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概要
この記事では、日産自動車が抱える経営の危機の原因を分析しています。特に、販売不振やEV戦略の迷走、ラインアップ全体の刷新サイクルの遅れが問題視されています。また、他の自動車メーカーと比較し、日産が「芯」を失い、経営の健全性が損なわれていることを指摘しています。
要約の箇条書き
- 経営危機の背景: 日産は中国市場での販売不振や米国でのEV戦略の迷走、工場閉鎖等で苦境に立たされている。
- 問題は突発的ではない: これらの兆候は10年以上前から見えていたが、適切な対策が講じられなかった。
- 「いい車」と「いいサイクル」: 自動車メーカーの評価は「良い車を、良いサイクルで出せているか」に尽きる。
- 競合他社との違い: マツダやスバルは強いブランド哲学を持ち、定期的なモデルチェンジを行っている。
- 日産の現状: 日産は新型車の投入が止まり、ラインアップ全体の刷新サイクルが滞っている。
- 負のスパイラル: 商品開発の遅れにより、販売促進に依存し利益が圧縮される負の連鎖に陥っている。
- ホンダの判断: ホンダが日産との統合を見送ったことは、日産のブランド価値が損なわれることを避けた英断と評価されている。
- 今後の展望: 日産は「いい車」を「いいサイクル」で提供する必要があり、その復活を期待する声がある。
いま、日産が再び経営の危機に立たされています。
中国市場での販売不振、米国ではEV戦略の迷走、販促依存、さらにはリース残価の悪化。国内では工場閉鎖と人員削減が発表されました。
けれど、これは突発的な問題ではありません。
兆候は10年以上前から見えていた。にもかかわらず、組織は手を打たなかった。
なぜこうなったのか。
私はこう考えます。
自動車メーカーの経営評価は、じつはとてもシンプルです。
「いい車を、いいサイクルで出せているか」──この一点で十分です。
「いい車」とは何か
「いい車」とは、単に高性能・低燃費という話ではありません。
思想があり、顧客が「これを選ぶ理由」がはっきりしている車。
たとえばマツダには、“走る楽しさ”と“美しいデザイン”という一貫した哲学があります。スバルには、“安心・堅牢・AWD”という明快な立ち位置があります。
三菱にも、アウトドア・PHEV・東南アジア市場という独自性が残っている。
それぞれに“芯”がある。
作り手の意図が伝わる車は、それだけでユーザーの心に刺さります。
「いいサイクル」とは何か
どんなに良い車でも、古くなれば売れなくなる。
だから、定期的なモデルチェンジ=商品更新のサイクルが不可欠です。
開発・調達・設計・販売・マーケティングまで、社内の歯車が一つのリズムで動いているか。
これが経営の“健康状態”を測る最大の指標です。
マツダもスバルも、資源に制約がある中で、主力車種はおおむね5~6年周期で刷新しています。その結果、車は常に“今”の魅力を持ち続け、ブランド全体も古びない。
これは「マーケティング」ではなく、「経営リズム」の問題です。
日産にはなにが足りないのか?
「ノートやセレナも新型が出ていて、実際に売れているじゃないか」と言う人がいます。それは事実です。ノートe-POWERの完成度は高く、セレナもファミリーユースとして堅調です。
ただ、それだけでは経営評価には足りません。
問題は、ラインアップ全体の刷新サイクルにあります。
実は、2022年に「エクストレイル」「フェアレディZ」「サクラ」「セレナ」の4車種が発表されて以降、日本市場への新型車投入は止まっています。
しかも、売れ筋のエルグランドは2008年から15年間モデルチェンジなしという異例の放置状態。
つまり、売るものが足りない。開発に時間がかかる。
これは単に「車が古い」だけでなく、組織が高コストで、サイクルが壊れているということを意味します。
商品開発が遅れれば販売は奨励金に頼らざるを得ず、利益が圧縮され、開発費も減る。
その結果、また車が出せない──完全な負のスパイラルです。
ホンダが統合を見送ったのは正解だった
2024年には、ホンダと日産が経営統合を検討していたという報道がありました。でも最終的に、ホンダは見送りました。
それは英断だったと思います。
日産はすでに“芯”を失っており、ホンダと組んでもブランド価値を毀損するだけ。
もし統合するなら、三菱だけを切り離して取り込む──その方がまだ戦略的整合があります。
結論:自動車メーカーの評価は複雑に考える必要はない
「いい車を、いいサイクルで出せているか」
この一点だけで、その会社が健全かどうかはだいたい見えてきます。
マツダにも、スバルにも、三菱にもまだ“芯”がある。日産だけが、それを失ってしまっている。
そこに気づけるかどうかで、次の10年が決まっていくのだと思います。
とはいえ、日産は日本を代表する中核産業の一角です。
だからこそ厳しく見ますが、本気で立て直す気があるなら、私は応援します。
いい車を、いいサイクルで──その当たり前が戻ってくることを願っています。
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