19日の日本市場では円が上昇。米格付け会社ムーディーズ・レーティングスが米国の格付けを引き下げたことを受けて、米財政懸念が意識されている。米国債が売られた流れを引き継ぎ、債券は先物が下落。株式も売り優勢で始まった。
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ムーディーズは16日、米国の長期発行体格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げたと発表した。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続く格下げにより、米国はトリプルA格付けを失った。米国の株価指数先物と債券先物は日本時間19日朝の取引で共に下落。ブルームバーグ・ドル・スポット指数も下げている。
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ベッセント米財務長官は格下げについて、「ムーディーズは遅行指標だ」として大した懸念ではないとの見方を示した。SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは19日付リポートで、米政権が財政の持続性に向けた明確なアクションを取らない場合、米国資産には「4月と同様のトリプル安が生じ得る」との見方を示した。
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日本市場の為替・債券・株式相場の動き-午前9時14分現在 |
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外国為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=145円ちょうど付近まで上昇。ムーディーズによる格下げを受けて米国の財政リスクが意識され、ドル売り・円買いが先行した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、グローバル投資家のドル離れへの警戒は一段と高まる可能性があり、米債投資にリスクプレミアムの上乗せを求める投資家が増えることで「米金利上昇とドル安が同時進行しやすくなるリスク」に警戒が必要だと19日付リポートで指摘した。
20日からカナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、加藤勝信財務相とベッセント米財務長官が為替について協議する可能性があり、米国が円安是正を求めることへの警戒感も円買いを促しやすい。半面、関税を巡る中国を含めた各国と米国の通商交渉の進展や、投機勢の円買いポジションの積み上がりは、一方的な円の上昇を抑える要因となる。
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債券
債券相場は先物が下落。ムーディーズの格下げを受け、米国の長期金利が上昇した流れを引き継いでいる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは「先週末の米国市場は格下げの影響を十分消化しきれてないため、時間外取引で米国債売りが広がりやすく、日本国債にとっても売り手がかりになる」と語る。特に超長期債は財政拡張リスクが意識されているため、一段と金利上昇圧力が強まり利回り曲線はスティープ(傾斜)化しやすいと指摘した。
日本銀行がこの日行う定例の国債買い入れオペは相場の下支えとして期待される。しかし、藤原氏は、応札倍率が高ければ売り圧力の強さを示すため、結果次第で10年1.5%、30年3%という「節目の水準を試す可能性も十分考えられる」とみている。
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株式
東京株式相場は下落。ムーディーズの米国格下げを受け、金融市場に与える影響を懸念した売りが優勢だ。東証33業種では機械、非鉄金属やゴム製品など素材株に売りが先行。保険や銀行など金融株も安い。
半面、医薬品や電気・ガス、食品などディフェンシブ関連は堅調。米国と欧州の関税交渉の進展期待から、輸送用機器や精密機器も高い。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「米国債格下げは金利上昇などを通じて日本株にとってマイナス材料であるが、影響は限定的だろう」と言う。格下げを受けて米国がドル安政策を取りづらくなることや、米貿易戦争が引き続き緩和の方向にあることは株価を支える要因とみていた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
🧠 編集部の感想:
米国の格下げは、円高や債券・株式市場の下落を引き起こし、日本経済に影響を与える可能性がある。特に、財政持続性への懸念が高まる中で、米国資産の魅力が低下する恐れがある。投資家は今後の動向を慎重に見守る必要があり、円高の進行には警戒が求められそうだ。
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