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概要
この記事は、Nvidiaが2025年度第1四半期の決算発表を控えた状況を分析したもので、最近の米国政府の輸出規制に関連する内容や、株価の動向、アナリストの予測について触れています。Nvidiaの中国市場へのアクセスが重要であり、今後の決算とその影響が注目されています。
要約(箇条書き)
- 決算発表: Nvidiaの2025年度第1四半期決算は5月28日予定。
- 過去の株価動向: 過去3四半期で株価が決算後下落。
- 輸出規制: 米国政府がNvidiaの中国向け輸出に特別なライセンスを要求。
- 株価の変動: 輸出規制発表後、Nvidiaの株価は8%以上下落。
- 規制撤廃の可能性: トランプ政権がAI半導体輸出規制の撤廃を検討中との報道。
- 中国向け売上高: Nvidiaの2025年期の対中国向け売上高は171億ドルに達し、総売上の約13%を占める。
- アナリスト予測: 第1四半期の売上は43.2Bドル(前年同期比+65.86%)、EPSは0.73ドル(前年同期比+19.12%)と予想。
- オプション市場の動向: コールオプションのプレミアムが大幅に下落し、決算期待が減少している兆候。
- ヘッジ需要: プットオプションの需要が高まり、決算後の株価下落リスクへの警戒感が見られる。
- マクロ経済の影響: Nvidiaの成長が続く一方で、マクロ環境が株価に与える影響に注意が必要。
4/9(水)米国政府はNvidia に対しH20のグラフィック・プロセッシングユニット及び関連ハードウェアを中国に出荷する場合には、特別なライセンスを取得する必要があるとの通達をしました。この今後無期限で必要になるライセンス通知は事実上既存在庫を出荷する事ができず、既に受注をしているものについても同様の措置が取られる事となりました。
“On April 9, 2025, the U.S. government, or USG, informed NVIDIA Corporation, or the Company, that the USG requires a license for export to China (including Hong Kong and Macau) and D:5 countries, or to companies headquartered or with an ultimate parent therein, of the Company’s H20 integrated circuits and any other circuits achieving the H20’s memory bandwidth, interconnect bandwidth, or combination thereof,” the report said. “The USG indicated that the license requirement addresses the risk that the covered products may be used in, or diverted to, a supercomputer in China. On April 14, 2025, the USG informed the Company that the license requirement will be in effect for the indefinite future.”
「2025年4月9日、米国政府(USG)は、エヌビディア・コーポレーション(当社)に対し、当社のH20集積回路、およびH20のメモリ帯域幅、相互接続帯域幅、またはそれらの組み合わせを実現するその他の回路について、中国(香港およびマカオを含む)およびD:5諸国、またはそこに本社を置く、または最終的な親会社を持つ企業への輸出について、USGがライセンスを要求していることを通知した。 「USGは、このライセンス要件は、対象製品が中国のスーパーコンピュータに使用されたり、転用されたりするリスクに対処するものだと指摘した。 2025年4月14日、USGは当社に対し、ライセンス要件は無期限に有効であると通知した。”
この激震報道(通達は4/9ですがこの記事が報道されたのは4/14です)でNvidia の株価(AMDもですが)は(引け後にこの報道が出た)引け後に一時8%超も下落、後にNvidiaは26’1Qに55億ドルもの費用を計上する事となりますが、それよりも中国市場に対するアクセス権を事実上失う可能性がある点に投資家は大きく反応したと思います。
しかしこの後4/29にはトランプ政権はこのAI半導体輸出規制の撤廃を検討しているとロイター通信が報道しNvidia の株価は急伸、ですが前記したライセンス制は正式にはまだ廃止されておらず今後の法改正が期待されるところです。
Some changes include potentially removing part of the legislation that will split the world into various tiers and how many advanced artificial intelligence accelerators a country could get, the news outlet added, citing three sources familiar with the matter.
The plans are still being discussed and could change, the sources added.
The Trump administration is also weighing enacting a global licensing scheme where it would have specific government-to-government agreements, the sources added. Other changes may include a lower threshold for licensing exports, the news outlet added.いくつかの変更点には、世界を様々な階層に分割する法律の一部を削除する可能性や、一国が獲得できる高度な人工知能アクセラレーターの数などが含まれると、このニュースに詳しい3人の情報筋は付け加えた。この計画はまだ検討中であり、変更される可能性もある、と情報筋は付け加えた。
トランプ政権はまた、特定の政府間協定を結んで世界的なライセンス制度を制定することも検討している、と情報筋は付け加えた。 その他の変更点として、輸出許可の基準を低くすることも考えられる、と同通信社は付け加えた。
2025年1月期(Nvidia の会計年度の締めは1月)の対中国向け売上高は171億1000万ドルと報告されており、総売上高(2025年度は約1305億ドル)の約13%を占めておりました。
【※ByteDance (BDNCE), Alibaba (NYSE:BABA) and Tencent (OTCPK:TCTZF) を含む中国のハイテク企業は、規制が入る事を予想しており、今年最初の3ヶ月間で160億ドル相当のH20チップを注文していたようです。】
この売上分が果たして2026年会計年度でどのように変化してくるのかは投資家が注目する点の一つだと思いますが、5/9にロイター通信が以下の記事を報道しており、対中顧客の重要性を改めて認識した形ではないかと思います。
※しかしこの廉価版チップも米商務省の許可が必要になり、現時点ではまだ輸出できるかどうか不明な状況です。
Nvidia (NASDAQ:NVDA) is set to release a downgraded version of its H20 artificial intelligence (AI) chip for the Chinese market within the next two months in response to tightened U.S. export restrictions that have blocked its sale, Reuters reported, citing sources familiar with the matter.
エヌビディア(NASDAQ:NVDA)は、米国の輸出規制強化により販売ができなくなった人工知能(AI)チップ「H20」のダウングレード版を、今後2ヶ月以内に中国市場向けにリリースする予定だと、ロイター通信が関係筋の話として報じた。
Blackwell(GB200)の出荷は好調で中国向けの売上減少部分を一部相殺する程の需要(もしくはそれ以上)かと思われますが、冒頭の題名にも記載したマクロ環境の後押しが株価には大きく影響してくるため、一概に決算数値だけで判断できないのがこの規模の企業の宿命ですね。
26’1QのConsensus予想
現在アナリストさん達の間で予想されている予想値を載せておきます。
Revenue $43.20B($39.00B~$45.60B)Y/Y+65.86%
EPS nonGAAP $0.73($0.64~$0.78)Y/Y+19.12%
26’2Q ConsensusRevenue $45.68B($40.71B~$49.11B)Y/Y+52.06%
EPS nonGAAP $0.99($0.85~$1.10)Y/Y+45.77%
2022年末~2023年に掛けてNvidia株を購入された投資家さんはサプライズ感が乏しくなってしまったかもしれませんが、時価総額3兆ドル超の企業は前年同期比+50%以上で成長しているという驚異的なマクロ背景の恩恵を受けている事は忘れてはいけません。ただ冒頭で述べたように決算による絶対的な数値もありつつマクロ環境の追い風と懸念の払しょくが株価躍進の鍵になりますので、この点はしっかり認識しておいてください。
この点で分かりやすい例がTSMCの株価だと思います。
先月発表した25’1Qの決算は売上高成長率は前年同期比で+41.4%、EPSについても+53.62%と世界一のファウンドリー企業で需要も引き続き旺盛なのに株価は過去最高値から17.9%も下がった位置で推移しております。
少し話が反れてしまい申し訳ありません、先日の輸出規制で55億ドルの費用計上をすると発表した内容を織り込んだEPSのRevision Trendを掲載しますが、Q1のみ急激にカクンと落ちているのが輸出規制の修正分だと思います。
26’1Q~27’2Q EPS Revision Trend グラフ
続いて売上高(Revenue)のRevision Trend グラフです。
26’1Q~27’2Q Revenue Revision Trend グラフ
これを見る限り今後のNvidiaの成長速度は多くのアナリストさん達が成長は今後緩やかになって行き、決算内容やガイダンスが上方修正される可能性も相対的に少なくなってくる予想のようです。
Seeking AlphaでのRevision GradeはB-の評価ですが、過去90日間で決算予測数値を上方修正したアナリストさんの方が多い様ですので、Huang CEOの決算説明会でのコメントにも期待したいと思います。
Nvidia 過去90日間のRevision Grade
Nvidia株 先週末時点でのオプション動向から読み解く
Nvidiaの決算といえばオプション取引がものすごく活発になる事で有名ですが、このオプションプレミアムの価格推移や最多価格帯でのポジションによって投資家さんや市場参加者の思惑が見えて来る面がありますので、見て行きたいと思います。まずは5/30期限のコールオプションの先週末時点での価格表です。
Nvidia コールオプション価格、Volume帯
【1】決算プレイ直前の “期待剥落”か
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直近のオプション価格は**軒並み大幅下落(-10〜-38%)**しており、プレミアムの剥落が進んでいます。
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これは以下の可能性を示唆:
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決算に対する**一部利確(ロングコール解消)**の動き
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あるいは、決算サプライズ期待がやや低下しつつある可能性
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【2】最も活発な水準:130~135ドル周辺の行使価格
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VolumeやOpen Interestが最も大きいゾーン:
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$130:29,524件(OI: 34,388)
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$135:31,498件(OI: 37,199)
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これは、市場が「決算後130〜135ドル程度を現実的なターゲット」と見ていたことを示唆
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なお、現在の株価(参考:$126.57 前後)からして4〜8%程度の上昇を見込む水準であり、過度な強気ではないが期待はある形
【3】プレミアム剥落とIV(インプライド・ボラティリティ)低下
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135ドルコール:前日比 -0.79(-18.08%)
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140ドルコール:-0.66(-25.29%)
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プレミアムは大きく減少しており、IVも縮小中(恐らく50%台→40%台に)
➡︎ これは「市場がイベント通過後のボラティリティ低下を織り込みに行っている」ことを反映。
➡︎ 特に「決算直後に急変はせず、織り込み済み」とみる向きが増えている印象。
【4】150ドル以上のコールは事実上 “投機枠”
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例:$150コールは価格 $0.47(前日比 -38.16%)
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大きな出来高は維持されているが、実現可能性は極めて低い水準
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「当たればラッキー」の宝くじ型ポジションが多く、IVと価格が大きく剥がれている
決算を控えた週末のオプション市場では、全体的にプレミアムの大幅剥落が確認され、特に130〜135ドル周辺のコールに出来高が集中しています。このあたりが市場の想定する「決算後の到達可能ゾーン」と見られます。
一方で140ドルを超える価格帯のコールオプションはギャンブル的色彩が強く、30%以上も下落しており、ポジション整理が進んでいると考えられます。
続いてプットオプションも見て行きたいと思います。以下は先週末時点でのNvidia株プットオプションのプレミアム価格と最多価格帯です。
Nvidia プットオプション価格、Volume帯
【1】全体的にプットプレミアムが上昇(+6〜18%)
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大半の行使価格帯でプットの価格が10%前後上昇。
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一部行使価格(123ドルなど)では+18%超と急騰。
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これは、決算に向けた「株価急落リスク」に備えるヘッジ需要が強まっていることを示唆。
【2】ヘッジ需要の集中:$125〜135が中心ゾーン
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出来高・価格上昇率ともに活発なのは**$125〜135ゾーン**。
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これは「決算発表後に株価が今より10%前後下落する可能性に備える動き」と読める。
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決算に対する不安感が一部に残っていることの裏返し。
【3】深いOTM(行使価格150ドル以上)も一部で需要
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150〜160ドルのプットにも建玉が存在し、価格上昇率も一定水準。
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株価が「急落して再び120ドル台に戻る」というストレス・シナリオへの備えとして機能。
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特に$152.5プット(+10.91%)、$157.5(+10.56%)など、イベントリスク用ポジションと考えられます。
先週末時点でのオプションのプレミアム価格を見る限りでは、投資家は先週まで期待から価格が戻って来た分の売りに警戒を強めている印象ですね。
個人的にはこのオプション動向は少し意外でしたので、決算前の飛び乗り等は控えようと思いました。
その他参考資料
2025年1月期~3月期に於ける3月の世界半導体売上高は559億ドルに達し、2ヵ月続いた減少の後、初の連続上昇となったようです。
3月の売上高は前月比1.8%増、昨年3月比では約18.8%増であったと、世界半導体貿易統計のデータは報告している。
売上高の大部分を占める米州は、前月に引き続き連続して減少している。 月の売上高は約0.4%減の185億7000万ドルだった。
一方、欧州、中国、アジア太平洋地域は、2月と比較してそれぞれ2.4%から5.7%投資を増加させた。
先月、米商務省は、半導体の輸入が国家安全保障に与える潜在的な影響を調査していると発表しており、この分野への関税が設けられる可能性が高い。
「対象外の関税は、国内で技術を開発しチップを製造するコストを引き上げ、アメリカの競争力を低下させる危険性がある」と、半導体業会は、この件に関して米商務省に意見を提出している。
世界地域別半導体売上高規模推移グラフ
第1四半期の世界半導体売上高は1,677億ドルで、2024年第1四半期に比べ18.8%増加したが、2024年第4四半期に比べ2.8%減少した。
昨年との比較では、米州が半導体販売高で45.3%の急増を記録、アジア太平洋は15.4%の成長ペースで次点であった。 中国は2月の販売高が前年同月比7.6%増でした。
まとめ
先月のハイパースケーラーの決算から昨今の輸出規制の問題、中東での新たな契約、台湾でのAIカンファレンスなど幅広く見てきましたつもりではおりますので自身の見解をまとめたいと思います。
市場におけるデータセンター需要は今後も継続して伸び続けるというエコノミストさんもいれば、Deepseekのような新興企業の勃興など多額の設備投資をせずともAI推論はトレーニングできる可能性を言及するかたもおられます。正直どちらが正しいかは分かりませんが ”現時点では” NvidiaのGPUが生成AIにおける推論トレーニング効果は他社より一歩も二歩も先を行っている為、今後も各社各国がこぞってNvidiaのGPUを購入するであろうことはほぼ間違いないと思います。
ここで注意したいのは昨年までのように需要が伸び続けており、業績もそれに準じて伸びている事と比例して株価が伸び続けて行くわけでは無いという点です。ご存知の方はご存知でしょうが2020年7月にAppleが1対4の株式分割を発表し、翌8月31日の1ヶ月間で株価は約30%も上昇しました。
当時のAppleは時価総額$2.2Tの規模でしたので現在のNvidiaより小さな規模ですが、これほどの規模の企業の株価が大きく上昇する背景にはやはりマクロ環境における追い風が必須となって来るものです。そして企業が大きくなればなるほど懸念事項も増えてきますので、ライバルが出てきたり顧客側の投資計画に変更が出たり、サプライチェーンの問題など市場は良いニュースよりも悪いニュースに反応しやすくなります。
巨大企業の宿命とも言えるようなこの(時価総額3兆ドル)壁は未だ上抜けた企業が無い為、Nvidiaがこの3兆ドルを超えて行く可能性があるとすればそれは多くのマクロ環境の追い風を受けた状態で、すごい決算を出してきた時ではないかと予想しております。一度上抜けてくればETFや投資信託などにおけるウェイトが変わって来て資金が流入しやすくなりますので、自然と買い支えられてくるものだと思います。
Nvidia Consensus EPS Estimates
現在の株価での割高感をP/E指標で見た場合、2026年営業年度でのForward P/Eは31.80、2027年度では23.28まで下がりかなり割安な水準だと思います。
こちらはTSMCの同様のEPS Estimatesですが、2025年営業年度でのForward P/Eでなんと20.77、2026年度まで含めると18.10という割安さです。
TSMC Consensus EPS Estimates
Nvidiaも同様に業績だけでは株価が上昇しにくい銘柄になってしまった事は事実だと思います。しかし現時点で世界一の半導体ファブレス企業であることは間違いなく、先日の台湾で発表したGB300のように今後も進化した製品を世に送り出していく事は間違いないでしょう。
私もNvidia株のホルダーでありますので、引き続き株価と企業の成長を見守っていきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました、28日の決算に注目しましょう。
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