Ryzen 9 8945HS/32GB/2TB搭載のミニPC
本連載、直近の多くでNPUが40 TOPS以上のいわゆるCopilot+ PCを意識したプロセッサ搭載機ばかりを紹介していた(直前回除く)のだが、今回は久々に普通?のハイエンドモバイルプロセッサ搭載機、GEEKOM「AI PC A8 MAX」の登場となる。
採用しているプロセッサはRyzen 9 8945HS。このSKUの名称からも分かるようにモバイル用としては強力なもだ。ちなみに、下位モデルとしてRyzen 7 8845HS搭載機も用意されている。主な仕様は以下の通り。
GEEKOM「AI PC A8 MAX」の仕様 | |
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プロセッサ | Ryzen 9 8945HS(8コア16スレッド、クロック最大 5.2GHz、L2キャッシュ8MB、L3キャッシュ16MB、TDP 45W、cTDP 35~45W) |
メモリ | 32GB(SO-DIMM/DDR5-5600/最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 SSD 2TB |
OS | Windows 11 Pro(24H2) |
グラフィックス | Radeon 780M/HDMI 2.0 2基、Type-C 2基 |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB4 2基、USB 3.2 Gen 2 5基、USB 2.0、SDカードスロット、3.5mmジャック |
サイズ/重量 | 135.4×132×46.9mm、688g(実測) |
価格 | 13万9,000円 |
プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 9 8945HS。8コア16スレッド、クロックは最大5.2GHz。L2キャッシュは8MB、L3キャッシュは16MB。TDPは45W(cTDP 35~45W)。最大16TOPSであるがNPUも内包している(ただしCopilot+ PCは未対応)。
メモリはSO-DIMM DDR5-5600の16GB 2基で計32GB。最大64GBまで対応する。ストレージはM.2 2280 SSD 2TB。空きのM.2スロットはなく、増設することはできないので注意が必要だ。とは言え、一般的な用途であれば2TBもあれば十分だろう。
OSはWindows 11 Pro。24H2だったので、この範囲でWindows Updateを適用し評価している。
グラフィクスはプロセッサ内蔵Radeon 780M。外部出力用にHDMI 2.0 2基、Type-C 2基 (USB4)を装備する。
ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。その他のインターフェイスとして、USB4 2基、USB 3.2 Gen 2 5基、USB 2.0、SDカードスロット、3.5mmジャック。USB4 2つあるのがポイントと言ったところか。
サイズは135.4×132×46.9mm、重量688g(実測)。今回の構成で価格13万9,000円。別モデルとして用意されているRyzen 7 8845HS/32GB/1TBが114,900円。どちらも10万円を超えるものの、構成を考えると高いわけではないだろう。
筐体は裏パネル以外オールシルバー。ミニPCにありがちな見栄えだ。シンプルなのでオフィスでも自宅でもマッチする。重量は実測で688gでアダプタと合わせても1kgを切るためカバンなどに入れ持ち運びも容易だ。大きさもハイエンドミニPCとしては一般的だろう。
前面はUSB 3.2 Gen 2 4基、3.5mmジャック、電源ボタン。背面は電源入力、USB4、HDMI、2.5GbE 2基、USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、USB4、HDMIを配置。USB4が2つあるのは珍しいかも知れない。扉の写真から分かるように、左側面にはSDカードスロットがある。裏は四隅にゴム足とVESAマウンタ用のネジ穴。
付属品はACアダプタ(約98×65×23mm、重量259g、出力120W)、VESAマウンタ(+ネジ)、HDMIケーブル。
いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4があるためType-Cケーブル1本で接続可能。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。
内部へのアクセスは、まず裏パネル、四隅のゴム足を外すとネジがあるのでそれを外す。ただそのままだと裏パネルがびくともしないので、VESAマウンタ用のネジを1本緩く入れ、それを引っ張る感じにすればパカっと開く。
次に内部に金属製のパネルが1枚。これも四隅のネジを外せば、SSDやメモリにアクセス可能となる。ただし、アンテナ線が付いたままなので扱いには要注意。驚くことに、メモリとSSD、どちらにもCrucial製が使われている。
ノイズや発熱は、ベンチマークテストなどCPUに負荷をかけても左側面から若干の風と、後ろ側が気持ち暖かくなる程度。熱処理はうまくできているようだ。
Ryzen AI 9 HX 370より若干劣るもののハイパフォーマンス
初期起動時、特に追加されたアプリなどはなく、Windows 11 Pro 24H2標準の構成だ。ただビルドが変わったのか、Proにも関わらずMicrosoftアカウント必須、加えて初期起動時にWindows Updateが実行され、Desktopが表示されるまで延々と待たされることとなった。どちらも悪手なので何とかしてほしいところ。いったん起動してしまえば構成が構成なだけにサクサク動く。
M.2 2280 2TB SSDは「CT2000P3PSSD8」。仕様によるとシーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト4,200MB/s。CrystalDiskMarkの値もほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約1.86TB割り当てられ空き1.76TB。BitLockerで暗号化されている。
2.5GbEは「Realtek Gaming 2.5GbE Family Controller」、Wi-Fiは「MediaTek Wi-Fi 6E MT7922」、BluetoothもMediaTek製だ。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23。以前テストしたRyzen AI 9 HX 370搭載の「GMKtec EVO-X1」のスコア(スコアは前回から流用)と比較して、一部を除きパフォーマンスは若干落ちる。この点は価格差もあるため仕方ないところか。
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 5017.376 MB/s [ 4784.9 IOPS]
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2542.734 MB/s [ 2424.9 IOPS]
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 442.005 MB/s [ 107911.4 IOPS]
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 48.259 MB/s [ 11782.0 IOPS] [Write]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 4376.945 MB/s [ 4174.2 IOPS]
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 3614.509 MB/s [ 3447.1 IOPS]
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 453.199 MB/s [ 110644.3 IOPS]
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 154.413 MB/s [ 37698.5 IOPS]
最後、余談になるがLLMベンチマーク?を行なった。LM Studioをインストールしたところ、GPUをVulkanとして認識したものの、標準ではVRAMが4GBなのでCPU/メモリでの実行となった。「cyberagent-DeepSeek-R1-Distill-Qwen-14B-Japanese-gguf Q4_K_M」では、 5.70tok/sec。CPUとメインメモリだけが頑張っている割には、それなりの速度だ(Core Ultra 7 258Vでは4.38tok/secだった)。
次にMoEと呼ばれる手法で作られたモデル、Qwen3-30B-A3B-GGUF Q3_K_Lを試してみた。モデル自体は30Bだが、MoEの場合、各方面小型のエキスパートがいくつか入っての構成のため(ここでは3B)、実行速度が速くなるという特徴がある。
加えてQwen3は、119言語/方言対応。日本語も含まれる。結果は10.95tok/sec。先の14Bをそのまま動かした時のほぼ倍速だ。(個人的に)実用レベルの最低限が15tok/sec程度なのであと一歩といったところか。
以上のようにGEEKOMのAI PC A8 MAXは、Ryzen 9 8945HS/32GB/2TBを搭載したミニPCだ。Ryzen AI 9 HX 370搭載機と比較して若干パフォーマンスが劣るのは残念であるが、その分少し安いのが特徴だ。
「AI機能はまだいい or クラウドを使うので少しでも安くハイパフォーマンス機を!」と思っているユーザーに使って欲しい1台と言えよう。
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