16日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は5日続伸となった。この日発表された米消費者センチメントは弱かったが、トランプ米大統領の関税戦争が沈静化しつつあるとの期待から、同指数は週間で今年2番目の大幅高を記録した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5958.38 | 41.45 | 0.70% |
ダウ工業株30種平均 | 42654.74 | 331.99 | 0.78% |
ナスダック総合指数 | 19211.10 | 98.78 | 0.52% |
貿易巡る期待で米国株は上昇
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
米国と欧州連合(EU)が関税交渉を可能にするための行き詰まりを打開したとする英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)をきっかけに、株価は上げ幅を拡大。貿易相手国・地域との交渉に関して楽観が強まった。最近の対中貿易摩擦緩和を背景に、市場には既にリスク選好ムードが広がっていた。S&P500種は4月の安値から20%近く値上がりし、強気相場入り目前となった。
トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争を受けて米国株は敬遠されていたが、投資家の回帰傾向が見られる。バンク・オブ・アメリカ(BofA)がリポートで引用したEPFRグローバルのデータによると、ファンドマネージャーは先週、米国株式ファンドに200億ドル(2兆9100億円)を投入。1 カ月以上ぶりの純流入となった。
ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー最高投資責任者(CIO)は、「関税の悪影響に対する懸念は急速に和らいでいるようだ」と指摘。「全体として、堅調な1週間だった。モメンタムは引き続き上向きだ」と述べた。

モルガン・スタンレーのリサ・シャレット氏は、先月に付けた底値からの米国株の急反発は一服するとの見方を示した。ハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」の売上高の伸び鈍化や、全体的な業績の勢い減速は、S&P500種が4月の安値から2桁の回復を遂げた後のさらなる上昇を抑制すると指摘。「ここで足踏みすることになるだろう」と続けた。
国債
米国債は下落。終盤に下げ幅を拡大した。ムーディーズ・レーティングスは、米国の信用格付けを引き下げた。政府債務の増加を理由に挙げている。10年債は週間ベースで3週連続の下落と、今年最長の下げ局面となった。
関連記事:米信用格付けを最上位から引き下げ、政府債務の増加で-ムーディーズ
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.94% | 5.8 | 1.19% |
米10年債利回り | 4.48% | 4.7 | 1.07% |
米2年債利回り | 4.00% | 3.9 | 0.98% |
米東部時間 | 16時58分 |
ムーディーズは米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へと1段階引き下げた。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失うこととなった。
この日発表された米消費者のセンチメント指標は5月に予想外に悪化し、過去2番目の低水準となった。関税を巡る懸念が高まる中、インフレ期待は数十年ぶりの高水準を記録した。キャピタル・エコノミクスのアレキサンドラ・ブラウン氏は、最近の対中貿易摩擦の緩和を踏まえ、センチメントは来月に著しく持ち直すと見込んでいる。
関連記事:米消費者信頼感、過去2番目の低さ-インフレ期待は記録的高水準 (2)
外為
外国為替市場ではドルが上昇。ドル指数は週間ベースでも2週連続高となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1232.24 | 2.21 | 0.18% |
ドル/円 | ¥145.67 | ¥0.00 | 0.00% |
ユーロ/ドル | $1.1164 | -$0.0023 | -0.21% |
米東部時間 | 16時57分 |
トランプ米大統領は貿易相手国に対する関税率を「向こう2-3週間以内に」決定すると述べ、全ての相手国と協定を交渉するだけの余力が政権にはないと説明した。
マッコーリーのティエリー・ウィズマン、ギャレス・ベリー両ストラテジストは、「インド、韓国、日本、カナダ、メキシコについては慎重ながらも楽観視している」とリポートで指摘。平均関税率を引き下げる合意がまとまると予想した。「しかし、米国における全般的な政策の不確実性は当面『通常レベル』には低下しないと考えている。また、一時的なショックが市場の認識やリスク『分散』の必要性に長期的な影響を及ぼす可能性もある。とりわけ、米国資産やドルへのエクスポージャーが非常に高い状況ではなおさらだ」と記した。
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの副最高投資責任者(CIO)、ジタニア・カンダリ氏は、「長期的なファンダメンタルズは依然としてドルの一段安を示している。年内にさらに6%下落する可能性もある」と指摘。「米国例外主義」のピークは過ぎたとし、ドル安は今後数年にわたるトレンドになると予想した。
関連記事:ドル買いに戻れぬ投資家、米株高でも慎重姿勢-貿易政策に根強い不安
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアタナシオス・バンバキディス、クラウディオ・パイロン両ストラテジストは、「日米の貿易交渉に進展が見られないことから、日本の財政への懸念が長引いており、円と日本国債が下落する要因になっている」とリポートで指摘。「構造的な要因が円の買いよりも売りを促すと、当社では引き続き考えている。最近の国際収支データもこの見方を裏付けている」と続けた。
一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のデレク・ハルペニー、アブドゥルアハド・ロックハート両アナリストは、6月初旬に公表される5月の米非農業部門雇用者数は弱い数字になるリスクがあるとし、対円でドルをショートにする好機だと指摘した。
円はこの日、対ドルで一時0.3%安の1ドル146円10銭を付けた。ただ、終盤には下げを消した。ムーディーズが米国の信用格付けを「Aa1」とし、従来の「Aaa」から引き下げたことに反応した。

原油
ニューヨーク原油先物相場は3日ぶりに上昇。イラン外相が核プログラムを巡る米国との交渉を巡り、米国から正式な提案を受け取っていないと述べ、協議進展の見通しが後退した。
イランのアラグチ外相はXへの投稿で、「イランは、米国から書面による提案を一切受け取っていない。直接的にも、間接的にもだ」とした上で、「一方でわれわれ、そして国際社会が受け取り続けているメッセージは混乱し、矛盾している」と記した。
トランプ米大統領は15日、イランとの交渉について、合意が近づいている可能性があるとの認識を示した。これを受け、同日の原油相場は下落していた。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「取引の多くは反応的な動きように見受けられる。地政学的なニュースによって価格が数ドル単位で上下している」と指摘。その上で、「週末を控えたポジション調整も、きょうの動きに影響を与えている可能性が高い。不確実性が続く中、トレーダーはリスクを減らそうとしている」と分析した。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は、前日比87セント(1.4%)高の1バレル=62.49ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は1.4%上昇し65.41ドル。
金
金スポット相場は反落。ロシアとウクライナが約3年ぶりとなる直接協議を実施する中、金は売られた。週ベースでは半年ぶりの大幅安となった。
トルコで行われたロシアとウクライナの協議では、捕虜交換で一致し、停戦の可能性は協議されたが、戦闘停止の合意はなかった。
関連記事:ロシアが5地域の割譲要求、ウクライナとの3年ぶり協議-関係者 (3)
また米中貿易協議の進展も金需要を押し下げた。両国間の緊張緩和によりリスク資産が急回復する一方、金には下押し圧力がかかっている。
オーバーシー・チャイニーズ銀行のストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は「少なくとも現時点では関税を巡る緊張の緩和で不確実性がやや後退しており、金には買い疲れが見られる」と分析した。

金スポット価格はニューヨーク時間午後3時9分現在、前日比47.99ドル(1.5%)安の1オンス=3192.11ドル。週間では4%下げた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限はこの日、39.40ドル(1.2%)下落の3187.20ドルで引けた。
原題:S&P 500 Ends Strong Week With Bull Market in Sight: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Bid Unwinds as Stocks Extend Gains in Late US Session
Dollar Rises, Traders Buy Long-Term Bearish Options: Inside G-10
Oil Climbs as Iran Casts Doubt on US Nuclear Deal Negotiations
Gold Set for Biggest Weekly Drop Since November on Peace Talks
(ムーディーズの米国格下げの情報を追加します)
🧠 編集部の感想:
アメリカの株式市場の上昇は、貿易交渉の進展に対する期待から来ており、投資家の楽観的な姿勢が再燃していることが感じられます。しかし、消費者センチメントの脆弱さは今後の市場に影響を与える可能性があり、注意が必要です。全体的には、強気相場への期待感が高まる中での動きが注目されます。
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