🧠 あらすじと概要:
映画「金子差入店」あらすじと要約
あらすじ:
「金子差入店」は、金子真司が妻の美和子、息子の和真とともに、刑務所や拘置所への差入れを代行する「差入屋」として生計を立てる一家の物語です。ある日、和真の幼馴染の花梨が無関係な男に殺害され、家族はその悲劇から立ち直ることができません。さらに、犯人の母親から差入の依頼が舞い込み、金子は複雑な感情に揺れ動きます。そして、別の事件として、女子高生が自分の母を殺した男との面会を求めて現れ、金子はさらに葛藤を深めていきます。物語は、家族の絆が揺らぐ中で、差入屋という職業の困難さと意義を描いて展開します。
記事要約:
映画「金子差入店」は、知られざる差入屋という職業をテーマにしたヒューマンサスペンスです。主演の丸山隆平が表現する主人公の葛藤や周囲の反応、また家族との関係性が焦点となります。記事では、映画の評価は賛否が分かれ、特にキャラクター描写に関しては過剰であるとの指摘がありました。しかし、差入屋という職業の重要性が描かれ、映画自体には見応えがあると評価されています。主演や脇役の演技力も称賛されており、続編としてテレビドラマ化を希望する声も多く、さらなる発展の可能性が示唆されています。

SUPER EIGHTの丸山隆平が「泥棒役者」以来8年ぶりに映画主演を務め、刑務所や拘置所への差し入れを代行する「差入屋」を家族で営む一家が、ある事件をきっかけにその絆が揺らいでいく姿を描いたヒューマンサスペンス「金子差入店」を徹底批評!
差入屋という世に知られていない貴重な職業にフォーカスを当てた意欲作。SUPER EIGHTのまるが等身大の飾らない姿で演じた主人公に好感。普通に良い映画だが、良い映画にするぞ!という作り手の意気込みが若干ノイズになっている側面も…。
鑑賞メモ
タイトル
金子差入店(125分)鑑賞日 5月21日(水)18:25映画館 あべのアポロシネマ(天王寺)鑑賞料金 1,300円(平日会員価格)事前準備 準備なし体調
すこぶる良し
点数(100点満点)& X短評
60点
あらすじ
金子真司は妻の美和子と差入店を営んでいる。伯父の星田から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人の小島の母親から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は差入屋としての仕事を淡々とこなそうとするが、常軌を逸した小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。さらに、小島の母親から息子には話し相手が必要だと思うと再度の差入を頼まれた金子は、小島と話せば話すほど「なぜ、何のために殺したのか」という疑問と怒りに身を焼かれる。
そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う金子。彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を強く求めていた。2つの事件と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、家族の絆を揺るがしていく──。
「金子差入店」公式HPより引用
ネタバレあり感想&考察
差入店という重要かつ貴重な職業
その価値を知れたのは○(まる)
面白いっちゃ面白いが…という感じ。
結構絶賛評も見受けられるが、個人的にはそこまでではなかったです。
差入店という舞台設定が面白いので、ほぼそれだけで楽しめる作りにはなっている。マジメな話をマジメに撮っているため、悪く言う気は起きにくい。作劇のお手本のような映画だと思う。原作ありだと思っていたが、完全オリジナル脚本とのこと。なおさら素晴らしい取組みだと言わざるを得ない。
SUPER EIGHTの丸山くんの演技は良かったものの、標準語との食い合わせに疑問は感じてしまった。これは若干ウソっぽい標準語セリフのせいもあるが、方言指導はもうちょっと強めにやった方がよかった気がする。丸山くんの起用についてはほぼ宛書だと思うし、服役中の坊主姿がすごく似合うという意味でも適役だった。そこだけにJの者に甘い自分でも惜しいなぁ、となってしまった。早撮りの影響もあると思うし、あまり言うもんじゃないとも思っている。
ただ本作のメインテーマである、差入店という職業とその仕事をしていくことの葛藤はしっかり描けている。それだけで賞賛に値するし、本作が作られた価値がある。刑務所・拘置所に収容された人への差入れには厳格なルールがあるため、専門的な知識を要する。また、平日の決められた時間帯かつこのような施設は郊外にあるケースが多い中、差入には面会が必要になるため、代行業も成り立つ。受刑者が承認すれば、面会だけでなく、手紙の代読も行える。そのような需要から拘置所や刑務所の周辺には差入屋という業態が存在しているようだ。本作で初めて認識した。
真司自体がもともと3年服役した過去があり、その妻役の真木よう子が面会のために仕事を断り、遠方まで足を運び、面会したものの…という序盤で面会自体のハードルの高さをサクッと説明してしまうのは非常に面白かった。かなり手際の良い説明シーン。そこから数年経って差入店の店主として働く真司にジャンプカットし、メインストーリーが始まる。
①差入屋という職業に向けられる世間からの偏見と当人家族の葛藤②息子の幼馴染の女児を殺害した犯人(北村匠海)に差入する羽目に
③毎日、ある服役囚に面会するために現れる女子高生
主にこの3つの要素で話が進んでいく。監督が強く描きたかったのは一つめの差入屋という職業の意義と葛藤である。その職域を越えて、③の女子高生のためにリスクを取ってでも果たしたいことが美しいポイントであったし、根性ある妻の真木よう子に「スゴイ職業だ」とハッキリ言わせているのも好感。
ただ②に関してはやりすぎ感は否めない。お話として、世間からの冷たい風当たりを起こすために必要以上に大きい事件にしてしまった気がする。傷害や近くのスーパーで起きた強盗犯とかの方がまた出所してくる可能性がある、という差入屋としてのリアルなリスクを演出した方がよかったのでは?と思ってしまった。
この②と③の犯人はどう考えても重罪すぎて、もう出所することはなさそうだ。そこが緊張感を弱めている節があって、2つ並行させるなら、これが最適解とは思えない。せめて1つこの先のリスクが感じられやすい身近な囚人の話を設定した方がさらに物語の深みを増せたと思う。
本作はもっと差入屋という職業にフォーカスを当てて、別方面からのリスクや意義性を描くのもよかったのでは?という疑念が拭えない。もともと真司が面会代行した服役囚が出所して、感謝を伝えに来る者もいれば、逆恨みしてくる者もいるというような描き分けで差入屋という職業の難しさを取り扱ってもよかった気がする。この2つの事件だけでも、捌くべき要素が多いし、差入屋の存在以外は深掘りが足りない。
面識のある息子の幼馴染を殺害した、ほぼ死刑確定の服役囚との面会代行という突飛な設定などなくても、別の形で差入屋の日常を緊張感を持って描くことはできたはずだ。ただこれはあくまで映画の場合である。
個人的にはこの差入屋という存在を活かして、30分の短編を重罪から軽犯罪までいろいろなパターンで観てみたかった気持ちが強い。そうすれば、リスクや難しさだけでなく、ほっこりする話や人情話をたくさん生み出せるフォーマットなだけに、テレビドラマ向きだと感じた。そういう意味で「こっちの方がいいんじゃないかなぁ」という見方をしてしまったきらいがある。映画として悪いのではなく、別の活かし方や可能性に目が向いてしまった。
物語展開と人員配置が記号的
全体感は薄味なのに演出は濃いめ
全体感が薄味というのは、題材に対して抑制の効いた着地だからだろう。別に悪い意味ではない。ただ、登場人物の配役と配置についてはちょっとやりすぎかなと思う味の濃さがあり、そこが薄味テイストの本作とのバランスの悪さを少しばかり感じた。
例えるなら、実は普通のしょう油より薄口しょう油の方が塩分が濃いみたいなことで、合うものを使っていておいしいのは間違いないが、塩分摂取=健康という視点になると印象がガラッと変わるみたいなイメージ。
特に、連続幼女殺人犯役の北村匠海とその母役の根岸季衣、強盗殺人犯として服役している横川役の岸谷五朗、真司の母役の名取裕子の描写は明らかにやりすぎだと感じた。前章で述べた3つの要素のうち、②の周辺にあたる北村匠海と根岸季衣らがヤバい人たちなのは当然っちゃ当然なのだが、通り一遍のヤバい人描写でうーんと思ってしまう。根岸季衣に関しては、ある実在の人物を雑になぞっている印象もあるし、最終的には「どういう心境の変化なの?」といった描写が説明なく挿し込まれ、自分にはちぐはぐに映った。
また、③にあたる服役囚を演じたのが岸谷五朗なのだが、あまりにも当人の顔に頼りまくった演技で正直笑ってしまった。「ミナミの帝王」末期の竹内力レベルの常時しかめっ面コワモテ男を岸谷五朗にやらせるのはギリギリのラインだと思う。自分はコメディ色に寄ったものと受け取ってしまった。マジメに演出したうえでマジメに演技したと信じてはいるが、さすがにこれはやりすぎ感があったし、時間が短いせいで急いていた印象もある。真司がリスクを取り、知恵を絞って女子高生との面会を実現させたシーンはグッときた。しかし、岸谷五朗の顔に頼りまくった演技は若干ノイズだった。
名取裕子も毒親として真司の母を演じたものの、これもウシジマくんとかに出てきそうな色情派のシングルマザー設定で、いかにもわかりやすい。
我々の耳目に触れにくい、かなり奥行きの深い存在である差入屋を中心にしたが故に、彼に降りかかる外圧があまりにもわかりやすく記号的であればあるほど、食合せの悪さが先行する。ここが正直、評価の分かれ目だと感じた。これが気にならなかったり、これを超える美点を選び取った鑑賞者が絶賛評になっているのだと思う。もちろん、絶賛する方々の気持ちも大いにわかるだけにむずがゆさを感じてしまって、勝手に居心地が悪くなっている。
求めるものと違った、というのは批評としてフェアさに欠けるのもわかっている。それでも、序盤が良いだけにそこからの期待値を大きく超えることがなかったかなぁ。
とはいえ、初監督かつオリジナル脚本で本作を作り上げた古川監督の手腕は確かなものであるのは間違いない。次作も期待して待ちます!
まとめ
配役と人物描写にケチはつけましたが、各キャストの演技は素晴らしかったです。あくまで演出上の問題で、キャストのみなさんは見事に要望に応えています。そこだけでも十分に映画代分は稼げていると言っていいでしょう。あまり悪く言うもんじゃありません!(白目)
真司の息子役の三浦綺羅さん、女子高生役の川口真奈さんの演技は少ないセリフでも強く印象に残りました。特に川口さんは良い顔してると思います。
もちろん、真木よう子も最高!妻ってもんは夫を支えるもんだ、を疑問を感じさずに演技で魅せたのはお見事。寺尾聡もただそこにいるだけで正!
8:2のアリ論はまるの先輩である堂本剛主演の名作、#33「まる」を思い起こさせるシークエンスでめっちゃエモかったです。やっぱJはいいね!
見応えは十分ある映画なので、普通におススメの映画です。できたら、連続ドラマで続きが観たい。出所してから差入屋として過ごした本作までの約7年ほどで、ドラマに必要な分には十分なぐらいエピソードが作れたはずですし。それぐらい、可能性のある題材だと思いました。着想の時点で勝ち!
最後に
ただいま絶賛実家じまい中。出土品がいろいろ出てきました。
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ご拝読、ありがとうございました。
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