
9日の日本市場では株式が続伸し、東証株価指数(TOPIX)は11営業日連続高。トランプ米大統領が英国と貿易協定で合意したと発表し、対中関税の引き下げにも言及したことで、今後の関税交渉進展への期待からリスク選好の動きが広がっている。円相場は対ドルで一時1カ月ぶり安値を付け、安全資産の債券は下落している。
日経平均株価は3月28日以来となる3万7000円台を回復した。トランプ大統領が2日に上乗せ関税を発表して以降、米国が貿易協定で合意するのは英国が初めて。トランプ氏は今週末に行われる中国との貿易交渉についても「中身のあるものになると思う」と述べ、関税率引き下げの可能性について「あり得る」と発言した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、米英合意と米中協議への期待が市場心理の改善につながっていると指摘。米英の合意内容は日本などとの交渉を占う上でも好材料だとし、「仮に英国以外でも品目別関税引き下げの機運が高まればポジティブサプライズだ」と言う。
赤沢亮正経済再生担当相は9日、日米関税交渉では可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指すとの認識で一致していると閣議後の記者会見で述べた。自動車、鉄鋼・アルミも含めた一連の関税措置に関し、日本として「見直しを求めるという立場に変わりはない」とも重ねて表明した。
国内株式・為替・債券相場の動き-午後2時2分現在 |
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株式
東京株式相場は続伸。外国為替相場のドル高・円安を好感して、電機や自動車など輸出関連株が買われている。金利上昇を追い風に銀行や証券など金融株も高い。
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、米英の貿易協定合意を受けて米国株が上昇し、週末にスイスで予定される米中高官会談での交渉の進展も期待されると指摘。きょうは幅広いセクターが買われそうだと話していた。
トヨタ自動車株が3日ぶりに反発。同社は8日に発表した今期(2026年3月期)営業利益計画で、米関税の4-5月分の影響見込みとして1800億円を減益要因として織り込んだと説明した。
SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、時価総額上位企業の決算発表が終了したことは、一つのイベントリスクが後退したことを意味すると指摘した。
一方、ニデックが株式公開買い付け(TOB)を撤回すると発表した牧野フライス製作所が急落。一時21%安とブルームバーグの記録に残る1974年9月以降で最大の日中下落率となった。
外国為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=146円台前半と1カ月ぶりの安値を付けた。米英の貿易協定合意などを受けたリスク選好の円売り・ドル買いが先行した。その後は、週末に米中協議を控えて円がやや値を戻している。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、米英合意が好感されてドル・円は買い戻されている半面、週末を前に「戻り売りもあるので、ドルが踏み上げられる展開もなりにくい」と話す。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、「英国との合意は第一次トランプ政権から引き継いできたもので決して新しい内容ではなく、他の国に当てはめるのは難しい」とし、これによりドルが底を打ったとは考えにくいと指摘。中国との交渉も楽観論が出ているが、「ジャブの応酬が続くとみている」と述べた。
債券
債券相場は下落し、新発30年債利回りは04年以来の高水準を付けた。リスク選好の高まりから、安全資産の債券を売る動きが強まっている。来週に30年国債入札を控えた超長期債の需給不安も根強い。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、グローバルにリスクオンムードが広がり、金利上昇圧力がかかっていると指摘。「超長期債のアンバランスな需給環境も変わっておらず、30年入札は楽観視できない」と述べた。
一方、米長期金利が大幅上昇した割には円債金利の上昇は抑えられており、「中長期債は押し目買いが入りやすくなっている」とも言う。政府・自民党が経済対策として消費税減税を実施しない方針を固めたとの報道は、「超長期債にとって久しぶりの好材料」だと話した。
加藤勝信財務相は9日、消費税率引き下げは適当でないと考えていると述べた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、「ひとまず財政規律の緩み懸念の後退を通じて金利低下圧力になる」との見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
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