「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
「イーロン・マスク? 笑わせるな。誰よりも強く速く高効率な宇宙船を作れるのはたぶん私のほうだ! ゲームで証明してやる! なんか持ってこい!」という人は,今回紹介する「Cosmoteer: 宇宙を駆ける艦隊 偉大なる建造者そして偉大なる指揮官に」(長すぎるので以下,Cosmoteer)を遊んでみるといいかもしれません。これがそれです。
米国のインディーゲームデベロッパ・Walternate Realitiesが開発しているCosmoteer(ちなみに原題はCosmoteer: Starship Architect & Commanderであり,やはり長い)は,自作の宇宙船で広大な宇宙を飛び回ったり戦ったりする,PC向けサンドボックス型宇宙船建造ゲームです。思いのままに宇宙船を組み上げて実戦で豪快にテスト,それをまた改善して――を繰り返す,ゲームを進めるよりクラフトし続けたいという人にうってつけのゲームですね。
本作は2022年10月にSteamでアーリーアクセスが開始され,2024年10月の「0.27.2」パッチで,それまではMODでの対応だった日本語が正式に実装されました。ありがたき哉。現時点で本作は1万件以上のレビューを集め,“圧倒的に好評”を獲得しています。クラフト好きの筆者は個人的に「で,出会っちゃったかも……」とドキドキするレベルの面白さを感じていまして,Steamでの高評価にも強く頷いております。
Cosmoteer Gameplay Trailer (2023)
船をアップグレードしながら銀河を探索する
本作の開発元であるWalternate Realitiesの中心人物はWalt Destler氏。拠点はカリフォルニア州サンマテオのようですね。
なお日本語翻訳の詳しい情報はゲーム内のクレジットを含めて見当たりませんが,ひとまず,これまで日本語化MODを提供してくれた有志の方々に感謝したいと思います。ありがとうございました。
チュートリアルの文章を把握できないと途方にくれるので,日本語化は助かります
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Cosmoteerでプレイヤーは,自ら用意した船でプロシージャル生成された銀河を探索します。さまざまな危険,具体的には海賊などがあちこちに巣くっている宇宙を,船を強化しながら進むわけです。……などと一応それっぽく書いてみましたが,端的に言って「より強力な船を作るためにあちこち銀河を旅する」のほうが,私の受けた印象に近いでしょうか。
移動中の小さな宇宙船
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同じシーンでズームアウトするとこうなります。スクロールホイールを使って,宇宙船の詳細から星系全体までシームレスでチェックできるんですよ。かっこいい
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本作のゲームモードは,銀河を探索しながら“伝説のコスモティア”なるものを目指すという「キャリア」と,リソースを気にせず船の建造を楽しめる「クリエイティブ」の2種類です。後者はサンドボックス部分にフォーカスした内容なので,本稿では前者に絞って紹介します。
さらに自由に船を作れるクリエイティブモード。あらかじめ収録された船やSteamワークショップで入手した船をベースにいじるのも楽しいですね
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協力プレイとPvPに対応したマルチプレイモードも備えています
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キャリアモードのプレイのサイクルは比較的シンプルです。
ゲームはまず,難度と,自らの船を選ぶところから始まります。用意された船は4種類で,それぞれ機動力が高い,シールドを備えているなどの特徴がありますが,どうせすぐ気に入らなくなって(自分の手で)バラバラにするでしょうし,どれでもいいと思います。
そのあとは宇宙に放り出されます。チュートリアルを除けば,あとは完全に自由。分かりやすい目標としては,この宇宙でのプレイヤーの「名声」を上げるというのがあります。そのための足がかりとして,近くの宇宙ステーションからミッションを受け,懸賞金のかかった逃亡者を追って撃破したり,海賊の基地を破壊したりします。報酬は低いですが戦闘を挟まなくていい,「ミサイルの部品を○○ステーションに運べ」みたいなおつかいもありますね。
ミッションクリアで得られるのは,名声,通貨となるクレジット,そして倒した相手の船から得られる資源です。名声が上がるとより多くの乗組員を船に乗せて大規模な船を運用できますし,クレジットを使えば武器やシールド,スラスターなど各種装備の新たな設計図をアンロックできます。そして資源は船のアップグレードや消耗品として使える,といった感じですね。
クレジットを使って装備をアンロックし,選択肢を増やしていきます
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ただし得られる名声は受けられるミッションの難度と比例するため,同じ星系にいる限りは頭打ちになります。さらに名声を高めるにはより高い難度のミッションをこなす必要があり,そういったミッションを受けるために別の星系へ移動する必要が出てきます。そうなるともちろん戦う敵も強くなるので,そのために船をアップグレードする必要が出てくる――というわけです。
星系はこのとおりたっぷり
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船にハイパードライブを装備し燃料もあれば,この巨大なリレーというかゲートを使って別の星系へジャンプできます。かっこいい
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乗組員の動きを最適化していく宇宙船いじり
Cosmoteerの最も楽しい部分は宇宙船いじり。これはもう間違いないと思います。
そんな宇宙船いじりですが,本作のSteamストアページなどでものすごい巨大戦艦などを見て怯んだ人もいるんじゃないでしょうか。しかし実は,動く仕組みや実際の建造はそれほど難しくありません。
でかっ!
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宇宙船を動かすだけなら簡単です。動力となるリアクターと,乗組員が操縦するためのコックピット,乗組員の居住スペース,出入り口となるエアロック,そして火災を止めるための消火器を備えた部屋,あとは推進力を発生させるスラスターがあればひとまず動きます。
デザインやスラスターの数は適当ですが,構成としてはほぼ最小。左は内部の様子で,右は外観です
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ただそのままだと使えないので,これに入手した資材を置く保管庫や,武器,防御用の装甲,エネルギーシールド発生装置,広い宇宙を“ジャンプ”するためのハイパードライブ,弾薬や素材を船内で生産する工場,トラクタービームを放出するエミッターなどといった装置で肉付けしていく形ですね。もちろん「自分の好きなように」です。
原型はすぐになくなります
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宇宙船いじりで重要となるのは,乗組員の動きをどのように設計するかでしょう。
コックピットや武器を始め,操作を必要とする装置には乗組員が1名から数名,張り付く必要があります。そして最も重要な点として,船の動力源となるエネルギーは,発生元であるリアクターから各種装置まで,バッテリーという形で乗組員が運搬する必要があるのです。
乗組員がせっせと走ってバッテリーを運搬。なぜそこだけローテクなのかは分かりませんが,きっとミノフスキー粒子とかゼッフル粒子的ななにかががあるんでしょう。まあいいじゃないですか
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リアクターや乗組員室から各種装置への導線がどうなっているのかは設計時に分かります。一方,実際に乗組員がどう動いているかは,実戦でゲームスピードを遅くしたり停止したりしてチェックする形になります。
修理/建造モードでは,各装置へのマウスオーバーで動力源や乗組員と接続があるか,距離はどれぐらいかが分かります
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戦闘中の船内を眺めていると,移動中の攻撃は動力側にエネルギーが割かれて武器に回ってないとか,リアクターでのエネルギー生成は間に合っているがクルー不足で必要な場所に届いていない,あるいはクルーは足りているがリアクターから装置への導線が長すぎる――などといったことが分かります。そして問題を改善し,時には「こりゃ基本的な設計からやりなおしだわい! ガハハハハ!」といって楽しむわけです。
適当な敵を探し,クイックセーブしておいて攻撃。そしてじっくりと船内の様子をチェックします。これが結構楽しいんですよ
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乗組員をグループ分けして,設備への割り当てを固定することもできます。このあたり,少し驚くぐらい細かな設定が可能でした
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ちなみにプレイヤーは,複数の宇宙船を所持することができます。
敵の船を大爆発しないよう無力化して接収することが可能ですし,たまに放棄されてプカプカ浮いている船は我が物としてしまってかまいません。そうした船を再利用して,資源回収特化型やスピード型などさまざまな船を作って遊ぶのもいいでしょう。艦隊として,フォーメーションを組んで敵を襲うこともできます。
筆者はそんなところまで進んでいないので,まずは船をちょこちょこ集めて,これは倉庫用,これは資源採掘用,戦闘用,みたいな感じで運用しています
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本作は戦闘部分も凝っていまして,マウスで操作する,W/S/A/Dキーで操作するなど複数の方法で船を操れますし,戦闘時に敵のどこを狙うか,船の武器を役割ごとにグルーピングして,ターゲットを決めたり,オン/オフを制御したりもできます。この部分も「船を指揮している」感が強く楽しいです。戦闘部分の作りがしょぼいとクラフト部分の魅力も失われますからね。素晴らしいデキだと思います。
なんだかんだで,戦闘に特化した宇宙艦としての運用が一番楽しいかもしれません
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見かけよりハードルは低い
筆者は正味20時間ほどしかプレイしておらず,まだ浅瀬でちゃぷちゃぷしているイメージですが,そのうち,およそ7割ぐらいの時間は宇宙船をいじっていたでしょうか。
クラフトにどっぷり浸かるまでの時間が短かったのは,本作の宇宙船いじりが思ったよりも直感的で,ごく序盤から(機能を含む)デザインを楽しめるからでしょう。3Dではなく2Dであること,ブロックを使うタイプのサンドボックス作品よりも部品一つひとつのまとまりが大きいことで,宇宙船建造や改造を比較的短時間でできる点などがハードルを下げているのかもしれません。それでいて,ちゃんと船作りの奥が深いのがいいんですよね。
Steamワークショップで良さげな船を物色する楽しみもあります。もちろん自分でアップロードしてもいいですし
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ただ宇宙船いじり以外の部分,たとえばミッションなどは,今のところ淡泊に感じます。そういった部分をクラフトの付属物として割り切れる人に向いたタイトルという印象ですね。はなから「クリアしよう」などとはまったく思っておらず,楽しく,かつ終わらないゲームを探している筆者のようなタイプには,とくにおすすめです。