DAZNと大手代理店の博報堂が「戦略的提携」を発表しました。「感情」を起点としたビジネス開発を共同で行っていくとのことです。
博報堂、スポーツストリーミングサービスDAZNと戦略的提携 ―スポーツを通じてうまれる「感情」を起点としたクリエイティブ開発により、新たなメディア・コンテンツの価値を共創― |ニュースリリース|博報堂
株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:名倉健司、以下博報堂)は、スポーツ・チャンネル「DAZN(ダゾーン)」を運営するDAZN Japan Investment合同会社(本社:東京都、CEO:笹本裕、以下DAZN)と「感情」を起点としたビジネス開発において戦略的提携契約を締結しましたので、お知らせいたします。
博報堂と言えば、先日2026年ワールドカップの放映権についてFIFAと独占交渉していると報じられました。また、DAZNは6月のクラブワールドカップの放映権を得ており、FIFAとのパイプを深めつつあります。本日時点で「FIFA+」のコンテンツの一部がDAZNで視聴できるようになったことも確認しています。
このニュースと絡めると、来年のワールドカップの放映権はDAZNなのか?と思うかもしれませんが、FIFAと博報堂の契約がまだ正式に結ばれていない以上、いまのところは「関係ない」という答えになるかと思います。博報堂は今後スポーツビジネスに積極的に関わっていくことが期待されますので、DAZNと組むことはノウハウの蓄積に役立つでしょう。
それ以上に、今回の提携の肝となっているのは「広告」ということになりますので、その点について当ブログなりに解釈していきます。
DAZN Japanの笹本CEOへのインタビュー記事では「収益源のハイブリッド化」というキーワードが出てきます。視聴料金以外の収入源を増やしていこうというものです。
DAZNはグローバルで「DAZN Freemium」を開始し、一部コンテンツの無料化を進めています。来月のクラブワールドカップは全試合無料配信となります。しかし、日本市場に限ってみてみると、スポーツベッティングが解禁されていない以上、広告収入を増やすこと以外に道はありません。
最近ではAmazonプライムでも広告が入るようになりました。Netflix、ABEMAなど「広告付きプラン」を導入するサービスも増えており、ストリーミングサービスにおいて広告をめぐる競争が激化しています。その流れに取り残されるわけにはいきません。
ストリーミングの競争において、DAZNは「スポーツ特化型」であることが仇となりました。コロナ禍ではコンテンツがなくなり大きなダメージを受け、その隙に他のサービスが勢力を伸ばしていったのです。料金設定が高いのも放映権料の高さゆえであり、競争力を低下させています。
しかし、広告においてはひとつのジャンルに特化することがプラスになる可能性を秘めています。的確にターゲット層をとらえた広告を配信できれば、その枠は高く売れるのです。博報堂もそのあたりにポテンシャルを感じているのでしょう。
先月発表されたドコモとの提携も、料金プランばかりが注目されがちですが広告関連の協業が大きなポイントとなっています。ドコモは大きな会員基盤と、アリーナ・スタジアムの運営権を持っており、それらから得たデータを広告に活かそうとしています。
DAZNは電通から出資を受けていたことでも知られます。10%程度の株式を保有していたとされます。しかし、莫大な累積赤字が積み上がり、DAZNは親会社にあたる投資会社・Access Industriesから支援を受けることになりました。また、今年に入ってサウジの政府系ファンドから10億ドルの出資を受けています。
この流れによって電通が保有するDAZN株の価値は薄れ、最新の有価証券報告書ではついにDAZNに関する記述が消滅しました。これによって、博報堂とも堂々とお付き合いできるということなのでしょう。
もちろん、電通以外の広告代理店と取引しちゃいけないということはなく、広告枠を売るためにはさまざまな代理店と取引する必要がありますので、今後も電通だったり、あるいはサイバーエージェントなどとも組む可能性があります。
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