前回、6GHz帯のWi-Fiテザリングを屋外で使えないのが、デバイスドライバ未整備のためという話を書いた。ハードウェアにはそのための機能としてVLP(Very Low Power)というモードが用意されているのに、それをドライバが制御できないということらしい。
USBテザリングを試す
前回の記事について、無線がダメなら有線でもいいんじゃないかというアドバイスをいくつかいただいたりした。スマホをモデムとして使い、PCのデータ通信を委ねたらいいんじゃないかという提案だ。
つまるところはUSBモデムである。懐かしい。PHSの時代はそうやってノートPCをインターネットにつないでいた。
今回は、手元のGoogle Pixel 9 Pro XLを使って有線接続時のインターネットテザリングを試してみた。おそらくは、ほかのAndroid機でも使い勝手に大きな違いはないんじゃないかと思う。
接続は日常的に充電などに使っている一般的なUSBケーブルで構わない。廉価なケーブルはUSB 2.0のもので、転送速度の理論値は480 Mbpsだが、出先のデータ転送でそのくらいの帯域があれば特に困らないと思う。
モバイルノートのUSBポートとスマホのUSBポートを直結すると、PC側に通知がポップアップして何に使うのかをきいてくるが、ここではスマホに制御を任せる。
スマホ側にも「USBテザリングON」の通知が表示され、それを開くと細かい設定がいろいろできる。USBのコントロールをスマホに委ねることについては先に書いた。ここではUSBの役割を決めるのはスマホ、つまり「このデバイス」となる。
そして「USBの接続用途」として、
- ファイル転送/Android Auto
- USBテザリング
- MIDI
- PTP
- Webカメラ
- 充電のみ
が挙げられる。もちろんここではUSBテザリングを選ぶ。これらは「デフォルトのUSB設定」として開発者オプションであらかじめ指定しておける。デフォルトとして指定しておけば接続のたびに設定する手間がかからない。
また、開発者オプションでは電源オプションとして接続デバイスを充電するかどうかを決めておける。ここをどうするかは悩みどころだ。モバイルPCとスマホを1本のケーブルで接続したとき、USB Type-CとUSB Power Delivery(PD)の仕様ではどちらもソースになって電力を供給できるし、PR_Swap(Power Role Swap)メッセージによって役割を途中で入れ替えることもできる。
だが、スマホの限られたバッテリ容量をモバイルPCの充電に使うのはためらわれるし、かと言ってモバイルノートも容量がありあまっているわけではない以上、バッテリについてはソースにもシンクにもならないという選択肢がよさそうだ。
ただ、モバイルノート側に、もう1つType-Cポートがある場合は、そちらから電力を供給し、余った分をスマホの充電に回すのもいい。だが、モバイルノートではインターネット接続のためだけに複雑な配線はためらわれる……。あれこれケースを考えつつ、結局は、接続デバイスの充電はオフが無難という結論に落ち着いた。つまり、何もしない。純粋にデータのやり取りだけを行ない、電力については融通し合わないということだ。
接続デバイスの充電について、一部のモバイルノートではポートごとに、自動判別、PCを充電する、接続デバイスを充電するなどの役割を設定しておくこともできる。多くはユーティリティを使っての設定になるが、自分のモバイルノートについて調べてみて、自分の使い方に見合ったポートの振る舞いを設定しておけるなら、そうしておくといいだろう。
廉価なケーブルでも十分な伝送速度
たとえUSB 2.0でその理論値としての転送速度が480Mbps程度しかないケーブルであったとしても、モバイルノートとスマホを接続したときには数百Mbps程度のスピードは出る。理論値としては6GHz帯のWi-Fiを上回っている。だから速度についてはまったく不満はない。電波干渉もなく、平時の環境なら電波を使うよりも安定が得られるかもしれない。
不満があるとすれば、やはり、ケーブルという呪縛だ。せっかくケーブルを使わない仕組みがあるのに、それを生かせないというのはやはりくやしい。
モバイルノートのディスプレイを開き、認証後に作業途中のデスクトップが表示される頃にはすでにインターネットに接続し、メールのダウンロードなどが始まっているという世界観を得るためには、常に既知のWi-Fi環境の中にいるか、モバイルノート自身がWAN接続のための機構を持っているかのどちらかが求められる。
Wi-Fiテザリングは、スマホを使ってモバイルノートを常に既知のWi-Fi環境下に置くことだ。また、スマホをUSBモデムとして使うのは、モバイルノートにWAN接続機能を拡張することだ。後者についてはモデムそのものを内蔵してしまうこともできるし、それを実現したPCがWAN対応機だ。
ローカルとクラウド、そのハイブリッドのAIが新しい当たり前の機能となるであろう、これからのモバイルノート、自力でインターネット接続もできないというのはあまりにもなさけない。インターネットに接続されていないPCの実用性は、接続されているときの7割減くらいじゃないかと思う。そのことは誰もが知っている。
🧠 編集部の感想:
このニュースは、無線接続の不具合に対して有線接続が有効な代替手段であることを示しています。USBテザリングは、安定したデータ通信を提供し、特に速度面での利点があります。しかし、最後にはやはりケーブルの束縛から解放されたいというジレンマが残ります。
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