XREALが新しいハードウエアを正式発表した。
サングラス型ディスプレイの「XREAL One」とセットで使う単眼型カメラである「XREAL Eye」だ。価格は13,980円。発売は6月下旬を予定している。
予約は本日、5月14日15時から、公式サイトや取扱店で開始される(Amazonおよび楽天市場では6月下旬より取り扱い開始)。
ひと足さきに実機を触りつつ、どんなものかを確かめてきた。
主観視点で静止画と動画を撮影
では、XREAL Eyeではなにができるのか?
シンプルに言えば2つある。
それは動画・静止画の「主観視点撮影」と、「XREAL One+XREAL Eyeによる6DoFの実現」だ。
まずカメラの方から見ていこう。
これまであまり語られてこなかったが、XREAL Oneの中には2GBのストレージが内蔵されている。XREAL Eyeを取り付けて写真や動画を撮影すると、基本的にはこのストレージの中に撮影ファイルが蓄積される。
撮影はXREAL Oneの右手側についてくるボタンで行なう。どのボタンを使うのかは自分で設定可能だが、「ボタンを押して静止画、長押しで動画」といった設定が一般的だろう。
カメラとしてのXREAL Eyeの解像度は、静止画では2,016×1,512ドット。画像ファイル形式はJPEGのみだ。
動画の場合には1,600×1,200ドット・MP4(コーデックはHEVC)。音声はXREAL One側のマイクを使って記録する(こちらのコーデックはFLAC)。記録時間は15秒・30秒・60秒の決め打ちで、設定時間が経過すると自動的に記録は停止する。
では、撮影品質はどのようなものか? 以下は撮影サンプルだ。比較用にiPhone 16 Pro Maxのものを用意した。
もちろん解像度も発色もiPhoneには劣るのだが、そこまで質は悪くない。XREAL Oneのモーションセンサーを使ってブレ補正が行なわれるので、意外とブレも少ない。
撮影すると自分の視界には、「おおまかな撮影フレーム」と「中心のマーク」が表示される。だからけっこう撮影しやすい印象を受けた。ただ、表示される目安より撮影できる幅は広くなる傾向がある。
XREAL Oneはバッテリーを内蔵していないので、撮影には機器への接続が必須。だが、前述のようにデータはXREAL Oneのストレージへと記録されるので、取り出す時には、PCなどにつなぎ、XREAL Oneのメニューから「写真/ビデオを伝送」を選ぶ。するとXREAL One内のストレージがMTPでPCなどと接続されるため、簡単にファイルをコピーできる。
なお、撮影時にはどうしてもプライバシーへの配慮が必須になる。
そこでXREAL Eyeでは、撮影時には必ず「LEDの点灯」「シャッター音の再生」の両方が行なわれる。ハードウエアで制御されており、XREAL Oneから設定を変更することはできない。後ほど述べる、サードパーティーアプリからの利用でもその部分は同様だという。
参考までに撮影時のLEDと音を動画で収録したので、そちらもご覧いただきたい。
撮影時のLEDと音声を動画で
より自然に使える「6DoF」に対応
もう一つの機能は「6DoF」だ。
XR関連技術ではおなじみだが、再度解説しておこう。
6DoFは「自分の向き・位置・高さを認識できる」機能。空間に映像を浮かせる場合、そこに近づいたり横に行ったり、背後に回ったりできる。Apple Vision ProやMeta Questが実現しているものである。
それに対し、XREAL Oneは「3DoF」だった。これは「自分を中心としてどちらを向いているのかを認識できる」機能。同じく空間に映像を浮かせる場合、視野を変えると見える部分が変わるが、映像に近づいていくことはできない。横に行くことも、背後に回ることもできない。
軽量なディスプレイとしてみた場合、「3DoFのみ」というのはけっして悪い選択ではない。ただ、Vision Proと併用している筆者の場合、不自然さも感じるシーンはあった。具体的に言えば、「よく見ようと体を乗り出す」動作をしても、画像までの距離は変わらなかったのだ。
映画を視聴するならあまり必要でないかもしれないが、PCのディスプレイとして使う時には意外と重要。よく見ようと顔を近づけることも少なくないため、3DoFだと不自然に感じてしまうのだ。
だがXREAL Eyeを併用すると変わる。限定的ながら6DoFになるので、表示されている画面の横に行ったり、後ろに回ったりできるようになる。
画面を見ている時に顔を近づけたり遠ざけたりしても、ちゃんとそれを認識して画面サイズが変わる。従来に比べ自然な感覚になる……と言えばいいのだろうか。
ただ、制限もゼロではない。それは「6DoFの利き方に制限があること」だ。
1つのカメラで奥行きを推定しているので、現実空間や多数のカメラで位置認識する6DoFに比べ不自然な部分は出てくる。特に近くの認識が苦手だ。6DoFなら顔を近づけて細かい部分を見る、という使い方ができるのだが、顔と画像の間隔を数十cmまで近づけるのは難しい。3DoFよりは自然に近くを見られるが、他の6DoFに比べると近寄れない……という感じだろうか。
他の6DoFに近いこともできるが、XREAL OneとXREAL Eyeのセットだけで言えば、歩き回ることよりも「映像の空間へのピン止めがより自然になる」と考えるべきだろう。
XREAL Beam Proとセットで「Mixed Reality動画撮影」も
さらに、XEALの外部デバイスである「XREAL Beam Pro」を接続した場合に限り、追加機能がある。
撮影ファイルはXREAL Oneの中でなくBeam Proに蓄積可能になるし、撮影のシャッターもBeam Proから操作できる。
Beam Proでは専用メニューやアプリを活用した「AR体験」が可能なのだが、XREAL One+XREAL Eyeを使った場合には、「周囲の風景とBeam ProでのUIをミックスした映像」を記録可能になる。
どんな感じなのかは、以下の動画をご覧いただきたい。
XREAL One+Eye+Beam Proで撮影したMixed Reality動画。音声はXREAL Oneのマイクで収録
視界の広さなどは本物での体験とは異なるのだが、XREAL製品同士でのAR体験を簡単に動画化してシェアできる、というのは面白い。
ある意味、XREAL Eyeの6DoF化を一番活かせるのは、Beam Proまでセットで使った時……と言えそうだ。
AI機能はないがサードパーティーの開発は可能
なお、前述のように、XREAL Eyeでできるのは「撮影」と「6DoF」だ。
カメラを使って手の認識を……と期待したくなるが、その機能はない。6DoFのところで説明したように、1つのカメラで把握できることには限りがあり、あえて搭載されていない。
また、AI関連の認識機能や、机などの平面認識機能もない。
では、そういう「AI連動的な使い方」ができないか、というとそうではない。
サードパーティーアプリからXREAL Eyeを扱うと、「映像がそのまま取得される」形になる。だから、アプリの中で独自にAI活用をすることは可能。その点が、開発基盤側で色々な規定をしているAR開発キットである「XREAL Air 2 Ultra」との違い、とも言える。
なおXREALは、先日SDKを「3.0」にアップデートした。XREAL Eyeのサポートも3.0ベースで行なわれる。
3.0では従来のNRSDK APIを廃止し、Unity公式のXR Pluginへと切り替えている。これは、将来的にAndroid XRをサポートする準備と言えるもの。XR Pluginを使えばAndroid XRや他のプラットフォームとのアプリ・技術の共用がしやすくなる。
XREAL EyeそのものはAndroid XRサポートではないが、XREALの開発基盤自体は、今後に向けて着実なサポートが進んでいる印象だ。
🧠 編集部の感想:
XREAL Eyeの発表は、主観視点の画像撮影と6DoF機能を提供する点で非常に興味深いです。XREAL Oneとの連携により、没入感のある体験が可能になるのは大きな進展ですね。ただし、プライバシーへの配慮とカメラの限界には注意が必要だと思います。
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