SSDとHDDの年間出荷台数(世界市場、2015年~2029年)。2024年までは実績、2025年以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が過去に公表した数値をまとめたもの。なお2024年の実績と2025年以降の予測はTSRが2024年3月に公表した時点の数値

 ハードディスク装置(HDD)関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は、2025年3月25日に市場動向に関するセミナーをオンラインで開催した。正式名称は「2025年3月オンラインマーケットセミナー」である。市場調査会社TrendFOCUSと市場調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)のアナリストがそれぞれ、HDDを中心にストレージ市場の最新動向を解説した。

 中でもTSRによるストレージ市場を展望した講演「Updated Storage(HDD and SSD)Market Outlook」が非常に参考になった。そこで本レポートでは、SSD市場を中心に講演の概要をご報告する。講演者はTSRでアナリストを務める楠本一博氏である。

 なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて録画や配布などが禁止されている。本レポートに掲載した画像(講演スライド)は、講演者である楠本氏と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。

 楠本氏の講演の中でHDD市場に関する部分は、本コラムの前回でご報告した。興味のある方はご参照されたい。繰り返しになるが、今回はSSD市場に関する部分をご報告する。

2024年の出荷台数は3年ぶりのプラス成長

 SSDの世界全体の出荷台数は2009年以降、順調に増加してきた。2020年には出荷台数でHDDを超え、その後はHDDとの差を広げている。

 SSDの出荷台数が前年と比べて初めて減少したのは2022年である。中国の景気後退と、SSD在庫の急増が出荷台数減の主な要因だった。在庫の調整は当時の予想よりも時間がかかり、2023年も出荷台数は減少した。2年連続のマイナス成長も初めてのことだ。

SSDの年間出荷台数と成長率の推移(世界市場)。2024年以前は実績、2025年以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が過去に公表した数値をまとめたもの。なお2024年の実績と2025年以降の予測はTSRが2024年3月に公表した時点の数値

 2024年のSSD出荷台数は、3年ぶりのプラス成長となった。出荷台数は前年比8.9%増の3億4,820万台である。2025年も出荷台数は増加する。前年比5.3%増の3億6,660万台とTSRは予測した。

 2026年以降も出荷台数は伸びていく。予測値は2026年が3億7,820万台(前年比5.3%増)、2027年が3億8,580万台(同3.2%増)、2028年が3億9,100万台(同2%増)、2029年が3億9,350万台(同1.3%増)である。予測通りに台数が増加していくと、2027年に過去最大だった2021年の3億8,302万台を超えることになる。

2024年のSSD出荷金額は34%成長で過去最高を更新

 一昨年(2023年)から今年(2025年)までのSSD市場を一覧表形式にまとめ、もう少し詳しく見ていく。2023年~2024年は実績、2025年は予測である。市場の一覧表を構成する項目は「出荷台数」、「出荷金額」、「1台当たりの平均価格(ASP)」、「総出荷記憶容量」、「1台当たりの平均記憶容量」、「GB当たりの単価」の6つになる。本コラムの前回でご報告した、HDD市場の概要を示す表に対応する。

2023年~2025年のSSD世界市場。2023年と2024年は実績、2025年は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2025年3月25日のセミナーで公表した数値をまとめたもの

 上述のように、出荷台数は既に説明した。出荷金額そのほかの推移を以下に述べよう。出荷金額の実績は2023年が前年比18.2%減の243億1,580万ドル、2024年が同34.1%増の325億9,850万ドルである。出荷金額は2022年と2023年が2年連続でマイナス成長だったので台数と同様に、3年ぶりにプラス成長となった。しかも34%成長という高い伸びを見せ、過去最高を更新した。なお、過去の最高値は2021年の321億6,400万ドルである。

 1台当たりの平均価格(ASP)は2023年が前年比10.8%減の76.03ドル、2024年が同23.1%増の98.62ドルである。2023年以前のASPは漸減傾向にあったので、2024年の大幅な上昇が過去とは異なっている。

 総出荷記憶容量は増加トレンドにある。2023年は前年比0.2%減の275.76EB(エクサバイト:10の18乗バイト)と、初めて前年割れとなった。2024年は前年比30.8%増の360.70EBと大きく伸びた。1台当たりの平均記憶容量は2023年が前年比8.7%増の862.3GB、2024年が同20.1%増の1,053.9GBで、初めて1TBを超えた。

 GB当たりの単価(GB単価)は漸減トレンドにある。2023年は前年比17.8%減の0.088ドルだった。2024年は同2.3%増の0.090ドルである。GB単価が上昇したのは初めてのことだ。SSDの供給不足がいかに強かったかが伺える。

 2025年のSSD市場は、2024年の勢いを引き継ぎつつ、弱いながらも拡大を続けると予測する。GB単価を除き、すべての項目が増加すると見込まれる。

2024年の出荷台数増はエンタープライズ向けとPC向けが牽引

 TSRは製品分野別に四半期ごとの出荷台数を2022年~2025年までの範囲で一覧表にまとめていた。製品分野は「エンタープライズ(Enterprise)」向け、「PC」向け、「外付け(Add-on)」向け、「ビデオゲーム機器(Game Console)」向け、「産業その他(Industrial and Others)」向けの5つ。

 出荷台数が最も多いのはPC向けである。2024年は前年比14.8%増の2億1,910万台となった。全出荷台数に占める割合は62.9%と6割を超える。次に台数が多いのはエンタープライズ向けで、2024年の出荷台数は前年比24.7%増の5,000万台である。次いで外付け向けが同3.5%減の4,660万台、ビデオゲーム機器向けが同28.6%減の2,320万台となった。

 産業その他向けは前年比14.8%増の930万台である。この分野は台数こそ少ないものの、2016年以降は2024年までずっと前年比で増加を継続してきた(2014年以前の台数は不明)。なお2015年の出荷台数は384万台、2016年の出荷台数は408万台である。

SSDの製品分野別四半期出荷台数(2022年~2025年)。2022年第1四半期~2024年第4四半期は実績、2025年第1四半期以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2025年3月25日のセミナーで公表したスライドから

出荷金額ではエンタープライズ向けがSSD市場全体の約6割を占める

 講演では、製品分野別の年間市場にも言及していた。先述の5つの製品分野ごとに出荷台数、出荷金額、ASP、総出荷記憶容量、1台当たりの平均記憶容量、GB当たりの単価の実績と予測を一覧表とグラフで説明した。西暦年のカバー範囲は2017年~2029年である。2024年までは実績、2025年以降は予測となっている。

SSDの製品分野別年間市場動向(世界市場、2017年~2029年)。2024年までは実績、2025年以降は予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2025年3月25日のセミナーで公表したスライドから

 一覧表の順番に沿って2024年以降における製品分野ごとの内容(数値と前年比)を見ていこう。エンタープライズ、PC、外付け、ビデオゲーム機器、産業その他の順番になる。

 エンタープライズ向けの出荷台数はすでに述べたように、2024年は前年比で24.7%伸ばして5,000万台に達した。出荷台数は過去最高を更新した(それまでは2022年の4,730万台)。2024年の出荷金額は前年比52.4%増の192億5,000万ドルと大きく伸びた。金額は台数と同様、過去最高を更新した(それまでは2022年の158億4,550万ドル)。SSD全体の出荷金額に占めるエンタープライズ向けの割合は59%である。前年(2023年)の51%から7ポイント増加した。

 ASPは2024年に前年比22.2%増の385ドルとなった。ASPが前年比で上昇するのは2020年以来のことだ。エンタープライズ向けに限らずSSDのASPは漸減する傾向にあり、上昇することはあまりない。

 総出荷記憶容量は2024年に前年比61.7%増の165.95EBとなった。これも過去最大を更新した(それまでは2022年の109.83EB)。8年前の2016年には10.81EBだったので、8年で15.7倍に急拡大したことになる。2016年以降、2024年まで連続して前年を上回ってきた(2014年以前の数値は不明)。なお2016年に総出荷記憶容量が最も大きかったのはPC向けで、13.16EBだった。

 ドライブ1台当たりの平均記憶容量は2024年に前年比29.6%増の3,318.9GBとなった。2016年には973.0GBだったので、8年で3.4倍に増加したことになる。平均記憶容量も2016年以降、2024年まで連続して前年を上回ってきた(2014年以前の数値は不明)。

 GB当たりの単価は2024年に前年比5.7%減の0.116ドルとなった。記憶容量当たりの単価はエンタープライズ向けに限らず、漸減傾向が続いてきた。2016年に単価は0.499ドルだったので、8年で23%(4.3分の1)に低下したことになる。

 2025年以降のエンタープライズ向けSSDは、出荷台数と出荷金額ともに漸増していく。2029年の台数は7,400万台、金額は236億8,000万ドルと予測する。ASPは漸減していく。2029年のASPは320ドルと予測する。総出荷記憶容量とドライブ1台当たりの平均記憶容量は漸増していく。2029年の総出荷記憶容量は355.20EB、平均記憶容量は4,800GBと予測する。GB当たりの単価は漸減していく。2029年の単価は0.067ドルと予測する。

PC向けSSDは記憶容量当たりの単価が前年比で初めて上昇

 PC向けは前述の通り、製品分野別の出荷台数では最も多い。2024年は前年比14.8%増の2億1,910万台と2桁成長したものの、エンタープライズ向けとは異なり、過去最多ではない。2024年の出荷金額は前年比28.8%増の81億670万ドルとなった。金額も過去最高ではない。台数と金額が過去最高を記録したのはともに2021年で、台数は2億4,420万台、金額は107億4,480万ドルである。

 ASPは2024年に前年比12.1%増の37ドルとなった。ASPは漸減傾向にあり、上昇することは珍しい。ASPが前年比で上昇したのは2020年以来のことだ。

 総出荷記憶容量は2024年に前年比25.0%増の133EBとなり、過去最大を更新した。それまでの最大容量は2021年の117.85EBである。2016年に総出荷記憶容量は13.16EBだったので、8年で10.1倍と大きく増えた。

 ドライブ1台当たりの平均記憶容量は2024年に前年比8.8%増の607GBとなった。2016年以降、2024年まで連続して前年に比べて拡大してきた(2014年以前の数値は不明)。2016年の平均記憶容量は224.2GBだったので、8年で2.7倍に増加したことになる。

 GB当たりの単価は2024年に前年比3.4%増の0.061ドルとなった。GB当たりの単価が前年比で増加したのは、2016年以降で初めてのことだ。ASPが上昇したことと併せ、需給バランスが供給不足に強く傾いていたことがうかがえる。

 2025年以降のPC向けSSDは、出荷台数はほとんど伸びず、出荷金額は少しずつ減少していくと予測する。2029年の予測値は台数が2億2,800万台、金額が66億1,200万ドルである。2024年に比べるとそれぞれ4.1%増、18.4%減となる。

 ドライブ1台当たりの平均記憶容量は2025年以降も増加するので、総出荷記憶容量も拡大していく。2029年の予測値は平均記憶容量が840GB、総出荷容量が1921.52EBである。2024年に比べるとそれぞれ38.4%増、44.0%増となる。

 GB当たりの単価は、2025年以降は従来と同様の漸減傾向に戻る。2029年の予測値は0.035ドルである。2024年に比べると42.6%減となる。

2025年以降の外付けSSDは台数と金額が緩やかに成長

 2024年に外付け向けSSDの出荷台数は前述のように、前年比3.5%減の4,660万台となった。4年連続のマイナス成長である。一方で出荷金額は前年比7.2%増の23億3,000万ドルとなり、2023年までの3年連続マイナス成長から、底を打った。ASPは前年比11.1%増の50ドルである。

 2024年の総出荷記憶容量は前年比4.2%減の38.03EB、ドライブ1台当たりの平均記憶容量は同0.7%減の781.7GBとなった。GB当たりの単価は、前年比12.3%増の0.064ドルである。PC向けSSDと同様に、2016年以降ではGB単価が初めて値上がりした。

 2025年以降の外付けSSD市場は、出荷台数と出荷金額とも緩やかに増加していくと予測する。2029年の予測値は出荷台数が6,300万台、出荷金額が26億1450万ドルである。2024年と比べ、台数は35.2%増、金額は12.2%増となる。

ビデオゲーム向けSSD市場は2020年代後半に緩やかに縮小

 ビデオゲーム機器(ゲームコンソール)向けSSDは、2020年にHDDを置き換える形で急速に市場が立ち上がった。2023年までは市場規模が台数と金額ともに拡大を続けてきた。しかし2024年はいずれも前年比でマイナスとなった。出荷台数は前年比28.6%減の2,320万台、出荷金額は同7.9%減の17億4,000万ドルである。ASPは前年比10.3%増の75.00ドルとなった。

 2024年の総出荷記憶容量は前年比13.1%減の24.17EB、ドライブ1台当たりの平均記憶容量は同21.7%増の1,041.9GBである。GBあたりの単価は前年比8.9%減の0.072ドルとなった。

 2025年以降のビデオゲーム機器向けSSD市場は、出荷台数と出荷金額とも緩やかに縮小していくと予測する。2029年の予測値は出荷台数が1,850万台、出荷金額が14億2,450万ドルである。2024年と比べ、台数は20.2%減、金額は18.1%減となる。

記憶容量当たりの単価が最も高い、産業その他向けSSD

 2024年の産業その他向けSSDは、出荷台数と出荷金額ともに前年を上回った。すでに述べたように、出荷台数は前年比14.8%増の930万台である。出荷金額は同16.7%増の11億7,180万ドルとなった。台数と同様に、金額も2016年以降は2024年まで連続して前年と比べて増加してきた(2014年以前の数値は不明)。9年連続で市場が拡大し続けてきたことになる。

 ドライブ1台当たりの平均価格(ASP)は前年比1.6%増の126.00ドルとなった。ASPは2017年の132.50ドルをピークに、わずかながらも減少傾向にある。

 2024年の総出荷記憶容量は前年比39.8%増の1.16EBと大幅に伸びた。総出荷記憶容量は2016年以降、2024年まで継続して拡大してきた。ドライブ1台当たりの平均記憶容量は前年比21.6%増の124.6GBである。平均記憶容量も2016年以降、2024年まで9年連続で増加してきた。

 GBあたりの単価は前年比16.4%減の1.011ドルとなった。「産業その他」向けSSDの単価は製品分野別では最も高い。単価が高いとされているエンタープライズ向けSSDの8倍を超える。

 2025年以降の「産業その他」向けSSD市場は、出荷台数と出荷金額ともにほとんど伸びない。2029年の予測値は台数が1,000万台、金額が12億2,000万ドルである。2024年と比べ、台数は7.5%増、金額は4.1%増となる。



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