数世紀にわたり、金は政治・経済の不安定な時代において主要な安全資産として機能してきた。確実に高い価値があり、容易に輸送・売却可能な商品としての特性は、他の資産が混乱に陥る中で安心感を提供している。

  しかし、誰もが賛同するわけではない。著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、金を「無益な」資産と呼び、投資・保険会社バークシャー・ハサウェイの株主に宛てた2011年の書簡で「1オンスの金を永久に保有しても、最終的に手元に残るのは1オンスの金だけだ」と述べている。

  それでも、トランプ米大統領の貿易・政治政策が株式や債券、通貨を乱高下させる中、投資家は金を避難先としてみている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入は第1四半期に210億(約3兆円)に達し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以来の高水準を記録した。

  金の需要が急速に高まり、現物価格は幾度となく最高値を更新。4月下旬には1オンス=3500ドルを突破し、昨年からの強い上昇トレンドを維持している。2025年の金のパフォーマンスはほぼ全ての主要資産クラスを上回っている。

  世界最大の金生産国であり、消費国でもある中国が金上昇の主因の一つとなっている。トランプ大統領が最大の貿易相手国である中国からの輸入品に課した懲罰的な関税を巡る懸念が背景にある。

なぜ金は安全資産と見なされるのか?

  現代の投資家にとって、その理由は主に金の安定性と流動性にあり、本質的な有用性ではない。

  金には市場が混乱する際に価値が上昇するという実績がある。通貨の購買力が低下するインフレに対するヘッジ手段としても見なされている。現在、多くの人がインフレ懸念を抱いている。トランプ大統領が米国への輸入品に課した新たな関税や、他の国が導入した報復措置が、世界経済全体で価格上昇を招くリスクがあるためだ。

  大きな相場変動が起こった際、従来はドルや米国債が避難先となっていたが、トランプ氏の貿易政策がその信頼性を揺るがし、米国例外主義の終えんにつながる恐れがある中、金の安全資産としての地位は高まっている。

  歴史的に金はドルと逆相関の関係にある。ドルで価格付けされているため、ドルが弱含むと、他の通貨を保有する投資家にとって金は安くなる。4月中旬、ドルは主要通貨に対して3年ぶりの安値を記録した。

  市場動向を超え、金保有はインドと中国の文化に深く根付いている。両国は世界有数の金市場であり、宝飾品や延べ棒が繁栄と安全の象徴として何世代にもわたり受け継がれている。インドの個人が保有する金は約2万5000トンに上り、米ケンタッキー州フォートノックスにある米連邦政府金庫に保管されている量の5倍余りとなっている。

  中国やインドは価格変動に敏感だが、金融市場で金の魅力が薄れると、宝飾品や延べ棒の現物購入者が押し目を狙って買いに動き、価格を下支える傾向がある。

金価格上昇は貿易戦争への懸念だけが原因か?

  2024年初頭から続く金の上昇基調は、中央銀行の大量購入にも支えられている。特に新興国は、主要準備通貨であるドルへの依存度を軽減するため、金の購入を加速させている。金は外貨準備を多様化し、通貨安のリスクから守る役割を果たしている。

  中銀は過去15年、金を買い越しているが、ロシアのウクライナ侵攻後、購入ペースは倍増した。米国とその同盟国によるロシア中銀資産の凍結は、外国為替資産が制裁に脆弱(ぜいじゃく)なことを浮き彫りにした。

  WGCによると、2024年には中銀が3年連続で1000トンを超える金を購入し、中銀が保有する金は、過去に採掘された金の約2割に上っている。

  中銀の持続的で楽観的な姿勢を受けて、ゴールドマン・サックス・グループは4月に金価格の年末予想を1オンス=3700ドルに引き上た。同社は来年の半ばまでに4000ドルに達する可能性があると予測している。

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金の上昇を止める要因は何か?

  昨年初頭からほぼ途切れることなく上昇を続けた金価格だが、利益確定の動きから、いずれ値固め局面を迎える可能性はある。トランプ氏が関税措置を大幅に緩和させたり、ロシアとウクライナが和平で合意したりすれば、価格下落を促す要因となり得る。

  しかし、中銀は金の上昇トレンドを支える最も重要な柱であり、保有量を削減すれば最も大きな打撃を与える力を持っている。

  現時点では、主要な保有者がこのような措置を検討している兆候はない。先進国の中銀による売却は近年、極めて少ない。1990年代は持続的に売却し、金価格を10年間で25%余り下落させた。これらの非協調的な売却が市場を不安定にする懸念から、欧州中央銀行(ECB)やユーロ圏各国の中銀が保有金の売却量に上限を定めた第1次中央銀行金売却協定(CBGA)が1999年に締結され、署名国は金売却の制限で合意に至った。

Merryn Somerset Webb記者が金相場についてリポート

出所:ブルームバーグ

現物資産であることは投資家に問題となるか?

  金を保有することは通常、無料ではない。現物資産であるため、保有者は保管やセキュリティ、保険の費用を負担する必要がある。

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