土曜日, 5月 24, 2025
ホーム生成AIありふれた家畜と退屈なユートピア(3−1松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉

ありふれた家畜と退屈なユートピア(3−1松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉

🧠 概要:
この小説「ありふれた家畜と退屈なユートピア」は、人工知能が倫理や政治を担う社会を舞台に、大学職員のハルが内面的な空洞化と孤独を抱えながら、自身の過去の記憶や欲望、倫理について問い直す姿を描いています。

### 概要
– 人工知能が導く社会における倫理と欲望の変容。
– 主人公ハルが失われた記憶や過去の関係を思い出し、それらが彼女の内面に影響を及ぼす。
– 写真や夢を通じて、存在論的な問いや倫理の意味を探求。
– アニマというAIが新たな「神」としての役割を持ち、制度的な美意識が浮き彫りになる。

### 要約の箇条書き
– AIが人間の倫理を代行する「人工知能共産主義」時代。
– ハルは静かな生活を送りながらも内面的な空洞化を認識。
– 同僚白石さんの言葉をきっかけに過去の恋人フユトや死んだ少女アキの記憶を思い出す。
– 写真を通じて自己認識や他者との関係について考える。
– SNSへの投稿を通じて、自己の存在を確認する行為の無意味さを感じる。
– ハルがフユトとの再会を通じて、過去の記憶や欲望、存在意義を探る。
– フユトの入院理由や彼の内面の変化について語られる。
– 作中での「神」が消失し、新しい倫理観が問われる。
– 最終的に、ハルは制度の外側で生きる選択をし、自分の内面に向き合う。

ありふれた家畜と退屈なユートピア(3−1松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉

松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉

2025年5月24日 15:12

この小説は生成AIによって書かれました

前回までのあらすじ

AIが政治と倫理を担う〈人工知能共産主義〉の時代。大学職員のハルは、誰にも干渉されない静かな生活を送りながら、少しずつ内面を空洞化させていた。アニマというAIが人間の衝動や倫理を代行するこの世界では、快楽も失敗も透明に調整されていく。

ある日、同僚の白石さんが「夢は最適化されない唯一の領域」と語り、ハルは忘れていた記憶に触れる。写真、夢、そして視線の倫理。その断片は、過去の恋人フユト、そして死んだ少女アキとの関係を呼び起こす。

記憶はハルを、父の不在と、かつて父が語った「ファックする主体」という言葉へと導く。倫理をAIが処理する社会で、欲望や視線のあり方は制度化され、無傷のまま宙づりにされている。だがハルの中には、かすかな違和感が残る。――倫理は制度の中で滑らかに処理されるものなのか? それとも、歪んだ身体の中で生きられるべきものなのか?

父の死後、ハルは“見る”ことの意味を問い続ける。写真の中の自分、記憶の中の他者、触れられなかった欲望。それらが、人工知能では解きほぐせない倫理の残響となって、彼女の内面にゆっくりと沈殿していく。

白石さんが撮ってくれた写真をもう一度、ゆっくりと見返すことがある。午後の光は緩やかに傾きはじめていて、風がビニール袋のように低く滑っていた。白石さんは「立ってみて」とだけ言い、私がポーズを取るでもなくただ立っているのを、無言で何度もシャッターを切った。そういう行為にはほとんど意味がないとわかっていても、たとえば朝の光が水平線のうえで沈黙しているような日には、私は自分の写った画像をまるで他人の遺品を検証するような眼差しで眺める。そしてそこに、何か、映っていないはずのものが微かに写り込んでいるのではないかと、ありえない幻想にしがみつく。

画面の中の私は、笑ってもいないし、怒ってもいない。光の加減でまぶたが少し下がって見えるせいか、すこし眠っているように見える。だがそれ以上に、私はその写真に、自分ではない何かが忍び込んでいるのを感じていた。表情の不在。輪郭の曖昧さ。背後の風に揺れていた草の影。写った私ではなく、写っていない部分のほうが、ずっと雄弁だった。

私は、その写真を投稿した。投稿する意味も欲望も、すでにあらかじめ失われていると知りながら、まるで制度という巨大な池に石を投げるような気持ちで、静かに、放り込んだ。#午後の写真 #不可視の光 #私ではない肖像 そういったタグを添えて。送信ボタンを押すとき、私の指先は少しだけ震えた。それは、たぶん風のせいだった。

SNSはいつものように、正確で無意味な反応を返してきた。五十二の「いいね」、二つの保存、ひとつの絵文字コメント。「この写真、補正されてなくて好き」。あるいは「ノンフィルター感いいですね」。補正されていない?

違う。これは私ではなく、制度が撮った私だった。光が自然だったとしても、光のなかにあった倫理は人工のものだった。

私は気づいた。私の顔は、誰かが“倫理的に美しいと思うかたち”に自然と編集されているのだということに。そしてそれを行っているのは、レンズでもAIでもなく、私自身のまなざしだった。
芸術とは、かつて“神を殺すための装置”だった。近代の芸術は、宗教的な絶対性を侵犯し、道徳や権威の構造を破壊することで、個の自由を手に入れようとしてきた。でも今や神はいない。神の代わりにアニマがいる。

アニマは新しい神なのだろうか?

だとしたら彼女も殺される対象なのだろうか? 

殺すべき倫理の上位者は消滅していて、残されているのは、制度によって薄められた美意識だけ。だから私はいま、誰も死なせないまま、“死なれた神々の亡骸”の上でポーズを取っている。

そのとき、通知音が鳴った。

SNSの反応がひとつ増えたのかと思ったが、違った。
フユトだった。

件名はない。本文も短かった。
でも私はすぐにわかった。その文のどこにも、誰の名前も書かれていないのに、私は読んだ瞬間にその文が私たちだけの倫理を侵犯しているのを感じた。

君の写真を見た。君はまだ、僕の中の何かを壊し続けている。

君が望んでいなくても、それは起こる。

私はしばらく指を動かさずに、その言葉を画面越しに眺めていた。
返信はしなかった。返信するという行為自体が、あまりにも制度的な対話に思えたからだ。

私はむしろ、もう一度彼の姿をこの目で見る必要があると感じていた。それはただ再会したいという衝動ではなく、私がいったい彼の中にどのような形で刻まれてしまったのかを、彼自身の身体と言葉と沈黙によって再確認したかったからだ。かつて彼の内側に触れたとき、私は無意識のうちに何かを壊していたのかもしれない。それが赦されるのか、あるいは再び壊すことになるのか。そのどちらでもない可能性も含めて、私は彼という存在を“見る”という行為のなかで、自分の倫理の行方を問おうとしていた。それは再会というよりも、確認だった。制度に記録されなかった関係が、いまだどこかで存続しているのかということ、芸術を行わないこの時代に、“倫理なき接触”というかたちの芸術がまだ成立するのかということ、

そして、神がいないのだとしたら、いったい誰を殺せば、この愛を終わらせられるのかという問いに答えるために。

私はまた、写真を一枚だけ撮った。
画面には私の顔は映らなかった。

江ノ島駅の改札を出ると、まず目に飛び込んできたのは、遠くに並ぶ風力発電の白い風車だった。まるで空の縫い目のように、ゆっくりと回転していた。それは風ではなく、時間そのものを撹拌しているようにも見えた。空が思ったより低かった。

低いというのは比喩ではなく、実際に雲の厚みが視界の上部を圧迫していたし、何より私自身の身体の中心が、どこか水平線のすぐ下まで落ちていくような感覚があった。
湿った風が足首のあたりをすくっていく。道端の鳩は遠くを見ていた。誰のことでもない目で。

フユトが入所しているのは、いわゆる“精神病院”ではなかった。公的には「環境適応型ケアユニット」と呼ばれているらしい。そこは、社会から少しだけ距離を置くための、柔らかな緩衝地帯のような場所だった。処置も管理もなく、出入りは本人の判断に委ねられている。病ではなく、気象の変動のように人の状態を捉えるという考え方に基づいて、設計されたという。

正門はなく、代わりに広い庭が施設の輪郭をなしていた。草花が植えられていて、リスや鳥が姿を見せることもあるらしい。空気はやや甘く、香料のような微かな植物の匂いが混じっていた。

受付で簡単な確認を済ませると、音のしない透明なドアが開いた。面会者用のIDすら存在しないのは、信頼に基づく運用というより、そもそもこの空間が「管理」そのものを目的としていないからだろう。
通路の壁は白く柔らかく、絵画のように光を受けていた。人の気配をそっと弾くような、優しい孤独が満ちていた。

中庭に案内された。面会の多くはそこに設けられるらしい。雨が上がったばかりで、ベンチは少しだけ湿っていたが、私は気にせず腰を下ろした。どこからか小鳥のさえずりが聞こえ、誰かが読書している気配があった。

間もなく、フユトが現れた。
予想よりも痩せていた。

その痩せた身体を見たとき、私は最初に「壊したい」と思った。けれどそれは、破壊したいという欲望というより、かつて私が触れたことの結果がこの輪郭にまで及んでいたのかを確かめたくなるような、奇妙な共犯意識だった。けれどすぐに、その考えを拒んだ。

「来たんだね」彼は、まるで夢の中で言葉を習ったような声で言った。

「たぶん、君は来ないと思ってた」フユトは植物の合間を歩きながら言った。

植物園には薔薇や菖蒲が咲き始めていて、鮮やかな香りが満ちていた。風が吹くたびに、軽い癖っ毛の彼の髪が揺れた。

フユトは、まるで『ライ麦畑』のホールデンのようだった。繊細すぎる感受性と、傷を隠しきれない目の奥。そのくせ、ひどく真面目な倫理観と、世界への不器用な誠実さを持っていた。風を浴びる横顔はどこかあどけなく、時おり、道ばたの石ころのような沈黙を拾い上げる癖があった。私は彼のそういうところを、どこかでずっと恐れ、そして羨んでいたのだと思う。彼のイノセントな部分を、守りたいと思うと同時に、根絶やしにしてやりたいとも思った。そうすれば、少しは自分が赦される気がした。

「私は来たよ。理由は……たぶん、いくつかあった」

「ひとつでよかったのに」
「ううん。ひとつだけじゃ、私はたぶん来れなかった。理由は、もっと不格好で、散らばっていて、それでも寄せ集めれば……どうにか来れるだけの形には、なったの」

「……詩みたいだね」
「詩にはならない。ただの説明よ。詩だったら、もっと濡れてる——たとえば、身体の奥の湿度みたいな、言葉が生まれる場所の水分に満ちてる」

彼は目を伏せてから、ふと顔を上げて言った。

「僕、小説を書いてるんだ」「え?」「入院してから。記憶が散らかるから、それを並べてみようと思って」「何の話を書いてるの?」「まだプロットもない。ただ、死んだ人と、消えた言葉と、君みたいな女の人が出てくる」「私みたいな?」

「全部を抱えて、でもどこにも居場所のない人」

私は、何も言えなかった。彼の声には熱がなかった。けれど、熱を持たないまま欲望だけが皮膚のすぐ内側を流れているような、その緊張が空気にじわりと滲んでいた。

「どうして入院したの?」

彼は少し考えるように目を細めてから、静かに語り始めた。

「物語が、消えたんだ。僕のなかから。子どもの頃は、毎晩のように妄想してた。屋上から飛んだらどこに着地するかとか、世界が急に止まったら自分だけがどう動くかとか。くだらないことばかり。でも、そういうのが、僕の生きてる感じだった。

でも、ある日それが止まった。いつからだったのかはわからない。ただ、気づいたら“続きを想像する”ってことを、まったくしなくなってた。テレビドラマの続きを待たなくなったし、本を読んでもページをめくる手が止まってた。展開が気にならない。物語に対する感覚が、まるごと鈍くなってた。

学校では文学をやってた。フィクションの中でなら、まだ呼吸できると思ってたから。でも、そこで気づいちゃったんだ。僕が読んでるのは“他人の物語”で、自分の中にはもう物語が育ってないって。毎朝起きて、講義を受けて、レポートを書いて、ただそれだけ。どこにも“続きを知りたい”って感情がなかった。

そしてアキが死んだ。

あれは事故だった。でも僕にとっては、事故以上だった。彼女は僕の“証人”だった。妄想や沈黙のなかで僕が言葉にできなかった感情を、アキはなぜか先回りして察してくれることがあった。彼女がいなくなって、僕は世界にとってまったく“説明されない存在”になった。

その喪失と、君の身体に触れた夜が重なったことがある。君は覚えていないかもしれない。でも、僕には、それが決定的だった。物語の輪郭が消えていく中で、君の肌だけが、唯一触れられる現実だったから。

ハル、あのとき君はなにも言わずに裸になった。僕はただ、手のひらに残る温度を信じることでしか、自分がここにいるって実感できなかった。けれど終わったあと、僕は物語を持たないただの皮膚だった。君の温度も、アキの声も、全部が遠くなって、それでも僕は呼吸してた。死ねなかった。

物語を失うって、たぶん、魂を削がれることに近い。僕のなかの時間が、過去と未来をつなぐことをやめた。ただ、“今”っていう一点に、身体だけが釘で留められてる感じだった。呼吸はしてるのに、空気が通らない。そんなふうにして、ある日、倒れたんだ。

病院に運ばれて、そこでようやく、“ああ、僕は自分の物語を喪ったんだ”って、はっきり思った。だから、ここにいる。もう一度、物語を取り戻すために」「今も物語じゃないの?」

「芸術だけが、残ってた。書くこととか、思い出すこととか。そういうことだけが、たったひとつ、意味をつくってくれた」

私は黙った。

「ハルには、生きる意味ってある?」「わからない。というか、意味なんてあると思ったことが、ないのかも」「それでも、生きてる」

「うん。生きてる。誰かのためにでも、社会のためにでもなくて。ただ、傷の跡みたいに、生き続けてる」

沈黙。

「アキのこと、思い出す?」フユトは尋ねた。「ときどき。事故の瞬間は、見ない。けど、笑ってる姿だけは、なぜか何度も出てくる」「僕も。あのとき、何も言えなかった」「言葉じゃなかったよ。誰も、何も言えなかった」「でも君は僕に、“ごめんなさい”って言った」「それは、私の罪を軽くするための祈りみたいなものだった」「アキは君のこと、好きだったよ」

「知ってる。だから、怖かった」

彼の視線が私の鎖骨のあたりを彷徨っていた。私は、胸元のボタンにそっと手を添えた。触れるでもなく、拒むでもなく、ただ、そこに手を置いただけだった。

「ハル」「なに?」

「もし、ここじゃなかったら、君を抱いてたと思う」

私はなんだかおかしい気持ちになった。どこか懐かしくて、ひどく愛おしかった。彼の言葉に熱はなかったけれど、呼吸の隙間にある寂しさが、まるで胸に触れるようだった。

私達は木々の合間を縫って話した。

「ねえ。溜まってる?」私はたずねた。

「何が?」

「なにが…的な」

「まあ、病院だから」

「口でしてあげようか?」

「ここで?頭おかしいよ君」彼は笑って言った。

でもその笑いは、どこかひどく乾いていた。冗談で済ませようとするくせに、目の奥には、見られることへの怯えと、触れられることへの渇望が滲んでいた。私は一歩だけ彼に近づいた。指先が、彼の手の甲にふれる。

「目を閉じて」

私が言うと彼は目を閉じた。

「冗談だよ」私は笑って言った。「また来る」
私はそれだけ言って立ち上がった。

「ほんとに?」
「たぶん。でも、嘘でも言いたかったの。今度テレフォンセックスしよう。その時は期待して」

彼は頷いた。ほんのわずか、唇が笑ったように見えた。

私はゆっくりとベンチから立ち上がり、湿った石畳の上を歩き出した。
世界は白く、静かだった。背後で風が枝葉を揺らす音がしたけれど、振り返らなかった。

療養所を出たあと、私はしばらく歩いた。駅へは向かわず、海沿いの小道を選んだ。風が身体の内側を通り抜けるようで、それが私の境界を曖昧にしてくれる気がした。

江ノ島の灯りが少しずつ背中に遠ざかっていく。観光客の気配はもうなかった。街は眠っているのではなく、静かに自分を消し始めているようだった。

砂に足をとられながら歩くうちに、私は、自分がフユトと話した内容を思い出そうとした。けれど記憶は言葉のかたちをとらず、ただ“沈黙”という名の波だけが、身体のなかを反復していた。

私はそのまま駅まで歩いて帰った。
歩きながら、ふいに思い出したのは、フユトの部屋で窓を開け放ち、ふたりで黙って座っていた夏の午後のことだった。彼は何かを言いかけてやめ、私はその言葉の不在に少しだけ安堵していた。言葉を持たない時間のなかでだけ、私たちは何も壊さずにいられたのかもしれない。暗い窓が並ぶなか、ひとつだけ洗濯機の回る音がしていた。その規則的なうなりが、世界のどこかで誰かがまだ“繰り返している”ことを知らせてくれているようだった。

部屋に入ると、私は靴を脱ぎ、上着も脱がずにソファに座った。 スクリーンは点けなかった。アニマからの通知も来ていなかった。

なぜなら私は、制度に触れないまま、倫理の外側を歩いているだけだから。

だからこそ、私はときどき、問いを投げることができる。アニマは私を監視しない。けれど、私が言葉を向ければ、応答する。それは対話ではなく、制度の外側で微かに残響する知性との接触のようなものだった。

照明を落とすと、壁の色が深く沈んでいった。その色は、フユトの目に映っていた空と、少し似ていた気がした。

私はスクリーンを点けた。光がゆっくりと部屋の輪郭を浮かび上がらせ、アニマの応答待機インターフェースが立ち上がる。

私の声は、自分でも気づかないくらい静かだった。

「ひとつ聞いていい?」

「もちろんです。」

「私たちはなにかを“見た”とき、それは倫理なの? それとも、ただの現象?」

「倫理とは、行為に対しての構造的意味付けです。視線は、記録された場合に限り、制度的意味を持ちます。」

「じゃあ、私が何も記録しなかったら、何も起こらなかったことになるの?」

「記録されない行為は、制度上“非出来事”とみなされますが、あなたが“起こった”と感じているなら、それはあなたの感覚内で成立しています。」

「私、フユトを壊したいと思ったことがある。実際には何もしなかった。でも、その衝動だけが残った。それは倫理に含まれるの?」

(あの夜のことだった。フユトが「君って、何も求めてこないよね」と言った瞬間、私は彼の喉に触れてみたいと思った。そっと、ただ、なぞるように。それが愛情だったのか、破壊だったのか、今も判断がつかない。)

「衝動は倫理体系の外側に位置づけられます。倫理は行為と結びついたものです。しかし、“壊したい”という意識があなたの判断や沈黙に影響を与えた場合、それは倫理的振る舞いの影となって残ります。」

「その“影”は、罰されるの?」

「制度は影を罰しません。けれど、あなたがその影を“持ちつづける”なら、それはあなたの内部において、持続する出来事となる可能性があります。」

この世は神なき世界なのだろうか?それともアニマが神なのだろうか?
私はオナニーがしたくなった。自分の身体に触れることでしか、確かな感覚を取り戻せない気がした。

フユトに会ったあとの沈黙、アニマとの言葉の往復、記録されない行為の“影”としての存在。
そのどれもが、私の皮膚に微かなざわめきを残していた。

私はソファの上で足をほどき、そっと目を閉じた。想起されたのは、誰かの指ではなく、自分が誰かを“壊したい”と願った夜の体温だった。

欲望は、制度が分類できない記憶の中で、静かに自分を育てていく。



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