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【第6回】R&Dプロセスにマーケティング要素を──“ヒットが出ない”のは技術のせいではない今野 佳洋知財と経営のあいだにいる人

🧠 概要:

概要

この記事では、中小企業やスタートアップが直面する「良い製品が売れない」理由を考察し、R&D(研究開発)プロセスにマーケティングを組み込む必要性を強調しています。知的財産(知財)を効果的に活用し、顧客のニーズを捉えた商品開発を行うことによって、製品の価値を最大化し、利益を生む体制を構築する方法について解説しています。

要約の箇条書き

  • 中小企業やスタートアップでは「特許を取っても売上が上がらない」という声が多い。
  • 知財の活用は重要だが、どう使うかが問われている。
  • R&Dプロセスにマーケティング要素を取り入れることがカギ。
  • 商品開発の際、「誰の、何を、どう解決するか」が重要。
  • マーケティングは「アイデア段階」から必要で、ターゲットやバリューを設計するプロセス。
  • バックキャスト思考を用いて、未来の目標から逆算して製品を考える。
  • 知財戦略を活用し、模倣を防ぎながら商品を差別化。
  • 中小企業でも簡単に始められるステップを提案。
  • 「モノをつくる」から「価値をつくる」時代へ移行する必要がある。

【第6回】R&Dプロセスにマーケティング要素を──“ヒットが出ない”のは技術のせいではない今野 佳洋知財と経営のあいだにいる人

今野 佳洋知財と経営のあいだにいる人

2025年5月29日 18:00

知財って、本当に役に立ってるの?」そんな声を耳にすることが、正直増えてきました。

特に中小企業やスタートアップの現場では、「特許を取っても売上が上がらない」「知財はコストばかりかかる」といった悩みが根深くあります。

一方で、世界に目を向ければ、知財を“攻めの戦略”として活用し、事業をスケールさせている企業も確かに存在しています。つまり、知財が“使えない”のではなく、「どう使うか」が問われている時代なのです。

そのカギとなるのが、R&Dの段階からマーケティングの発想を取り入れること

誰のために・何を・どう届けるのか。この問いを抜きにしては、せっかくの技術やアイデアも、ただの“研究メモ”で終わってしまいます。

さらにもう一歩進んで、**ビジネスモデルと連動した「知的財産マネジメント」**を実践できれば、

知財は“負債”ではなく、利益を生み出す“資産”に変わります。このマガジンでは、その内容を振り返りながら、

「R&D × マーケティング × 知財マネジメント」という三位一体の視点から、

実務でどう生かせるかを分かりやすく整理してお届けします。こうした動きを、これまでの連載でも詳しく取り上げてきました。

もしまだご覧になっていない方は、あわせてご一読いただくと理解が一層深まります。

📚 過去の記事はこちら
– [第1回:セミナーを“話して終わり”にしない!生成AIで“低カロリー”に記事化・資産化する方法]
– [第2回:なぜ“モノづくり大国”日本がヒットを生み出せなくなったのか?]
– [第3回:知的財産は役に立っていないのか? 中小企業こそ知財戦略で生き残る方法]
[第4回:技術力があっても売れない理由日本企業が陥る“知財のワナ”とは?]
[第5回:技術だけで勝つ時代は終わった分業制が生んだ“壁”を超え、知財を武器に変える方法]

🟢 この記事でわかること

  • なぜ「良い製品」が売れないのか、その根本原因

  • マーケティングと知財を組み込んだ開発プロセスの設計法

  • 中小企業でもすぐ始められる「開発×マーケ×知財」の第一歩

導入文

「開発に時間もコストもかけているのに、売れない。」 「確かにいい製品なのに、なぜか市場に届かない。」これ、技術のせいじゃありません。

じつは、多くの中小企業がR&D(研究開発)に“ある視点”が欠けていることで、商品やサービスが売れる仕組みを設計できずにいるのです。

その視点とは──マーケティングです。
R&Dは技術の積み重ねであり、職人技でもあります。しかし、マーケティング要素を入れなければ、“顧客の欲しいもの”にはなりません
この記事では、知財の視点も交えながら「マーケティングをどうR&Dプロセスに組み込むか」、そのヒントと仕組みをお伝えします。

目次

  1. なぜ「モノが良くても売れない」のか?

  2. R&Dとマーケティングが分断されていないか

  3. バックキャスト思考が変える“開発の起点”

  4. 知財・商標・ノウハウが支える差別化設計

  5. 中小企業が実践できる「開発×マーケ」の第一歩

1. なぜ「モノが良くても売れない」のか?

「これはうちの技術を活かした最高の製品だ」 そんな自信作が、なぜ売れないのか。

実はそこに、“誰の、どんな課題を、どう解決するか”という設計が抜けていることが多いのです。

中小企業の開発現場では、職人気質の強さゆえに「良いモノを作れば売れる」と信じてしまいがち。でも、いま市場は“機能”ではなく“意味”で選ばれます。

だからこそ、R&Dにマーケティング要素が必要なのです。

2. R&Dとマーケティングが分断されていないか

一般的なR&Dプロセスはこうです: アイデア → コンセプト → 試作 → テスト → 製品化 → 市場導入この中で、マーケティングが入ってくるのは「市場導入」の段階。

しかし本来マーケティングは、アイデア段階から関わっていないと意味がありません。

マーケティングとは、単なる販売戦略ではなく

  • 誰に届けるのか(ターゲット)

  • なぜ選ばれるのか(バリュー)

  • 何を守るべきか(知財)
    最初から設計するための思考プロセスなのです。

3. バックキャスト思考が変える“開発の起点”

ここで紹介したいのがバックキャスト思考。 「未来のあるべき姿から逆算して、今やるべきことを考える」アプローチです。アメリカのケネディ大統領が「われわれは月へ行くことを選んだ」と宣言したように、まず未来を描いてから、“逆算”するのです。商品開発も同じです。 「この顧客に選ばれるブランドになりたい」 「この領域のオンリーワンになりたい」

そう決めたうえで、「それを実現する製品とは?」を考え、その過程で知財や商標を戦略的に組み込む

この発想転換が、今の時代に必要です。

4. 知財・商標・ノウハウが支える差別化設計

「良い商品」が「選ばれる商品」になるには、模倣されない仕組みが必要です。
そのための具体策が、知財の戦略的活用です。
たとえば…

  • 特許:製品機能の模倣を防ぐ

  • 商標:ブランドの信用を可視化する

  • ノウハウ:外には出さない強みを持つ

  • 意匠:デザインの“らしさ”を守る

つまり、マーケティングの設計で定義した“提供価値”を、知財が守る。
これが、利益の仕組みを持つ開発体制の基本です。

5. 中小企業が実践できる「開発×マーケ」の第一歩

✅ アイデアを出すとき、誰に何を届けたいかを具体化しているか? ✅ 商品だけでなく、“選ばれる理由”を設計しているか? ✅ 知財を「出願するだけ」で終わらせず、事業設計に組み込んでいるか?

こうした問いからはじめるだけで、R&Dとマーケティングの連携は前に進みます。

まずは、自社のプロセスを見直してみてください。

おわりに「モノをつくる」から「価値をつくる」へ

かつては、良い製品をつくれば自然と売れました。
でも今は、「どのように選ばれるか」を設計する力が問われています。そして、その力の根底には「マーケティング」と「知財」があります。 中小企業こそ、この2つを使いこなせば、大企業に勝てる余地はまだまだあります。もしあなたが、「製品は良いのに、なぜか売れない」と悩んでいるなら、

その答えは“R&Dにマーケティングを組み込む”ことかもしれません。

▶ 次回予告

【第7回】ビジネスモデルに“知財”を組み込むという発想──中小企業の競争力を根底から変える方法

プロフィール
神戸市生まれ。国立大学大学院工学研究科修了後、化粧品メーカーに就職。製剤開発者として、キャリアをスタート。多くの特許を発明者として出願し、知財の世界に興味を持ち弁理士資格を取得。5年間のアメリカでのビジネス経験を活かし、現在は、ブランドマネージャー、子会社取締役、弁理士事務所(個人事業主)として、技術とビジネスを融合して、売れる商品づくりの挑戦中。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

稼ぎ続ける仕組み作り」シリーズは、これからも知的財産を活用する現状を、できるだけわかりやすく発信していきたいと思っています。

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今野 佳洋知財と経営のあいだにいる人

製品開発、海外赴任、知財戦略を経験した弁理士。マーケと知財をつなぎ、稼げる仕組みづくりを発信します。https://kouyoudou.co.jp/



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