🧠 あらすじと概要:
あらすじ
「BLUE GIANT」は、ジャズの魅力に心を奪われた少年たちの成長を描いた物語です。彼らは東京の街を駆け巡りながら、ジャズへの情熱を持って挑戦し続けます。タフな環境にさらされながらも、彼らの心には燃え盛るような情熱があり、ジャズという音楽を通じて自己を表現し、仲間と共に絆を深めていく姿が描かれています。
記事の要約
この記事では、映画「BLUE GIANT」のテーマがジャズの本質に焦点を当てていることが強調されています。著者はジャズを高温の炎に例え、「死んでなどいない」と力説。映画は、現代の若者が抱くジャズへの情熱を描き、観客に感情の高まりをもたらす力を持つと述べています。特に、アニメーションならではの表現が映画の魅力を引き立て、観る者に深い感動を与えると評価されています。最終的に、この映画はジャズが持つエネルギーを再確認する機会を提供しており、劇的な体験を通じて自らの感情を掻き立てる力があると締めくくられています。
ジャズは死んだのか?否、死んでなどいない。
それはいまこの場で、21世紀の日本の清潔な映画館で、ジャズを知らないひとの胸の底にすぐにでも火をつけることができる、引火性の爆発物だ、と本アニメ映画は語る。
その炎に当てられて、我々は魂を燃やし、胸を焦がし、目蓋を熱くする。
それがジャズだ。
ジャズをジャズ足らしめるもの
ジャズが青春だった1960年代、父はその空気を吸って生きた。折に触れて彼が実家のターンテーブルに置いたLPによってぼくは、よく分からないなりに、その頃のジャズに触れて育った。いまの時代に大きく開花したロック音楽にも、メタル、ハードロック、ロックンロール、ポップスなどのジャンルがあるように、ジャズにも様々なカテゴリが存在する。
ディキシー、ビバップ、モダン、ビッグバンド、エレクトリックなど様々だ。
素朴なものから洗練されたもの、様式に特化したものから極めて難解なものなどあらゆる世界が存在してる。しかし、そのすべてに通じ、ジャズをジャズ足らしめているもの。それはきっと冒頭に掲げたジャズの魂なのかもしれない。
ぼくがこよなく愛するソフトジャズにあってさえ、その灯は連綿と受け継がれている。
アニメだからこそ意味があるもの
映画の話をしようと思って、ジャズの話ばかりしてしまったけれど。本作は、現代の若者にほとんど知られていないと思われていたジャズを体得し、人生の階段を駆け上がってゆく少年たちの物語だ。冷たい雨に打たれ、財布の中身が底をつきそうになっても、ジャズから離れられない彼ら。だって彼らの胸の中には、何よりも切実な、燃えさかる炎があるから。
ジャズという名の松明(たいまつ)が。
彼らはこの東京の町を駆け抜け、満身創痍になりながら、とっておきのステージに立つ。そこに至るクライマックスは、感情が昂ってどうしようもなかった。泣けたか、と言われればもちろん泣けたのだけど。涙を流すことが最良の映画の評価にならないと思っている。涙を流すことは思考を止めてしまうことだから。そこだけ、馬鹿になっちゃうから。だから歯を食いしばって必死で銀幕を見続けた。スクリーンの向こうで演奏される圧倒的なジャズに置いて行かれぬよう、こちらも懸命に画面を見続けた。アニメーションでしかなしえない映像表現。アニメーションでしか作り得ないカタルシス。きっとハリウッドならこれを実写でやってしまうのだろうけど、実写でやられたらきっと、違和感が残っただろう。
これは日本のアニメであるからこそ、意味があったのだと思う。
ジャズのありよう
ものすごい映画を見た、という感慨に捉えられて終劇後、しばらく席で呆然とするほかない。
それがこの映画の、そしてこの映画が描いたジャズというものの、ありようなのだから。
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