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概要
大手総合化学5社(旭化成、三菱ケミカルG、住友化学、三井化学、東ソー)の2024年度の決算が発表され、全社が増収増益を達成したが、2025年度は減収予想とされている。経営環境や株主還元策などを考慮しつつ、各社がどのように難局を乗り越えるかが解説されている。
要約
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大手総合化学5社の決算
- 2024年度は全社増収増益を達成。
- 特に旭化成が過去最高益を更新。
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2025年度の見通し
- 4社が減収予想、全社が営業利益は増益を見込む。
- 為替やナフサ価格の変動が懸念材料。
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業績の背景
- 内部要因(構造改革など)と外部要因(生成AI需要、円安効果)が良好な業績を支える。
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株価の動向
- 業績好調にもかかわらず、株価は横ばい。
- 市場心理が影響し、外部環境の変化を懸念。
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構造改革の重要性
- 各社は過去の構造改革が利益の質や持続性を改善していると説明。
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株主還元策の変化
- 旭化成と住友化学が増配、三菱ケミカルGは自社株買いを計画。
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経営戦略のポイント
- 2024年度は全体で増収増益。
- 株価に外部環境が影響。
- 自助努力により2025年度の増益維持を狙う。
- 企業収益の安定化の重要性
- 外部環境の変動に強い収益構造の構築が求められる。
こんにちは、化学業界を分かりやすく解説するごりおです。
今回は、大手総合化学5社(旭化成、三菱ケミカルG、住友化学、三井化学、東ソー)の最新決算を解説します。
好調であった2024年度に対して、2025年度は向かい風が予想されます。
各社はどのように難局を乗り越えるのか、業績の背景にある企業戦略と経営判断について解説します。
そもそも大手総合化学メーカーとは
総合化学メーカーにはさまざまな定義がありますが、今回は旭化成、三菱ケミカルG、住友化学、三井化学、東ソーの5社に焦点を当てます。
これら総合化学メーカーは川上の原料から川中の誘導品まで幅広く手がけている点が特徴です。ボリューム勝負の基礎化学品を手がけることから、規模の大きな企業も多くなっていますね。
2024年度の業績はどうだったのか
大手総合化学5社について、2025年3月期(2024年度)を以下の表にまとめました。
2024年度は、なんと全社が増収増益を達成しています。
2025年3月期の業績出所:2025年3月期決算短信より
国際会計基準の三菱ケミカルG , 三井化学, 住友化学はコア営業利益
特に旭化成は住宅事業が好調、過去最高益も更新しています。
また昨年赤字であった住友化学も黒字転換。期初予想より400億円上振れして着地しました。
中国の過剰生産で石化製品の市況下落に苦しむ中、各社の業績は意外にも堅調でした。
好調の要因は?
各社が好調であった背景には、「内部要因」と「外部要因」の両面がありました。
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内部要因:構造改革などの自助努力
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外部要因:生成AIやディスプレイ需要の伸び、円安効果、在庫評価益など
つまり市場に濃淡はありながらも、2024年度はトータルすると回復局面だったと言えます。
好業績でも株価は伸び悩む
好業績にも関わらず、2024年度の株価は横ばいに推移しました。
日経平均をアウトパフォームしたのは、住友化学と東ソーのみ2社のみです。
大手総合化学5社の株価チャート比較
出所:株探
実はその裏には、市場心理の難しさがあります。
というのも、昨今の不透明な事業環境に加えて、2025年度は為替の円高やナフサ安も見込まれています。
株式市場では、こうした外部環境の変化がマイナス要因として強く意識されていると考えられます。
2025年度の見通しは?
ここまでは、2024年度の実績を紹介しました。
続いて、2025年度の業績予想を解説していきます。
2025年度は「減収増益」
2026年3月期(2025年度)の見通しでは、5社中4社が減収を見込む一方、全社が営業利益で増益を予想しています。
2026年3月期 業績予想出所:2025年3月期決算短信より
国際会計基準の三菱ケミカルG , 三井化学, 住友化学はコア営業利益
旭化成は引き続き最高益を更新、三菱ケミカルグループは、田辺三菱製薬の譲渡益が加わることで、純利益項目が3.2倍まで跳ね上がる見通しです。
向かい風が予想される中、なぜ増益シナリオが可能となるのか。
ここからは、各社が想定する事業環境や戦略を深堀します。
想定される事業環境
2025年度の事業環境として各社の想定は以下の通りです。
2026年3月期 業績予想出所:2025年3月期決算短信より 国際会計基準の三菱ケミカルG , 三井化学, 住友化学はコア営業利益
各社ともに為替は円高方向、ナフサ価格も下落局面を想定しています。
それぞれ以下のようなリスクが考えられます。
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為替リスク:円高が進めば海外収益が減少
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ナフサ価格の下落:在庫評価損が発生するリスク
トランプ関税の影響は
さらに難しいのが、トランプ関税。
各社直接的な影響は軽微としつつも、一定の影響を織り込んでいます。
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三菱ケミカルグループ:MMAの需要減などを織り込み100億円程度の営業減益
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住友化学:ディスプレイ需要の前倒し反動などで100億円の営業減益
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三井化学:米国への直接輸出分80億円の営業減益
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旭化成:原油価格下落リスクを想定し、ナフサ価格を55000円に
増益を牽引するのは構造改革の成果
今期は決して簡単な事業環境ではないものの、各社を下支えするのは、これまでの構造改革の成果です。
例えば三菱ケミカルGは外部要因からの157億円減益を予想するも、価格政策や資産最適化といった自助努力で560億円の増益を見込んでいます。
三菱ケミカルグループ2026年3月期コア営業利益の増減分析
出所:三菱ケミカルグループ 決算資料
また旭化成も、外部要因による減益分を売上・収益性向上効果で補うとしていますね。
旭化成2026年3月期営業利益の増減分析
出所:旭化成 決算資料
各社はこれまでも構造改革を進めてきたことから、利益の質や持続性が改善しているわけですね。
株主還元の重要性
さらに企業価値向上の視点から、株主還元策に対するマインドの変化も見えてきます。
例えば、旭化成や住友化学は増配を決定。
三菱ケミカルグループは、田辺三菱製薬の売却から得られた資金を元手に大規模な自社株買いを実施予定です。
三菱ケミカルグループ 自社株買いに関して
出所:三菱ケミカルグループ 決算資料
これらは利益の還元だけでなく、投資家の信頼を高め、市場での評価を改善するための戦略的判断とも言えます。
まとめ:決算分析から学ぶ経営戦略のポイント
今回の決算分析から学べるポイントは以下の3つです。
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2024年度は市場に濃淡がありながらも、全体では増収増益だった
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現在の株価は、外部環境の変化による市場心理が影響
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2025年度は、自助努力により増益をキープ
このように企業が中長期で安定的に収益を確保するためには、外部環境の変化に左右されにくい収益構造の構築が重要です。
また株式市場においては、株主還元策といった企業価値向上策も欠かせません。
各企業がどのようにこれらを実践していくか、今後も注目していきましょう。
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