🧠 あらすじと概要:
映画『室町無頼』のあらすじと要約
あらすじ
1461年、応仁の乱前夜の京都。飢饉と疫病が蔓延し、民衆は苦しみながらも、権力者たちは享楽の限りを尽くしていた。主人公・蓮田兵衛は、自身の腕と才覚でこの混沌を生き抜く自由人であり、同時に倒幕と世直しを画策する無頼漢である。彼は、強大な権力に立ち向かうため、個性豊かなアウトローたちを集め、決死の修行を終えた腕利きの才蔵と共に、京の悲惨な状況を変えるための戦いに挑む。
記事の要約
本作は、時代劇の枠を超えたエンターテインメントとして、多くの要素が融合している。映像や音楽、アクション演出は新たな感覚を提供し、現代の視聴者にもアプローチできる内容になっている。中世の闇を描く中で、蓮田兵衛というキャラクターの孤高の生き方や社会背景に対する鋭い視点が展開され、物語は個人の物語から歴史的な転換点へと広がる。全体として、歴史への理解を深めつつも、感情移入できる普遍的な人間ドラマが描かれており、観客に新たな視点を提供する意欲的な作品とされている。
現代の北海道のスター、おっきくなったねえ
ここのところ、TVやWEBで頻繁にCMを見かけたことで認知した作品。私は『水曜どうでしょう』が大好きだが、邦画にあまり興味を持てないことから俳優・大泉洋に触れる機会はあまりなかった。しかし、ギリ昭和生まれの私は幼少期は祖父の影響で時代劇を頻繁に見ていた。
『座頭市』の勝新太郎に憧れて「手を使わずに耳を動かす」という特技を身に着けるほどにはのめりこんでいた。
かっこよすぎ
そんな私がここ最近、頻繁に流れる【室町無頼】のCMを見たことで「時代劇か・・・それならとりあえず見てみるか」と思い立ったのが視聴のきっかけだ。
それでは早速、紹介と感想文に移ろう。
あらすじ
1461年、応仁の乱前夜の京(みやこ)。大飢饉と疫病が同時にこの国を襲った。 加茂川ベリにはたった二ヶ月で八万を超える死体が積まれ、人身売買、奴隷労働が横行する中世の暗黒時代(ダークエイジ)。しかし、時の権力者は無能で享楽の日々を過ごすばかり。貨幣経済が進み、富める者はより一層富み、かつてない格差社会となっていた。 蓮田兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人。しかし、ひそかに倒幕と世直しを画策する無頼漢。京とその周辺の悲惨な状況と窮民を見た兵衛は、立ち上がる時を狙っていた…! 一方、才蔵はすさまじい武術の才能を秘めながらも天涯孤独で夢も希望もない日々を送っていた。しかし、兵衛に見出され、鍛えられ、彼の手下となる。 やがて、決死の修行を生き延びた才蔵の武器となるのは、“六尺棒”。修行を終えた時、超人的な棒術を身につけた才蔵の前に敵は無い。 時は来た 才蔵だけでなく、抜刀(後の居合)術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘ら、個性たっぷりのアウトローたちを束ねる兵衛。ついに巨大な権力に向けて空前の大暴動を仕掛ける。行く手を阻むのは、兵衛のかつての悪友・骨皮道賢率いる幕府軍。 “髑髏の刀”を手に一党を動かす道賢を前に、兵衛は命を賭けた戦いに挑む。 この世の地獄をぶち壊せ! 京(みやこ)を覆う紅蓮の炎の中から明日をつかめ!!
出典:Filmarks
本作の感想
時代劇・・・?王道時代劇というよりかは、かなりエンタメ色を強めた小説の実写化といった印象の強い作品だ。昔ながらの時代劇を見るテンションでなく【実写版るろうに剣心】を視聴するときの気持ちだと丁度良いかもしれない。
現代の若い世代で、時代劇に触れた経験が少ない人々へ『時代劇』というジャンルに興味を持ってもらう間口のひとつとして良い作品かもしれないと感じた。
中世日本の「闇」に踏み込む勇気
本作の舞台背景は1461年の京都。足利義政の治世、応仁の乱のわずか4年前。政治の腐敗、飢饉、疫病によって、民衆の暮らしは地に堕ちていた。本作は、美術・衣装・ロケーションすべてにおいて、この「中世の混沌」を表現していた。
貧民窟の湿った空気、炊き出しの煙、剣呑な路地裏――それらが視覚だけでなく五感を通して伝わってくる。
そもそも「室町時代」とは何か?
中学の修学旅行で見た!また行きたいなあ
さて、これを読んでくださっているあなたは室町時代がどんな時代なのかご存じだろうか?簡単にではあるが説明する。
室町時代(1336〜1573年)は、およそ240年にわたって続いた日本の中世。
鎌倉幕府が滅びたのち、足利尊氏が建てた室町幕府によって幕を開けるが、その体制は最初から不安定だった。
将軍の権力は絶対ではなく、守護大名たちの力が強まるにつれ、幕府の統制力は次第に形骸化。
また、農村では一揆が頻発し、都市では商人や民衆が自らの自治を求めて立ち上がる。
まさに「下からの力」が噴出する時代だった。
加えて、応仁の乱(1467〜77年)以降は、全国が群雄割拠の戦国時代へと突入する。
つまり、室町時代とは『秩序の崩壊と、新しい価値観がせめぎ合う過渡期』だったのだ。
主人公・蓮田兵衛 ――「牢人」という孤高の生き方
主人公・蓮田兵衛(大泉洋)は、主家を失った「牢人」。だがこの時代の牢人は単なる浪人ではない。雇われない、媚びない、群れない。
己の信念のみを頼りに剣を抜く、アウトローの武士である。
彼は正義漢でもヒーローでもない。
だが、「腐った世の中に筋を通す」ためにだけ剣を振るう姿には、どこか現代的なヒーロー像と憧れが共存している。
音楽 × 映像 ――魂を揺さぶる「和」と「現代」の融合
驚くほど現代的な音楽は、ミスマッチとさえ言えるほど現代的だ。
尺八や太鼓といった和楽器に、西部劇のような音楽、なかでもエレクトロやビートが重なるトラックは、戦国サムライ映画というより、ヒップホップ映画のような疾走感すらある。が、少しやりすぎな感も否めないのは個人の好みの問題かもしれない。
アクション演出もは見応え抜群。か?
スローモーションとカットのリズムが絶妙で、ただの殺陣ではない「舞」としての美しさを表現したかったようにも感じるが、ところどころCGとワイヤーの粗が見えるのも事実だ。
それでも、まるで終盤には映像詩のような戦闘シーンもあり、観ている側の血が静かに熱くなる。
「寛正の土一揆」 ――民の怒りが歴史を動かす
物語の後半、舞台は実在の事件「寛正の土一揆」へと突入する。
高利貸しに苦しむ庶民が徳政令を求めて一斉蜂起。
これは暴力ではなく、生き延びるための最後の抵抗だ。
その渦中に巻き込まれる蓮田が、何に抗い、誰を守り、何を捨てるのか
物語は一気にスケールを増し、個人の物語から時代の転換点へと広がっていく。
エンタメ × 社会性 ――すべてが融合した作品
『室町無頼』は、アクション、音楽、演出、脚本、粗さは確かにあるものの、どれも手抜きがない。
単に「歴史に詳しい人向け」ではなく、実写版【るろうに剣心】のような普遍的な人間ドラマとして感情移入できる作りになっている。
とくに、登場人物それぞれの背景や選択にリアリティがあり、善悪を一刀両断しない描写が心に残る。
まるで群像劇を観ているような重層感もある。
が、所々に絶妙な『ダサさ』を感じてしまった。
しかし、現代の若者に時代劇への間口として受け入れてもらうための代償と言われれば妙に納得できるかもしれない。
総評
歴史劇の骨太さ × スタイリッシュな映像美 × 史実を描いたリアリティ
いま最も熱い時代劇の一本。とは言い難い。それでも、いま最も意欲的な時代劇の一本とは言える。
「時代劇だから」と敬遠している人にこそ、ぜひ観てほしい。
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