

タイトルからもわかるように、『「運のいい人」の科学 強運をつかむ最高の習慣』(ニック・トレントン著、桜田直美 訳、SBクリエイティブ)は“運”についての本。つまり、「運がいいとはどういうことか」「悪運を避けるにはどうすればいいのか」などに焦点が当てられているのです。
端的にいえば、テーマは「運のいい人になるにはどうすればいいのか」ということになるのでしょう。
私たちが考える「運」とは、めったに手に入らないものであり、予測できないものです。でも、運にはある一定のパターンがあり、それがいわゆる「成功」と呼ばれる状況で、決まった役割を果たしているとしたら?
私たちは、才能、努力、粘り強さといった個人の資質が成功のカギになると信じています。たしかにある程度までそれは正しいでしょう。とはいえ、成功にはつねに、個人の資質では説明できないような要素も関係しています。(「はじめに」より)
大切なのは「努力か、運か」ということではなく、どちらも少しずつ必要であり、両者がどんな割合になるかは成功の規模で決まるということ。運と努力にはそれぞれ役割があり、それぞれが深い協力関係にあるわけです。
努力によって人生における成功の方向性は決まるが、その出発点(つまり運)は人によって違う、というように考えてもいいでしょう。不運を乗り越えることは可能であり、その反対に、せっかくの運を生かせないということもまたありえるのです。(「はじめに」より)
運をコントロールすることはできないけれど、運を理解し、活用し、そして運に恵まれたときにそれを最適化することならできるはず。つまり幸運とは、準備ができている人のところに訪れるものだということです。
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第3章「『運のいい人』は何を考えているのか」に注目してみたいと思います。心理学者のリチャード・ワイズマンによれば、運のいい人には3つの性質があるというのです。
外交的であること
心理学には、性格の特徴を大きく5つに分ける「ビッグファイブ」という考え方があるのだそうです。
ビッグファイブによると、外交的な人には、自己主張をはっきりする、活動的、おしゃべりという特徴があるのだとか。そして外交的な人は、社交の場面が好きで、新しい人や新しい状況に興味がある存在でもあるようです。
それは、外側の世界と熱心に関わろうとするからなのでしょう。外交的な人は、誰とでも気軽に会話ができるため、興味深い人と出会うチャンスにも恵まれるわけです。
本人は偶然の出会いだと思っているかもしれないけれど、いろいろな人と話すぶん、自分にとって“正しい人”と話すチャンスにも恵まれるということ。
外交的な人は、他人と一緒にいることでエネルギーがわいてきます。おそらくどんなパーティでも中心的な存在になっているでしょう。
元気でよくしゃべるので、周りから容易に気づいてもらえる。だからこそ、彼らの周りでは幸運な出来事がよく起こるのです。
運を定量的にとらえ、露出と経験を重ねることで増加すると考えるなら、外交的な人は必然的に運がいいということになります。(90ページより)
なぜなら、そういう人は積極的に露出を増やし、さまざまな状況に自分の身を置こうとするから。露出を増やせば、(もちろんイヤな目に遭うこともあるものの)チャンスに恵まれる回数も増えるということです。(89ページより)
オープンであること
考え方が柔軟な人は、全体的にリラックスしていて、新しい状況を積極的に経験しようという気持ちを持っているもの。
新たな可能性や解決策を拒否するのではなく、むしろ受け入れようとするわけです。したがってリスク回避の傾向が低く、恐怖や不安を基準にものごとを決めることはないようです。
オープンな精神の人は、チャンスがドアをノックすると、ドアを開けて新しい挑戦がどんなものか調べようとします。つまり、ドアを開けるだけでなく、目の前の道を歩いてみる。そして実際にしばらく進んでから、元来た道を戻りたいかどうか考えるのです。
視野の狭い人、思考が凝り固まっている人であれば、こういったことは一切しないでしょう。話は単純で、自分に与えられるチャンスが増えるほど、運に恵まれる確率も上がるのです。(92ページより)
オープンな精神を持っている人とは、新しい提案や誘いに対して「ノー」といわない人のことを指すのだといいます。ちなみにそれは、他人から提案される場合でも、自分の提案でも同じだそうです。
またオープンな人は、もっとも幸運な状況に遭遇する確率が高くなるのだといいます。チャンスを逃さないので、最高の仕事を手に入れられるということ。
また不思議なことに、おもしろい偶然やチャンスによく遭遇し、話の種が尽きることもないようです。(92ページより)
神経症的な傾向が低いこと
運がいい人の性質で最後に登場するのが、この「神経症的な傾向が低い」です。
神経症的な傾向とは、文字通り神経症のような症状が出やすいことです。代表的な症状は、不安、緊張、嫉妬などでしょう。
こういう人は、いつもピリピリしていて、警戒心が強い。ワイズマンによると、こういった神経症的な傾向の低い人ほど、幸運に恵まれる傾向が高くなります。(94ページより)
神経症的な傾向が低い人は、そうでない人よりも精神が安定していて、リラックスしているもの。そういうタイプは不安に襲われることなく、まわりの状況をよく理解できるわけです
また、ビクビクしながら脅威になるものを探すのではなく、ニュートラルなできごとであれば好意的に解釈することが多いといいます。
精神がリラックスしている人は、チャンスだけでなく、幸せに対してもオープンだそう。逆に、いつも不安でピリピリしている人は、なにかいわれるたび必要以上に気に病み、警戒ばかりしているものだと著者は指摘しています。
それは、「期待」の問題でもあるようです。つまり神経症的な人は悪いことが起こるのを無意識のうちに期待し、リラックスしている人は人生に対して楽観的で、なにごとも好奇心を持って受け入れるということです。(94ページより)
努力は、自分でコントロールすることが可能だと著者は主張しています。とくに重要な努力とは、「運に触れる表面」を拡大することなのだとも。そうすれば、なんらかの幸運が訪れたときにそれを確実につかめるからです。著者の考え方を活用し、運を自分のものにするべきかもしれません。
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Source: SBクリエイティブ
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