🧠 あらすじと概要:
あらすじ
映画『ブルーピリオド』は、高校生の矢口八虎が主人公の物語です。彼は成績優秀で学校の人気者ですが、充実感を感じられずにいます。美術が苦手な八虎は「私の好きな風景」という課題で、自分の心の中の景色を「明け方の青い渋谷」として描くことを決心します。この絵を通じて彼は絵画に興味を抱き、自らのアイデンティティを探る旅に出ます。八虎は、国内の最難関である東京芸術大学への受験を決意し、努力を重ねながらも、自分自身を見つけ出す過程を描いています。
記事の要約
この記事は、映画『ブルーピリオド』の批評であり、監督の手腕が如何にして絵を描くことの抽象的な意味を具体的に表現したかを探っています。八虎の成長を通じて生きることの意味や、努力の重要性を描いた本作は、実写化の成功例とされています。作品の核心となる葛藤や、美術が彼の人生に与える影響がリアルに映し出されており、スタッフ全体の一体感が組み込まれています。特に、映像表現や音楽が作品の雰囲気を高め、優れた演出により、観る者に深い感動を与える内容となっています。総じて、監督の成長を描くという主題が一貫しており、その結果として高評価が得られています。
物語
高校生の矢口八虎は成績優秀で周囲からの人望も厚いが、空気を読んで生きる毎日に物足りなさを感じていた。苦手な美術の授業で「私の好きな風景」という課題を出された彼は、悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみる。絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたような気がした八虎は、美術に興味を抱くようになり、またたく間にのめりこんでいく。そして、国内最難関の美術大学への受験を決意するが……。
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ストーリーティング
東京芸術大学を目指し奮闘する若者を通して、絵を描くこととは、生きることとは、努力することとはという普遍的なテーマを具体的な出来事と描写で徹底的なリアリティを持って描く。実写化のお手本のような映画である。満たされず同じような毎日を送っていた主人公が、絵を描くことに目覚め、最難関である東京芸術大学を目指す物語。
主人公が変化する過程やそこで出会う人々など描かれるすべてがリアルだった。主人公は、勉強ができどちらかというとパリピで、友人らと群れ、渋谷で遊んでいる。しかし、満たされない思いを胸に秘めている。しかし、渋谷の朝焼けを見ると、自分の心象風景とシンクロし満たされた気持ちになる。
それの心象風景を絵に描いた途端、主人公の人生は変わり、アーティストになるという夢に導かれるのだった。
主人公は美術の授業もバカにしていたが、忘れていたタバコを美術室に取りにいく時に先輩の絵に出会う「美大は何の意味がある」と薬師丸に言って対立するが薬師丸にその言葉は「自分の言葉じゃない」と言われる。先輩と話す。そして美術の課題を書いてみる。渋谷の日の出前の一面青く染まった光景を絵に描き褒められる。
そして美大を受けることにする。デッサンを重ねる主人公。憧れの先輩や友人、ライバルとの出会いや自分にしかできない絵との向き合い方、努力の仕方を探すことで、社会から押し付けられた生き方ではなく自分自身の生き方を探っていく。
自分自身の生き方を探していくという観念的なテーマや絵を描くという抽象的とも言える事象を徹底的に具体的な出来事にし、主人公の成長を描いた。
眞栄田郷敦の最初の芝居は通常ならワンパターンになりがちだが、繊細な表情を的確に表現した。先生のキャラクターにしか見えない薬師丸ひろ子の演技がよかった。
監督とスタッフワークはいかにして実写化を成功させたか
本作は監督によってすべてコントロールされている。監督アメリカ帰りの萩原健太郎。萩原監督はこう語る「(主人公が)やりたいことに向かっていく過程における厳しさや苦悩、そして痛みもしっかりと映し出したかった」。この葛藤を軸に監督はスタッフワークを取りまとめた。監督はカラーのイメージボードを作成しスタッフにプレゼン。いかに絵を描く行為をダイナミックに動的に描くかにこだわった。
脚本の吉田玲子は同作のアニメも担当しているが、2時間にするのは至難の業だったといい、そのために主人公の変化にこだわった。絵と出会い、自分の絵を見つける苦悩を経て努力することは才能だと言う結論に達する部分に重点を置き、うまくシナリオにしたそうだ。
撮影の光岡兵庫は、「八虎を応援するような気持ちになってほしい」と語る。照明の平山達弥は「監督は誰の意見にも耳を傾けてくれ、どの部署にもリスペクトを持っている。そういう組は一つのものをみんなで作っている感がありました」と語る。
八虎の変化とリンクする美術。心の些細な変化を映像として撮ることにこだわったそうだ。美術監督はこう語る。「八虎の部屋は、美術に没頭していく中で少しずつ色が足されていき、彼自身とともに部屋も変化していきます。」
ヘアメイクは、美容師でもある古久保英人。登場人物たちの髪型がコスプレにならないために主人公が八虎がなぜ金髪にしているのか、その理由を考えたそうだ。八虎は、お金がないので自分で染めていて根本が黒いなどリアリティをとことん追求した。
音楽は小島裕規“Yaffle”。電子音楽で主人公の内面や成長の時間軸を描き、作品の世界観をより一層色づけした。
総括
本作は、監督が「主人公の成長を表現」する一点集中でシナリオとスタッフワークをまとめあげ、その軸から、スタッフ十人十色の芝居の解釈や感性での味付けがされており、それらがしっかりと整理されていることで、かなり、監督力によって実写化としても一本の映画としても名作となっている。
萩原監督の今後に期待である。
演出☆☆☆☆☆映像☆☆☆☆物語☆☆☆☆☆テーマ☆☆☆☆☆
90点
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