で負債が1000億円減るという離れ業。。きっと事業再生ADRなので、NSSKが債権者(金融機関等)とごにょごにょして、再建計画の中で債務調整や資本金への振り替えなどが行われたのかもしれないと推測します。2023年3月期の営業利益は35億円で、単純な返済だと1000億円返済するのには30年近くかかってしまうので・・・
債務超過状態が改善したことにより、今回のアインHDによるM&Aに繋がりやすくなったのではないかと考えられます。
【決算表から考える】営業利益率の改善
売上は、2023年3月期:1553億円 → 2024年3月期:1536億円とそんなに変わらないのですが、営業利益が2023年3月期:35億円 → 2024年3月期:127億円と3.6倍増えています。営業利益率も2.3% → 8.2%と改善しています。
ちなみにアインHDの2024年3月期のファーマシー事業のセグメント売上は3215億円で、営業利益が241億円、営業利益率は7.5%です。
もともとのクラフトの営業利益率が、M&Aによる弊害かあまり高くなかったことも事業再生ADRが必要になった原因かと推察します。今回の事例でも営業利益率の改善により、1000億円規模のM&Aを10年かからずに回収できるという判断がなされた可能性があります。前述の通り負債も軽減されているので、その利払いによる営業外費用の減少も期待できるのかなぁ。(分からない)
【決算表から考える】取得金額
アインHDによるリリース情報によると、クラフト(の親会社のNSSK-WW)の取得金額は591億円だそうです。
この買い物は高いのか、安いのか・・・
純資産が232億円なので、PBRだと2.55倍でプレミアムが乗っているのかと思いきや、PSR(売上高対買収価格倍率)など他のM&Aの金額査定指標もあるそうです。(知らんかった)
PSR(売上高対買収価格倍率) 591億円÷1553億円=0.38倍営業利益倍率 591億円÷127億円=4.67倍
1店舗取得単価 591億円÷833店舗=7094万円
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