5日の米株式相場は反落。S&P500種株価指数は約20年ぶりの長期連騰がストップした。トランプ大統領は一部の国との貿易合意が今週中にまとまる可能性があると示唆したものの、貿易戦争が経済や企業収益に与える影響に身構える投資家にはあまり安心材料とはならなかった。
円は対ドルで上昇し、一時143円台半ばまで買われた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5650.38 | -36.29 | -0.64% |
ダウ工業株30種平均 | 41218.83 | -98.60 | -0.24% |
ナスダック総合指数 | 17844.24 | -133.49 | -0.74% |

米国株は連騰がストップ
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
非製造業部門の活動は4月に加速したが、株価の下落を埋めるには至らなかった。最近の経済指標はリセッション(景気後退)を巡る市場の懸念を和らげるのに寄与していたが、関税戦争の影響はまだ完全には表れていない。
関連記事:米ISM非製造業景況指数、4月は加速-関税でコスト大幅高 (1)
関税を巡り中国との合意が差し迫っていることは示唆されていない。トランプ氏は前日、外国で製作された映画に100%の関税を課す方針を発表した。これが嫌気され、ネットフリックスやパラマウント・グローバルが下落した。
市場の関心は7日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合に向かう見通しだ。トランプ氏の貿易戦争が金融市場に混乱をもたらす中で高まっていた利下げ観測は後退している。経済が堅調を維持する限り、当局は政策維持の判断を正当化しやすくなる。
バンクレートのグレッグ・マクブライド氏は「貿易戦争と絶えず変化する関税の状況の中、不確実性が支配している。しかし個人消費や雇用に関するハードデータは依然として持ちこたえている。FOMCは様子見姿勢をしっかりと維持するだろう」と述べた。

ベッセント米財務長官は、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」だと述べ、トランプ政権の政策はその地位を確固たるものにすると主張した。先月に顕在化したいわゆる「米国売り」に対抗する発言。
関連記事:ベッセント財務長官、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」 (1)
HSBCのラケル・オーデン氏は「明らかに、不確実性とボラティリティーに見舞われている状況だ。それが国内外を問わず、顧客が感じていることだ。その一環として、彼らは『この市場に機会があるのか』見極めようとしている」と指摘。「全ての市場が大きく揺れ、経済の方向性を変え得る新たな報道が毎日のように出てきている」と話した。
マイケル・ウィルソン氏率いるモルガン・スタンレーのチームは、S&P500種が短期的に史上最高値を更新するには中国との貿易合意が必須になるだろうと指摘。今後数週間内に貿易合意が成立すれば、この先のサプライチェーン混乱は限定されるとの安心感を企業にもたらすだろうと分析した。
米国債
米国債は下落(利回りは上昇)。2年債利回りは3営業日連続で上げて、昨年12月以来最長の上昇局面となった。関税の影響が一段と明確になるまで、FOMCが様子見モードを続けるとの見方が背景にある。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.83% | 4.6 | 0.95% |
米10年債利回り | 4.35% | 3.7 | 0.86% |
米2年債利回り | 3.84% | 1.3 | 0.33% |
米東部時間 | 16時48分 |
インベスコのグローバル・マーケット・ストラテジー・オフィスは「政策の不確実性が長引けば長引くほど、経済活動への悪影響は大きくなると当社では考えている」と指摘した。

外為
外国為替市場ではドルが主要通貨の大半に対して下落。円は対ドルで値上がり。一時約1%高の1ドル=143円54銭を付け、主要10通貨の中で値上がりが特に顕著だった。
日本と英国が祝日だったことから、スポット取引の出来高は低調だった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1220.77 | -3.74 | -0.31% |
ドル/円 | ¥143.73 | -¥1.23 | -0.85% |
ユーロ/ドル | $1.1316 | $0.0019 | 0.17% |
米東部時間 | 16時48分 |
この日は通商協議を巡る臆測から台湾ドルが異例の急騰を演じ、世界の市場に影響が波及した。台湾ドルは取引時間中としては1980年代以来の大幅な上昇率を記録。ブルームバーグが追跡する主要16通貨の中で最も上げが目立った。
関連記事:米ドルが対アジア通貨で急落、市場に衝撃-為替協定巡る思惑も浮上
バークレイズの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「関税率の引き下げや貿易協定での進展は、米経済への悪影響が当初懸念していたよりも小さくなる可能性を示唆するが、同時にアジア経済や低迷しているアジア通貨を押し上げる要因にもなり得る」と述べた。
ソシエテ・ジェネラルの資産配分責任者アラン・ボコブザ氏は、現在のポートフォリオは集中度が高過ぎると指摘。中国株や欧州株のほか、円やユーロといった通貨への分散を進めるべきだと主張した。

原油
ニューヨーク原油相場は大幅続落。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が先週末、2会合連続となる大幅な供給増加を決定。貿易戦争で需要が脅かされている中、世界的な供給だぶつきが悪化するとの懸念が広がった。
ロンドンが休日のため商いが薄い中、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は4年ぶり安値を更新した。OPECプラスが今回決めた追加増産は日量41万1000バレルで、6月から実施する。合意された枠を上回る生産を続けているカザフスタンなどに対し厳しく臨むといった戦略転換の一環。
関連記事:原油価格が下落、OPECプラスの追加増産で供給過剰懸念強まる

WTI先物
出所:NYMEX、ブルームバーグ
OPECプラスの戦略転換はすでに先物カーブに影響し、期近限月のスプレッドが急速に縮小。ウォール街は価格予想の引き下げを余儀なくされた。
トータス・キャピタルのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロブ・サメル氏は「OPECプラスの8カ国が2会合連続で供給加速を支持するとは、石油アナリストは予想していなかった。景気の先行きが不透明な現状ではなおさら予想外だ」と述べた。トータスでは世界の石油需給は6月から、最大で日量50万バレルの供給超過になると予想。そうなれば価格は50ドル台前半に下げると見込まれる。

動画:OPECプラスの供給計画を報じるブルームバーグ・テレビジョン
出所:ブルームバーグ
サウジアラビアは生産枠を超過している加盟国に対し、割り当てを守らなければ歴史的な方針転換をさらに進め、一段の増産に踏み切る可能性があると警告。価格への圧力がさらに強まる可能性が出てきた。
その背景ではトランプ氏の関税戦争が経済成長を脅かし、投資家の信頼感を損ない、エネルギー需要が損なわれている。OPECプラスの劇的な方針転換は、継続的な原油売りの勢いを強めた。原油は今年、主要コモディティー(商品)のなかで最悪のパフォーマンスとなっている。
トランプ米大統領は今月、中東訪問を予定している。大統領はこれまでOPECプラスに増産を要求、エネルギー価格押し上げへの協力を求めてきた。
同時にサウジアラビアは米政府との関係強化を目指している。米政府はイランとも核合意を目指した協議を行っている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前営業日比1.16ドル(2%)安の1バレル=57.13ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント7月限は1.7%下げて60.23ドル。
金
ニューヨーク金相場は大幅高。貿易戦争リスクがくすぶり続ける中、関税に関してトランプ米大統領が発した最新の発言が意識された。投資家は今週開かれるFOMCの結果待ちとなっている。
トランプ氏は4日、一部の国との貿易合意が今週中にまとまる可能性があると示唆した後、中国の習近平国家主席と今週中に話し合う予定はないと述べた。FOMCでは金利据え置きが広く予想されている。先週発表された堅調な雇用統計を受けて、トランプ氏がパウエル議長に与える利下げ圧力は強まっているが、健全な労働市場は金利据え置きの正当性を高める。

金スポット相場
出所:ブルームバーグ
金は年初から先週末までに26%上昇しており、4月には一時オンス当たり3500ドルを超え、過去最高値を更新した。トランプ大統領の通商・地政学政策に起因する逃避の金買いが背景にある。中国での投機買いや、中央銀行の金購入も相場を支えた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時54分現在、前営業日比81.15ドル(2.5%)高い1オンス=3321.64ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、79.00ドル(2.4%)高の3322.30ドルで引けた。
原題:Stocks Fall After Historic Run as Trade Risks Loom: Markets Wrap(抜粋)
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