日曜日, 6月 8, 2025
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【映画感想文】苦い銭/王兵監督N4BE

🧠 あらすじと概要:

映画『苦い銭』あらすじと要約

『苦い銭』は、浙江省の繊維工場で過酷な労働環境の中で生きる地方出稼ぎ労働者たちの日常を描いたドキュメンタリー映画です。監督のロウ・イエは、社会問題としてのテーマを扱いながらも、登場人物たちの実生活や感情に焦点を当て、そのリアリティを浮き彫りにしています。

物語は、雲南省から出稼ぎに来た女性が年齢を偽るエピソードから始まり、労働の厳しさや家庭内の暴力、失業の危機など、労働者たちが直面する問題が次々と描かれます。夫婦の喧嘩や仕事に対する不満が描かれ、特に夫の暴力の背景には彼の孤独が見え隠れしています。彼らは低賃金で長時間労働を強いられ、賃金の少なさや労働環境についての愚痴をこぼしながら、無気力な日常を過ごしています。

映画は、労働者たちの内面から社会の不平等な構造を問いかけ、物質的な観点から人間の感情や行動、価値観を描き出します。彼らの夢や希望は語られることなく、日々の生活や労働に明け暮れ、マルチ商法の誘惑にも屈しそうな姿が映し出されています。

【映画感想文】苦い銭/王兵監督N4BE

『苦い銭』は、浙江省の繊維工場に地方から出稼ぎにやって来た労働者の生活や日常を描いたドキュメンタリー映画だ。社会問題として扱われがちなテーマも、ロウ・イエ監督の目を通すと、その背後にある人々の営みが鮮明に伝わってくる。時にはしょうもない、彼らの滑稽な姿も映し出されるところがリアルだ。

政治的なメッセージやイデオロギーは映画の中ではされず、淡々と登場人物たちが映し出される。

映画は、雲南省の田舎から年を誤魔化して出稼ぎにやってくる女の子のエピソードから始まる。明らかに違法労働なのに、それでも身分証は必要らしい。でもなぜか、彼女の身分証は実年齢より若く誤記されていた。修正しに行くのにも時間がかかる。なぜこんなところで不運に見舞われてしまうのか。どうせ間違えるなら、年上に間違えてくれたら良かったのに。

夫婦喧嘩が耐えず、暴君と化す夫。口より手が先に出て、暴力夫は「出て行け」「もう離婚だ」と言う割に、なかなか理由を言わない。やっと告げた理由は、喧嘩の理由は家事をしても妻に認められないことのようだ。喧嘩の派手さの割には小さい理由だけど、彼なりに深い孤独を感じているようだ。

仕事が遅いから解雇されてしまう男性。

自分の給料はこんなもんでは納得いかないと酒におぼれて会社を辞めると啖呵を切る男性。そんな彼に、淡々と、「塩は塩の味。仕事はどこも一緒よ」とだけ言う女性労働者。

休日はとにかくやることがない。「寝るのはタダ」だから寝るしかない。携帯のパケット数はとうに使い切っている。無気力な時間だけが過ぎる。

繊維工場の労働者たちは一元単位で生活が翻弄される。そんな彼らの隣にはマルチ商法の影がちらつく。詐欺だ、儲からない、わかっていてもマルチ商法の説明会に足を運んでしまう。何かにすがりたいのだろう。

やってもやっても仕事は終わらない、だけど給料は上がらない。一元単位の賃金を何時間も労働して稼ぐ、それが彼らの世界だ。

『苦い銭』は、唯物論的世界観を貫く映画とも言える。人間の感情や行動、価値観までもが労働、賃金、環境によって規定されているという現実。誰かの夢などは一切語られることなく、話題のタネと言えば低賃金の長時間労働への愚痴、DV夫への愚痴、マルチ商法の話。

ワン・ビン監督はこうした人間模様を通して、彼らの内面からこの社会の不平等な構造を問うている。



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