奥平大兼と出口夏希がダブル主演を務めた映画『か「」く「」し「」ご「」と「』が、5月30日より全国で公開される。
「君の膵臓をたべたい」で知られる作家・住野よるの小説を実写化した同作は、“少しだけ人の気持ちが見えてしまう”高校生5人の青春ラブストーリー。奥平が引っ込み思案な京、出口が明るい性格の人気者でヒロインよりもヒーローになりたい“ミッキー”こと三木直子を演じ、佐野晶哉(Aぇ! group)が人気者の“ヅカ”こと高崎博文、菊池日菜子が予測不能な言動で周囲を翻弄する“パラ”こと黒田文、早瀬憩が内気で繊細な“エル”こと宮里望愛に扮した。
同作の公開を記念して、ナタリーでは映画・音楽の2ジャンルを横断した特集を展開する。映画ナタリーではYouTuber・歌手のとうあに本編をひと足早く鑑賞してもらい、その魅力を聞いた。なお音楽ナタリーでは、主題歌アーティスト・ちゃんみなと住野のインタビューを2本立てで掲載する。
取材・文 / 前田かおり撮影 / 曽我美芽
ヘアメイク / KENJI(SHIMA)スタイリング / ふるかわしょう
──映画『か「」く「」し「」ご「」と「』は、高校生5人による青春ラブストーリーです。このようなテイストの映画って、よくご覧になりますか?
久しぶりでした。以前は青春学園ドラマをよく観ていて、ちょうど世代に合っていた「orange-オレンジ-」(2015年)がすごく好きでした。最近はこういう作品を観ていなかったので、なんだか懐かしいような……。心がきれいになった気がしました(笑)。
──心がきれいになったと言われましたが、率直な感想を教えてください。
青い!と思いました。今の中学生・高校生が観たら、きっと共感できる部分があるんじゃないかな。特に私は、変に作り込みすぎていなくて純粋無垢な感じが、心地よくて響きました。
とうあ
──作り込みすぎていないというのは?
映画やドラマならではのちょっと無理した設定がなくて、描写の1つひとつがリアルだったので、「みんな一度は感じたこと、体験したことがあるよね。こういうときってあるよね」と自分の経験を思い出しながら観ていました。
──登場人物の中で、とうあさんは誰に自分のことを重ねたのでしょうか?
ちょっと達観している子や、何も考えずキャピキャピしてる子、静かな子……。いろんな子がいましたね。誰か1人というよりも、それぞれの姿を自分の学生時代と重ね合わせることができて、面白い経験でした。
──確かに、5人の主要キャラクターはいろいろな個性を持っています。特に共感した、惹かれたと感じる人物は?
私はパラに惹かれました。最初の印象は、少し変わっている捉えどころがない子だったけれど、物語が進むにつれて、ちょっと達観していて、いつも周りを気遣いながら自分の悩みや思いを抱え込むタイプの子だとわかってくる。繊細なところが魅力的ですよね。パラはちょっと闇が深い感じもありますが、一方で相手が誰かを思う気持ちは尊重していて、その思いを応援している。

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、菊池日菜子演じるパラ
ミッキーと似ているところがあるかも
──主人公の京や、ミッキーに関してはどう感じましたか?
自分がわりとキャッキャしているタイプなので、逆に静かな子に目が行きがちというか、気になって仕方がなくなるんです。だから京くんがかわいく見えるし、私のタイプですね(笑)。京くんはただミッキーのことが好きなのに、自信が持てなくて思いを伝えられない。特に終盤、図書館でミッキーと手紙のやり取りをするシーンがありますが、もし自分が彼女の立場だったら、京くんにすごくイライラすると思う(笑)。でも、そこがかわいいんです。

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、左から出口夏希演じるミッキー、奥平大兼演じる京

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、出口夏希演じるミッキー
──なるほど。
それに、京くんは引っ込み思案ですが、誰よりも周りの人たちのことを気遣える子でもある。パラが体調を崩したときもすぐにサポートするなど、みんなに平等に接していますよね。人一倍、他人のことに気付ける子という部分にもすごく惹かれました。
──いろんなことに気付くという意味では、最初のところで京がミッキーのシャンプーの変化に香りで気付くシーンもありましたよね。
それもある意味、京というキャラクターらしいエピソードじゃないかなと思います。敏感な彼だからこそ気付けたという。
──ミッキーに関してはどうですか? とうあさんは過去のインタビューで、「学年の生徒みんなと友達だった」とか「1人になっている子がいたら、すぐに話しかけた」と話していましたが。
彼女と似ているところがあるかもしれません。私はわりと誰に対してもオープンだし、いろんな友達もいましたし。

とうあ

とうあ
こんな子たち、自分の学生時代にもいた!
──メインキャストを演じている若手の俳優さんたちの印象も聞かせてください。京役の奥平大兼さんをはじめ、ミッキー役の出口夏希さんやヅカ役の佐野晶哉さん(Aぇ! group)、パラ役の菊池日菜子さん、エル役の早瀬憩さんなど、今後の活躍が期待される人たちで、演技もとても自然ですよね。
確かに自然でしたね。だから、映画なのに「こんな子たち、自分の学生時代にもいたいた!」と思わず言っちゃいそうなくらい、リアルに感じられました。
──リアルと言えば、監督の演出についてはいかがでしたか?
ジェンダーにまつわる表現も、この作品ではとても自然に溶け込んでいました。最近は、そういう要素が描かれている作品の場合、必要以上にクローズアップされがちですが。(相手のことを)好きなら好きでいい。こういうことが当たり前の世界になればいいのにな。さらりと当たり前のこととして描かれている。そこがほかの作品にはないと感じて、私には刺さりました。

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、左から奥平大兼演じる京、佐野晶哉演じるヅカ

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、左から佐野晶哉演じるヅカ、菊池日菜子演じるパラ、早瀬憩演じるエル
──監督はロケ地にとてもこだわったそうなんです。例えば、廃校やスタジオセットではなくて今も実際に“生きてる学校”で撮影するとか。だから余計に、学校生活がいきいきとしたものに感じられたのかもしれませんね。
そうですね。学校の校舎も誰もが思い浮かべるような雰囲気で。季節が変わって、女子生徒が夏の制服を着ているシーンは、うちの学校も夏服があったことを思い出して、すごく懐かしくなりました。休みの日にいつものメンバーで集まってカフェに行ったり、カラオケで誕生日を祝ったり。映画の中で描かれる高校生活のあれこれを目にして、親近感が湧きました。
──演劇祭や修学旅行、図書室での自習などの学校生活が描写されていましたが、映画を観ていてよみがえって来た思い出はありますか?
私の学校には演劇祭はなかったけれど、文化祭がありました。この映画のようにみんなで団結して、放課後まで残って準備を進めるのがとても楽しくて。やっぱり、そういう瞬間に青春を感じますよね。修学旅行のシーンも懐かしい気持ちになりました。映画に出てきた「好きな人に鈴を渡すと……」というようなジンクスは、うちの学校にはありませんでしたが、夜になってみんなで恋バナをしたのがいい思い出です(笑)。

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、手前から出口夏希演じるミッキー、菊池日菜子演じるパラ

『か「」く「」し「」ご「」と「』より、左から奥平大兼演じる京、出口夏希演じるミッキー
──振り返ってみて、ご自身の高校時代で、今でも忘れられない出来事や今の自分につながっているようなことはありますか?
私が通っていた高校は服飾の専門校で、地元は岐阜なんですが、隣の愛知・名古屋市で開かれた学生主体のファッションイベントに3年間関わっていました。その一方でYouTubeを始めたり。今思い返しても、めちゃめちゃ忙しくて、本当にバタバタした高校生活でしたが、それがすごくよかったんです。
──とても充実していたんですね。
はい。充実していました! 今、若い子たちから「気の合う友達ができない」とか、「学校でトラブルに遭って困っている」といった相談をよく受けます。そういったときに、私はいつも「いろんなコミュニティに関わっておくといいよ」と言うんです。学生時代って学校が自分の中で最大の社会だから、そこしかないと思いがちじゃないですか。でも、私みたいにいろんなことをやって、いろんなコミュニティで友達を作ると、自分の逃げ道ができる。確かにいくつものことをやるのは大変だったけど、高校生活の中での自分の生き方や選択したことはすべてプラスに働きました。実際に、そのファッションのイベントがやっぱ今の仕事にもつながっているし、YouTubeもそうですから。

とうあ
中高生や、“あの頃”の気持ちを忘れた人に観てほしい
──この映画を薦めるとしたら、どんな人に楽しんでもらいたいですか?
やっぱり、中高生にはぜひ観てほしい! 私は観るまでは王道の学園ドラマであり、青春恋愛映画なのかなと思っていたけれど、すごく考えさせられるところがあったし、学びになることも多かったんです。それこそ中高生だけでなく、社会人になって、私みたいにもう“あの頃”の気持ちを忘れたような人にもぜひ観て、純粋さを取り戻してほしいなって思います。
──青春時代の恋愛や友情って、ささいなすれ違いや勘違い、思い込みでうまく行ったり行かなかったり。そういったことも考えさせられますよね。
そうそう。特に学生生活なんて、ちょっとした勘違いで友情がダメになったりすることなんて日常茶飯事ですよね。毎日のように誰かと誰かが喧嘩したり、すれ違ったりしていた。社会に出て仕事を始めて、人間関係がつらいと感じることもあるかもしれないけれど、学生の頃、乗り越えたでしょ!と思えば、がんばれるんじゃないかなと。そんな勇気ももらえるかもしれない。
──周りの人に薦めるとしたら、どんな映画と言いますか?
「人との関わりを改めて考えるきっかけになる映画」です!
──とうあさんと近い活動されている方で、ぜひ観てほしいと感じる方はいらっしゃいますか。
仲のいいYouTuberで“むくえな”のえなぴという子がいるのですが、きっとこの映画が好きだと思います。こういうテイストが好みだし、彼女もすごく人の感情に敏感な子なので。薦めたら、きっと楽しんでくれそうな気がします。
──ちなみに、主題歌はちゃんみなさんの書き下ろし曲「I hate this love song」です。ちゃんみなさんにとっては初の映画主題歌だとか。
珍しいですよね。しっとりと優しい歌を歌われていて、とても素敵でした! 映画の内容とも合っていると思います。主題歌もぜひ楽しみにしながら観てほしいですね。

とうあ
編集部の感想:
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』、まさに青春そのものを描いた作品ですね。若者たちの純粋さや心の葛藤がリアルに表現されていて、共感できる要素が多いです。観ることで、忘れかけていたあの頃の気持ちが蘇り、心温まる体験ができそうです。
Views: 2