話題になっていたので遅ればせながら鑑賞。
全体を通して見て、これは怖いと思いました。あまりにも自分のことしか考えていないこの両親に驚いたのです。
深い恐怖とやるせなさを感じました。
父親の様子をうかがうジェイミー
あらすじ
13歳の少年ジェイミー・ミラーが同じ学校に通うある少女の命を奪った疑いで逮捕され、家族が崩壊していくさまを描いたヒューマンサスペンス。本作で俳優デビューを果たしたオーウェン・クーパーが主人公ジェイミー役を演じた。Netflixで配信中。
『映画.com』より引用
感想(ネタバレ含む)
女子学生の殺人容疑で逮捕されたジェイミーとその家族を描いたドラマです。1話…ジェイミーの逮捕、取り調べ2話…2日目、刑事による学校での聞き込み3話…7ヶ月後、心理療法士とジェイミーの対話
4話…13か月後、ジェイミーの家族の様子
これらがカット割なしの長回しで60分ずつという構成で、集中力が途切れず、まるでその場にいるような臨場感で、物語にどんどん引き込まれます。
しかし、少年の犯罪という重い内容と、その家族の描かれ方に、どんどん気が重くなっていきました。
まず、ジェイミーの見た目の印象に引きずられないように意識していたつもりでしたが、逮捕時の彼の態度には思わず戸惑いました。
あまりにも「無実」を装う姿が自然で、無邪気さと狡猾さが同居するその演技(あるいは演技でなかったのかもしれません)が、後から考えるととても恐ろしく感じられました。
さらに、監視映像という明確な証拠があったにも関わらず、彼が事実を認めるまでに1年もかかったことは注目されるべき点です。
親に本当のことを言えなかったのは、親子関係に何らかの歪みがあったからではないでしょうか。
特に父親は、真実と向き合う姿勢に欠けていたように思います。ジェイミーのことを施設に丸投げしていたのかもしれません。親としての責任を充分に取ってこなかったように感じられました。
家庭内における父の強権的な姿勢も見逃せません。自らを「家族の支柱」として振る舞う父の姿は、ジェイミーに対しても無言の影響を与えていたと思います。
「弱い立場の女性は支配できる」という歪んだ価値観、短気で反論されると逆上する、という性質は、この家庭の中で自然に染みついたものだったのではないでしょうか。
肉体的な暴力でなくても、力で押し切れば相手は従う、という関係性を、父の背中から学んでしまったのかもしれません。
被害者への思いが薄く描かれていた点も心に引っかかりました。父親が事件現場に花を手向ける場面こそありましたが、それ以外に加害者家族が罪の重さを真正面から受け止める様子はほとんどありません。
彼らは引っ越しを拒みます。もし自分が被害者の立場だったら、加害者の家族が同じ町に住み続けるという事実を、どう受け止められるでしょうか。
最もどうなのか!?と思ったのは、夫婦が泣きながら「いい父親だった」「いい母親だった」と互いに言い合うシーン。
本当に悲劇なのは、命を奪われた少女であり、ジェイミーもまた親の力で救えたはずです。姉も被害者でした。にもかかわらず、まるで自分たちが悲劇のヒロインのように慰め合う両親の姿には呆れ、憤りを感じました。
そんな中で唯一救いだったのが、バスコム警部とその息子アダムの親子関係です。
学校の荒れた様子やSNSの問題、そしてジェイミーの事件を通して、彼は「息子としっかり向き合わなければ」と気づいたのでしょう。
外食へ向かうシーンには、親子の対話や信頼の大切さが込められていて、心が温まりました。
子どもと向き合い、よく観察し、否定せずにできたことを認めてあげる。
子育てにおいて大切なのは、小さな積み重ねなのだと、改めて思い知らされました。
それでは、また次の映画で!
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