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第10回は「DOOM」シリーズの変化と,イヤイヤ期をようやく抜けた娘さんの成長過程についてです。この二つが似ているって……ど,どういうこと?
ちょっと前から遊んでいた「DOOM: The Dark Ages」(PC/PS5/Xbox Series X|S)をひとまずクリアした。なんせ「DOOM」シリーズ待望の新作である。久々にここまで可処分時間をゲームに突っ込んだな……と思うくらい,がっつりとプレイしてしまった。といっても,もう何度も練習したり死んだりしながらゲームに打ち込む気力はどこにもないので,ぜ〜んぶ最低難度で遊んだんですけども。
「The Dark Ages」は,2016年に発売された「DOOM」(PC/Nintendo Switch/PS4/Xbox One)の前日譚である。
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もともとは1993年に発売された初期のFPSゲームだった「DOOM」シリーズ。2016年にリブートされて以降の三作はストーリー上のつながりがあり,時系列的には「DOOM: The Dark Ages」「DOOM(2016年版)」 「DOOM Eternal」の順番となっている。
2016年版以前に何があったのかは,2020年に発売された「DOOM Eternal」でうっすら語られていたのだが,「The Dark Ages」は,遠い過去の時代におけるドゥームスレイヤー氏の暴れっぷりを本格的に知ることができる作品だ。
2016年版から続くストーリーは,西暦2145年の火星からスタートする。火星は人類が地獄(このゲームでは「地獄」は物理的に存在する別世界ということになっています)から資源を収奪して地球に送り込む前線基地となっていたが,科学者でありながら地獄やデーモンを崇めていたオリビア・ピアス博士の暴走により,地獄とのポータルが開きっぱなしになってしまう。
壊滅状態になってしまった火星の事態を収拾するべく,火星施設の責任者であるサミュエル・ハイデン博士は,石棺に収められていたドゥームスレイヤーを復活させる。とある理由からデーモンに対して激しい怒りを持つスレイヤーは,火星にはびこるデーモンたちと激しい戦いを開始する。
このリブート版第一作に続き,「Eternal」ではスレイヤーが火星から地球へと侵攻したデーモンたちとのスケールアップした死闘を展開。DLCまでプレイすれば,スレイヤーの戦いが一旦終結するところまで見届けられる。では,それよりもっと古い時代,2016年版以前にスレイヤーはデーモンとどのような激闘を繰り広げていたのか……という点にフォーカスしたのが「The Dark Ages」なのだ。
![]() 今回もデーモンたちとの激闘が待っていた
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古い時代の物語ということで,まだアージャント・ドヌールもナイトセンチネルも健在,ノビク王もピンピンしているし,スレイヤー氏はゲーム開始時点ではメイカーの操り人形状態でなんか毛皮(海外のSFダークファンタジーでは強い男は狼の毛皮を纏いがち)を着ているしで,なるほどこれが古の時代か……という感慨がある。いきなりナイトセンチネルがどうのとか言われても分かんね〜よという人もいると思いますが,許してください。「DOOM」って一見するとキモい敵を色んな道具でミンチにするゲームに見えるかもしれないんですけど,けっこう設定とか歴史とかが細かく詰まってるんですよ……。
「とにかく動きまくって戦いまくって殺しまくって暴れ続けろ。そうすれば生き延びられるぞ!」というゲームだった前作「Eternal」に比べると,「The Dark Ages」はちょっとまったりめ,息詰まるギリギリの死闘を戦うというよりは「俺TUEEE」的万能感を味わえる無双シリーズ風味のゲームに仕上がっている。その原因として大きいのは,やはり今回の目玉追加要素である「盾」だろう。
今回のスレイヤー氏は左手にキャプテン・アメリカのような丸い盾を装着しており,これによってある程度は敵の攻撃を防ぐことができる。さらにこの盾は投げつけて攻撃に使ったり,盾を構えて体当たりすれば小粒なデーモンを轢き殺したりすることも可能。この盾の存在が,「Eternal」から大きく遊び心地が変化した要因となっている。
![]() 盾がとにかく便利
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なんせ盾は盾なので,ある程度敵の攻撃を凌げてしまう。「Eternal」では「う,うわ〜! 大量のデーモンに囲まれてタコ殴りにされてる! 死ぬ死ぬ死ぬ! 逃げろ逃げろ逃げろ!!」からのチェーンソーでデーモンをぶった斬って弾薬回復,さらにグローリーキルで体力回復して九死に一生,ああ生きててよかった,オラもう地獄はこりごりだ……というギリギリの攻防が楽しかったのだけど,「The Dark Ages」では盾さえ構えていれば案外どうにかなってしまうのだ。
さらに「盾を投げて敵に当てる」攻撃がけっこう強力で,小粒なデーモンならひと投げで何人も薙ぎ倒せる。また大型のデーモンに投げると「盾のフチから突き出したノコギリがグルグル回って相手に食い込み,刺さっている間は敵がスタンする」という効果があり,これが大変便利だ。
![]() スタンしている敵
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囲まれて余裕がなくなってもとにかく盾を突き刺してしまえば一匹は動きが止まるので,そのスキに近所へ寄っていってスーパーショットガンを乱射すればやっつけられてしまう。パリィのタイミングもまったりしているのでパリィ苦手勢も安心だし,盾が一個あるだけでかなり別のゲームっぽい触り心地になっているのだ。
そんな新要素の盾に加え,今回はでっかいロボットとでっかいドラゴンに乗って暴れるステージもある。でっかいロボットについては「Eternal」では結局,宇宙に浮かぶスレイヤー基地に置いてあっただけだったので「乗れないのかよ!」と思ったが,今回は晴れて搭乗可能になった。建物を薙ぎ倒しまくりながら暴れるのは楽しいけれど,まさかデーモンに対しては「殴る」というのが基本攻撃だと思わなかったですね。
ドラゴンについても「ドゥームスレイヤーが機関砲を乗っけたメカドラゴンに乗って空をカッ飛ぶ」という絵面はバカすぎて最高ながら,ゲーム内の要素としては微妙にテンポが悪く,正直「これ,なくてもいいかもな……」という気分になる場面もあった。いや,スレイヤーとドラゴンが仲良しなのはよかったんだけどさ……。
というわけで,とにかく忙しなかった「Eternal」に比べると,多少はゆったり進められる草刈りゲーという感じになった「The Dark Ages」。「とにかく今日は暴れまくってデーモンとギリギリの勝負をしたいな〜」という時は「Eternal」,「今日はくたびれてるけどストレスは溜まってるから,酒でも飲みながらデーモンをぶちのめしまくってスッキリしたいな〜」という時は「The Dark Ages」,という使い分けになりそうである。
さて,なぜこんなに長々と「DOOM」の話を書いたのかというと,最近の子供との生活が「Eternal」と「The Dark Ages」くらい変化しているからだ。具体的に書くと,どうやら完全にイヤイヤ期を抜けたっぽいのである。やった〜。
イヤイヤ期のころは全動作に対してお伺いを立てねばならず,ちょっとでもアクションをミスると即爆発するという,ピンの抜けた手榴弾のようだった我が娘も,今では割と「言って聞かせる」という手が通用するようになった。
もちろんまだ3歳なので,こちらが言い聞かせることすべてを理解してくれるわけでもないのだが,多少駄々をこねたときでも「こういう理由でお父さんが困るからやめよう」と言えばちょっとは聞く耳を持つようになった。大進化である。
さらに書くと,「物で釣る」というやり口のスパンが伸びた。これまでも外出先でぐずったときに応急処置的にガチャガチャをやらせたり,トミカを買い与えたりということはあったのだが,その場で即座に物を与えなくてもなんとかなる場面が増えてきたのである。
出先で疲れ,抱っこをせがんで動かなくなってしまうことはまだある。しかしそんなときに「じゃあ歩いてお家に帰ったら,おやつを食べようか」「帰りにドーナツを買って,帰ってから食べようか」などと提案すれば,毎回絶対にではないものの「しゃ〜ないか……」といった感じで自主的に歩くようになってきている。「多少嫌でも今頑張って歩けば,家に帰った後でいいことがある」という理屈が,なんとなく理解できるようになってきたのだ。
こうなってくると,子育てというゲームのルールが根本的に変わってくる。家にいようが外に出ようが,とにかく「今ここ」の問題をその場で解決し,その繰り返しで1日が終わるというこれまでの状況より,もう少し「未来を考えて行動する」生活を目指せるようになったのである。
「ひとりで遊んでいてね」と言えば限界はあるもののある程度ひとりで遊んでいるし,ちょっとした仕事ならそのスキに進められる。外食しても「注文した食べ物が届くまでおとなしく待つ」ことができるようになり,そのおかげで食べに行ける店の選択肢もグッと増えた。う,うれしい……!
無論,いいことばかりでもない。毎回新しいデーモンと戦わなければならないスレイヤーと同じように,「ゲームが変化すれば新たな敵が出現し,それをなんとかして倒さねばならない」のはどうやら子育てが終わるまでついて回る問題のようである。目下のところ,現在の目標となっているのはトイレトレーニングだ。
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これがねえ,本当に,どうやっていいのか全然分からないんですよ。「おしっこ出そうになったら教えてね」とか言ってはみるものの,本人的に特にピンときている様子もなく,いまだにおむつが取れていない。まあ,トイレに行ってズボン脱いでドタバタするよりも,その場でおむつにしちゃった方がラクなのは分かるんだけどさ……。
このトイレトレーニングも含めて今度は「言って聞かせて,その内容を理解してもらう」という戦いに主戦場が移った感じがあり,イヤイヤ期を抜けたからそれで全部オッケーというわけにはいかないのであった。まさに,命尽きるまでデーモンと戦い続けなければならないスレイヤー氏のような状況である。
とはいえ,イヤイヤ期真っ盛りだったころのぶっ壊れたようなスピード感の「暴れ」がなくなり,もうちょっとスローでおとなしめの対応が効くようになってきたのは本当にありがたい。してみれば「我慢」と「言語」の要素によってこのスローさが実現したわけで,子の脳の進化に感謝である。
しかし戦いは終わらない。この後も小学校に上がれば勉強についていけなくなったり,同級生との間に人間関係のトラブルが発生したり,スマホや習い事をせがまれて自分がゲームやオモチャを買えなくなったりするのかもしれない。しかし,押し寄せるそれらのトラブルを一つひとつぶちのめし,やっつけ,解決することの連続が子育てなのだろう。そうか! 子育てって「DOOM」だったんだ! そうと決まれば,コンバットショットガンに弾を込めて戦場に殴り込むしかない。猛り狂うがいい,終幕の時まで……。
「DOOM」公式サイト
「DOOM Eternal」公式サイト
「DOOM: The Dark Ages」公式サイト
「しげるのゲーミング子育て日誌」連載ページ
🧠 編集部の感想:
このニュースは、しげるさんが子育てを「DOOM」に例えたユニークな視点を提供しています。子供の成長過程がゲームの変化に似ているという比喩が面白く、育児のリアルな苦労を軽やかに表現しています。楽しみながらも苦労を重ねる親の姿が共感を呼び、励みになります。
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