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概要
Broadcom(ブロードコム)は、2025年第2四半期に過去最高の業績を記録しましたが、市場の期待には応えられず株価は下落しました。同社はAIとクラウド需要の拡大を追い風に、売上・利益ともに前年同期比で大幅な伸びを見せましたが、将来の見通しには慎重な姿勢が求められています。
要約
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業績概況
- Q2売上高:150億ドル(前年同期比 +20%)、市場予想を上回る。
- GAAPベースの純利益:49億6,500万ドル(+134%)、非GAAPベースでも77億8,700万ドル(+44%)。
- 高収益率の維持を示した。
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成長要因
- AI半導体関連の売上が46%増加。
- VMwareの統合によるソフトウェア部門の収益貢献が顕著。
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市場の期待とのギャップ
- 第3四半期の売上見通し158億ドルは、アナリストの予想(160〜167億ドル)には届かず。
- AI需要が過熱の一途からやや冷静に。
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株主還元
- Q2での株主還元額は70億ドル。
- 配当と自社株買いの両方で積極的な還元を実施。
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今後の見通し
- AI需要の持続性、VMwareの統合効果、株主還元の継続性が注目点。
- 外部環境の不確実性(地政学リスクや金利動向)に注意。
- 総括
- BroadcomはAI半導体とソフトウェアの2本柱で成長。
- 高収益体質と積極的な株主還元により、安定した事業基盤を維持。
AIとクラウド需要の拡大を背景に、米半導体大手Broadcom(ブロードコム)は2025年度第2四半期も過去最高の業績を記録しました。売上・利益ともに市場予想を上回り、VMware買収によるソフトウェア分野の収益貢献も本格化しています。
しかし、市場の一部では過熱するAI投資ブームへの期待が先行しすぎていた側面も浮かび上がりました。Broadcomが示した第3四半期(5〜8月期)の売上見通しは158億ドル。コンセンサス(157億ドル)をわずかに上回ったものの、一部アナリストが予測していた160億〜167億ドル台には届かず、AI需要の伸びがやや冷静な水準で推移していることを示唆しています。
Broadcom(Trading View)
AppleやGoogleの親会社Alphabetなど、大手テック企業に半導体を供給するBroadcomは、AI半導体とインフラソフトウェアの両輪で事業を拡大中です。本記事では、同社の最新決算のポイントを整理し、注目すべき成長分野と今後の展望を読み解きます。
1. 業績ハイライト
Broadcomの2025年度第2四半期(2025年2月〜5月初旬)の決算は、売上・利益ともに前年同期比で大幅な伸びを見せ、同社のAIおよびソフトウェア分野の強さを裏付ける内容となりました。
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売上高:150億ドル(前年同期比 +20%)市場予想超⭕️
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調整後EBITDA:100億ドル(+35%)
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GAAPベース純利益:49億6,500万ドル(+134%)
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非GAAPベース純利益:77億8,700万ドル(+44%)
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1株当たり利益(EPS)市場予想超⭕️ - GAAPベース:1.03ドル(前年0.44ドル)
- 非GAAPベース:1.58ドル(前年1.10ドル)
キャッシュフロー - 営業キャッシュフロー:65億5,500万ドル(+43%)
- フリーキャッシュフロー:64億1,100万ドル(+44%)
特に注目すべきは、調整後EBITDAマージンが67%に達した点で、Broadcomのビジネスモデルの強さと高収益体質を象徴しています。また、GAAPベースでも純利益が前年の2倍以上となるなど、収益性の大幅な改善が確認されました。
CEOのホック・タン氏は、「AIネットワーク需要の急拡大とVMwareの統合効果が売上の牽引役になった」と述べており、今後もこれらの分野が成長ドライバーであり続ける見通しです。
1-1. 売上高
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売上高:150億ドル(前年同期:124億8,700万ドル +20%)市場予想超⭕️
Broadcom売上高
売上成長の主な要因は以下の2つです。
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AI半導体関連売上が前年比46%増の44億ドル超
AI向けネットワーキングやカスタムチップの需要が拡大。クラウド事業者によるインフラ投資が追い風。 -
インフラソフトウェアの売上が25%増加し65.9億ドル
VMware買収による統合効果が顕在化。企業向けIT・仮想化・クラウドソリューションへの需要が安定的。
ブロードコムは人工知能(AI)関連支出の急増の恩恵を受けており、データセンター企業は、AIコンピューティングのワークロード処理に同社のカスタムチップとネットワークコンポーネントを活用している。
1-2. 純利益
Broadcomの2025年度第2四半期における純利益は、前年同期比で大きく伸び、収益性の劇的な改善が確認されました。
◆ GAAPベースの純利益
・49億6,500万ドル(前年同期:21億2,100万ドル +134%)
Broadcom純利益
営業利益の拡大に加え、金利負担の減少やコスト最適化が貢献。
特に注目すべきは、VMwareの買収関連費用や統合初期費用が一巡し、営業利益がダイレクトに純利益へ反映される構造になったことです。
◆ 非GAAPベースの純利益
・77億8,700万ドル(前年同期:53億9,400万ドル +44%)
株式報酬費用や買収関連コストなど一時的要因を除外した「実質的な稼ぐ力」が反映。
非GAAPベースでは、ソフトウェア部門の利益率改善もあり、営業面での効率化が着実に進んでいることがうかがえます。
◆ EPS(1株あたり利益)の推移・GAAP EPS:1.03ドル(前年0.44ドル)
・非GAAP EPS:1.58ドル(前年1.10ドル)市場予想越⭕️
Broadcom EPS
このようにBroadcomは、増収に加えコストコントロールや統合効果による利益率改善によって、純利益・EPSともに力強い成長を実現しました。特に、AIとソフトウェアの両分野が利益成長の原動力となっている点は、今後の持続的成長への布石といえるでしょう。
2. セグメント別動向
Broadcomの2025年第2四半期では、インフラソフトウェア部門の成長率が半導体部門を上回る結果となり、同社の“ハイブリッド戦略”が確かな手応えを示しました。
2-1. 半導体ソリューション事業
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売上高:84億800万ドル(前年同期:72億200万ドル +17%)
主なけん引役はAI関連製品。AI向けネットワーキングやアクセラレータの需要が引き続き旺盛。AI半導体の売上は前年同期比46%増の44億ドル超となり、セグメント内での存在感を一段と強めています。
2-2. インフラソフトウェア事業
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売上高:65億9,600万ドル(前年同期:52億8,500万ドル +25%)
VMwareの統合効果がフルに反映された初の四半期として、同事業の収益貢献が明確に表れました。仮想化、クラウドインフラ、セキュリティ分野での堅調な需要が収益を下支え。高マージン体質が同社の利益成長にも大きく貢献しています。
両セグメントともに好調ではあるものの、ソフトウェア事業の伸びがより高い成長率を記録しており、Broadcomの企業構造が“チップ依存型”から“ソフトとの両輪”へと進化していることが明らかになりました。これは利益の安定性向上という観点でも、投資家にとって重要な意味を持つトレンドです。
3. 株主還元と財務:豊富なキャッシュで積極的に還元
Broadcomは、安定したキャッシュ創出力を背景に、株主還元を積極的に実施しています。2025年第2四半期は、配当と自社株買いを合わせて70億ドルを株主に還元するなど、その姿勢を明確に示しました。
3-1. 配当
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四半期配当額:1株あたり0.59ドル
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総支払額:27億8,500万ドル
業績連動ではなく、持続的な安定配当を維持。2024年末の増配以降、高水準を継続中。
3-2. 自社株買い
自社株買い総額:42億1,600万ドル
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通常の買い戻し:24億5,000万ドル(約1,600万株)
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株式報酬の税金相殺目的の買い戻し:17億6,600万ドル(約930万株)
合計で約2,530万株を削減し、1株あたり価値の向上と希薄化の抑制に貢献。
3-3. キャッシュポジションと財務体質
期末の現金・現金同等物:94億7,200万ドル
フリーキャッシュフロー:64億1,100万ドル(売上の約43%)
設備投資はわずか1億4,400万ドルと抑制的で、効率的な資本運用を実現。
これらの数字からも明らかなように、Broadcomは高収益・高キャッシュ創出企業としての地位を強化しており、配当と自社株買いを通じて、株主への還元をバランスよく行っています。こうした還元姿勢は、長期投資家にとって非常に魅力的な要素です。
4. 今後の見通しと注目点
Broadcomは2025年度第3四半期(〜8月3日まで)の業績見通しとして、引き続き堅調な成長を見込んでいます。ただし、市場の一部で期待が先行していたAI関連需要については、やや冷静な見通しも示されており、投資家心理とのギャップにも注目が集まっています。
◆ 会社側のガイダンス(Q3見通し)
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売上高見通し:158億ドル(前年同期比+21%)
コンセンサス予想の157億ドルは上回るが、一部アナリストの強気予想(160〜167億ドル)には届かず -
調整後EBITDA:売上高の66%以上を見込む
高収益体質は継続 -
AI半導体の売上:Q3に51億ドルを超える見通し
10四半期連続の増収を達成する見込みで、成長の持続性は依然として高い
◆ 注目ポイント
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AI需要の継続性:クラウド事業者によるAI関連インフラ投資は堅調ながら、爆発的な成長ペースからは一服感も。Broadcomは持続的な成長を強調。
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VMwareの統合効果:ソフトウェア部門のマージン改善と、クロスセル(半導体×ソフト)の可能性が今後の成長を支える重要要素に。
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株主還元の継続性:豊富なキャッシュと健全なバランスシートを背景に、配当・自社株買いを引き続き積極的に行うと予想される。
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外部環境の不確実性:地政学リスクや金利動向、中国を含むサプライチェーンの制約など、慎重なモニタリングが必要。
BroadcomはAIとソフトウェアという強力な成長エンジンを持ちながらも、市場の期待と現実のバランスを丁寧に取る姿勢を見せています。今後も「着実な成長」と「利益重視の運営方針」がどこまで市場の支持を得られるかが、大きな焦点となるでしょう。
5. まとめ:AIとソフトの両輪で広がる成長余地
2025年第2四半期のBroadcomは、AI半導体とインフラソフトウェアという2本柱が力強く成長し、売上・利益ともに過去最高を更新しました。特にVMwareの本格的な収益貢献とAI関連チップの需要拡大が、同社の成長エンジンとして明確に機能しています。
一方で、第3四半期の売上見通しは堅調ながらも、一部市場の過熱した期待には届かず、AIブームの熱狂に対して一定の冷静さが必要であることも示唆されました。
それでも、Broadcomの高収益体質、豊富なキャッシュフロー、積極的な株主還元方針は揺らいでおらず、中長期的には非常に強固な事業基盤を維持しています。今後も、ハード(半導体)とソフト(VMware)のシナジーを活かし、安定成長と利益拡大の両立を図る企業モデルとして、その動向は引き続き注目されるでしょう。
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