はじめに
2025年6月25日・26日に開催された AWS Summit Japan 2025 に参加しました。本記事では、その中の注目セッション「Amazon Connect で実現するカスタマーセルフサービスの新しいカタチ」についてのレポートをお届けします。
セッション概要
対象者
Amazon Connect やコンタクトセンター領域における AI 活用に関心のある方。
セッションのゴール
- コンタクトセンター業務における自動化領域の拡大を把握する
- Amazon Connect と AI 機能を連携させるステップを理解する
登壇者情報
- 登壇者: 濱上 和也 さん
- 所属: アマゾン ウェブサービス ジャパン ソリューションアーキテクト
アジェンダ
- カスタマージャーニーから見るセルフサービスの重要性
- Amazon Connect によるセルフサービスの実現
- Amazon Q in Connect による価値の創出
- 導入に向けたステップとまとめ
セルフサービスの重要性
カスタマージャーニーの観点から、なぜ今セルフサービスが重要なのかが解説されました。
従来のカスタマーサポート体験における課題
- ケース例:
- 旅行中の顧客がフライトやホテルの予約変更を必要とし、コンタクトセンターへ連絡
- IVR(自動応答)で解決したかったが、うまく完結できなかった
- コンタクトセンターへ連絡
- IVR対応開始
- セルフサービスボットとのやりとりに失敗し続ける
- エージェントへ転送される
- 状況を再度説明する必要が生じる
結果として…
- セルフサービスで完結せず、エージェントにも繰り返し説明する手間が発生
- 顧客体験の低下、サービス離脱の要因に
顧客の好むコミュニケーション手段
2024年の調査によると、顧客が最も好むチャネルは「音声通話」であり、約70%が通話を希望しています。
→ 音声チャネルにおける効果的なセルフサービス提供が重要
コスト削減への貢献
- 自動音声応答(IVR)は、エージェント対応と比べて 最大93% のコスト削減効果
- 北米の大手銀行では、通話の50%を自動化することで約1億ドルのコスト削減を実現した事例も
セルフサービスの提供に伴う課題
業務の流れ(問い合わせ → 対応 → 解決 → フォローアップ)には、常に状況判断と適切な情報提供が求められ、提供側の対応も複雑になります。
Amazon Connect によるセルフサービス体験の進化
Amazon Connectは、複雑な対応プロセスを一元管理し、自然でスムーズな顧客体験を支援します。
- 単一のクラウドサービスで数万社に導入
- 1日あたり1,000万件以上のコンタクトに対応
- 10万人超の Amazon カスタマーサービス担当者が活用中
Amazon Connect の特長
- 顧客ごとのパーソナライズされた体験
- GUIベースで簡単にセルフサービス設計が可能
- AI/MLによる効率化と自動化
- 継続的な改善を支える分析機能
- 大規模スケールに対応(数万エージェント)
セルフサービス導入の効果(4つの価値)
- エージェントへの転送率の削減(最大80%)
- 対応時間の短縮(最大90%)
- 課題解決率の向上(最大95%)
- 設定変更の迅速化(最短1日)
業務の自動化可否の見極め
どのような業務を自動化できるかについては、業務フローを「定型」「半定型」「非定型」の3つに分類して説明されました。
- 定型業務: 手順が決まっており、自動化しやすい(例:支払い処理、パスワードリセットなど)
- 半定型業務: 選択肢や判断が一部必要だが、テンプレート化が可能(例:返金対応、契約変更など)
- 非定型業務: 個別判断や人の介入が必要で、サポート自動化やエージェント支援が主な対象(例:トラブル対応、提案業務など)
Amazon Q in Connect による高度な体験提供
テリーさんの事例を通じて、Amazon Q in Connect による自然な対話体験が紹介されました。
特徴的な5つの機能
-
人間らしい自然な会話体験: 最新のテキスト読み上げモデルにより人間のような会話調の声を提供し、顧客情報やデータを用いたパーソナライズされた挨拶が可能
-
顧客のニーズを予測
顧客の履歴や最近の活動に基づいてカスタマイズされた対応を提供し、定期預金の満期が近い顧客に対して、それに関する問い合わせであるかを確認するといった先読みが可能 -
タッチトーン入力など多様な入力方式に対応
自然言語による使いやすさに加え、騒がしい環境での機密情報の伝達や精度向上のためにタッチトーン入力も可能 -
会話文脈を活かした応答
生成AIを用いてカスタマイズされた会話型の応答を作成し、複数のソースから顧客データをリアルタイムで取り込むことで、問題解決から付加価値サービスへのシームレスな移行を実現 -
マルチチャネル対応
音声とデジタルチャネル間のシームレスな移行が可能で、通話終了時に次の対応方法を案内するなど、一貫した顧客体験を提供
こうした対応が、顧客満足度の向上とビジネス成果につながると紹介されました。
セルフサービス体験の作成、編集、管理
- ドラッグ&ドロップによる直感的な対話フロー設計
- Amazon Q in Connect や Amazon Lex ボットも GUI 上で簡単に連携可能
Amazon Q in Connect を支える3要素
-
AIエージェント
- エンドツーエンドで機能を定義(プロンプト、ナレッジソース、ガードレールの設定)
- 業務に応じてペルソナを定義し使い分け
- プロンプト等の各要素を連携させる柔軟な設計が可能を連携させた柔軟な設計が可能
-
AIプロンプト
- LLM(大規模言語モデル)への指示をカスタマイズ可能
- 回答生成やアクション実行の制御が可能
- 文脈・顧客情報に基づいたパーソナライズ応答が実現
-
AIガードレール
- 不適切なトピックや言葉をブロック・フィルタリング
- 個人識別情報などの機密情報を自動で編集・削除
- 文脈に基づく検証によりハルシネーション(誤情報)を検出・抑制
Contact Lens を用いた音声分析
- 音声通話の文字起こし・分析
- 問題の早期発見、対応品質の向上を支援
感想
Amazon Connect の進化は、単なる電話対応の自動化にとどまらず、生成AIと組み合わせることで、顧客体験そのものを再構築していると感じました。
中でも、Amazon Q in Connectによる生成AIを活用したセルフサービスは、今後のカスタマーサポートのあり方を大きく変える可能性を秘めていると感じました。複雑な問い合わせにも人間らしい自然な会話で対応し、さらには顧客のニーズを先読みして最適な提案を行うことができるのは、まさに次世代のカスタマーサービスだと感じる貴重なセッションでした。
次回は、実際に Amazon Q in Connect を活用したセルフサービス構築にチャレンジしてみたいと思います。
参考
記事内画像:AWS Summit Japan セッション資料一覧 「AWS-15 Amazon Connect で実現するカスタマーセルフサービスの新しいカタチ」より引用
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