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【大原雄介の半導体業界こぼれ話】IntelのAltera売却や、AMD/TSMCのN2プロセス製造成功に思うこと – PC Watch


 今月もやはりこぼれ話をいろいろ。

AlteraがSilver Lakeの傘下に

 4月16日、Intelは同社が保有するAlteraの株式の51%をSilver Lakeに44.6億ドルほどで売却したことを発表した

 取引そのものは今年(2025年)下半期に完了予定となっているが、米国の会計法によれば、持ち分が50%未満であっても実質的に支配している場合は連結子会社扱いになる。

 ところがリリースの中で「Upon closing, Intel expects to deconsolidate Altera’s financial results from Intel’s consolidated financial statements.(取引完了後にAlteraの財務結果は、Intelの連結財務諸表から除外する予定である)」と述べられており、もう完全にIntelから独立する形を目指しているようだ。

 Sandra Rivera氏に代わり、5月5日からMarvellのRaghib Hussain氏(President, Products and Technologies)がCEOに就任とされており、これもIntelによる支配の影響を外そうとする動きの一環と思われる。

 この後どうするか?という話だが、Silver Lakeは投資ファンドだから、もう少し企業価値を高めた上でIPOを行なうか、あるいはどこか別の企業に売却する方向になるだろうし、その際にはIntelも残っている49%の保有株の一部、あるいは全部を売却することになるかと思われる。

 ただIPOにしてもどこかに転売するにしても、まずは株価を引き上げないと儲けにならない。なので当面はSilver Lakeの下で企業価値を高めて、IPOの際の株価を引き上げられるようにすることが求められる格好だ。

 問題はこの企業価値である。先のリリースによれば、2024年通期でのAlteraの売上は15.4億ドル。営業利益はGAAPベースで-6.15億ドル、非GAAPベースで3,500万ドルとなっている。2015年~2024年のXilinx/AMD、Altera/Intel、それと業界第3位であるLattice Semiconductorの毎年の売上(グラフ1)および営業利益(グラフ2)をちょっと見てみると、いろいろ大変そうという気がしてならない。

【グラフ1】売上高推移

【グラフ2】営業利益推移

 そもそもこのグラフ、2022年にXilinx/AMDの数字が跳ね上がっているのは、AMDの組み込み部門には従来の組み込み向けとXilinxのビジネスに加えてセミカスタム、つまりソニーとMicrosoft向けのゲーム機向けSoCのビジネスも合算されているからで、2024年に数字が急落しているのは、そのソニー/Microsoft向けの生産(特にPlayStation 5)の生産が一段落してしまったからである。なので2022~2024年の旧Xilinx部門だけの正確な数字を出すのは難しいが、ラフに言えば水色の破線のような感じかな、と想像される。

 一方Intel/Alteraであるが、2021年まではPSG(Programmable Solutions Group)として部門別売上および営業利益が公開されていたが、2022年に同部門の減損処理が行なわれ、売上および営業損益も「その他」に合算されるようになってしまい、今回プレスリリースの中で数字が出るまで同部門の売上や営業損益が分からなかった。こちらもまぁオレンジの破線が実情に近いのかな、と思っている。

 こうしてみると、2015年にはXilinxにやや負けてはいるがそれほど大きな差ではなかったのが、2018年を境にPSGは売り上げを落とし始め、一方XilinxはPSGの落としたマーケットを拾い上げるかのように売上を伸ばしているのが分かる。

 もう1社、PSGの落としたマーケットを拾い上げたのがLattice Semiconductorで、2015年の時点では業界3位と言いつつもAlteraの5分の1しかなかった売り上げは、2024年時点で3分の1強、2023年には推定半分位まで売り上げを伸ばしている計算だ。

 もっと問題なのが営業利益で、Lattice Semiconductorは長らく営業損失を出している状況が続いたが、2018年にAMDのSVPを務めていたJim Anderson氏がCEOに着任してから業績が急上昇。2021年にはPSGの3分の1近い営業利益を確保している。Anderson氏は2024年5月に突如Lattice Semiconductorを辞してCoherentのCEOに転じた関係もあってか、2024年は売上/営業利益ともにちょっと減少傾向にある(業界全体で売上が落ちているので、単に辞任だけの問題ではないとは思うが)、この10年でAlteraとLatticeのポジションが大きく縮まったことは否めない。

 図1はStock AnalysisによるLatticeの時価総額の変動を示したものだ。2015年12月末におけるLatticeの時価総額は7億2,700万ドルほど。現在は58億ドルだから、この10年で時価総額が8倍近く拡大したことになる。

【図1】この10年で言うと2023年6月末の132億2,300万ドルが時価総額のピークで、それに比べると現在の58億2000万ドルはだいぶ少ないとはいえるのだが

 一方2015年にIntelが旧Alteraを買収した時の価格が167億ドル。これは一株当たり54ドルで、当時1株当たり15%のプレミアが載せられた額だったので、当時の時価総額は142億ドルほどになる計算だ。それが10年で87.5億ドルということだから、時価総額がほぼ4割減った計算になる。実際には2015年から2024年までで大体32.3%ほどインフレが進んでいる事を考慮すると、時価総額の6割が失われた(実質39.6%まで下がった)計算になる。つくづくIntelはM&Aが下手な会社なのだな、と思わざるを得ない。

 それはともかくとして、今回の取引にあたり、Alteraの企業価値は87.5億ドル相当と計算されたわけだが、売上はともかくとして、営業利益で赤字の状況のAlteraのお値段が87.5億ドルなのは妥当か?というのは、Latticeが58億ドルと評価されていることを考えると、やや割高にすぎないだろうか?というのが筆者の素朴な疑問である。

 しかも87.5億ドルのままだとSilver Lakeにはビジネス上での利益が皆無だから、実際には最低でも100億ドルを超えてくれる程度まで株価を引き上げないといけないことを考えると、結構この先の道程は遠いように思える。

 一番厄介なのは、その売り上げも次第に減っているように見えることで、ここで何か手を打たないとこのままズルズルとLatticeとの差が縮まって行きそうに見えなくもないことだ。2026年にはAgilex 3が市場投入されるが、Agilex 3だけでこれが止められるのか?というと、厳しい様に感じられる。

AMDのVenice CCD

 4月16日に、AMDがTSMCのN2を用いてVenice CCDの製造に成功したことを発表した。ちなみに記事には「テープアウトすると発表した」とあるが、元のニュースリリースでは「first HPC product in the industry to be taped out and brought up on the TSMC advanced 2nm (N2) process technology.(テープアウトし、動作確認が完了した最初のHPC製品)」となっており、もう製造を行なってその動作確認まで済んでいるとされている。

 実際写真を見ると、N2プロセスを使って製造されたと思しきウェハを、Lisa Su AMD CEOとC.C. Wei TSMC CEOの2人で示している。もっともこれは要するにファーストシリコンがちゃんと動作したという話であって、量産に入るまでにはまだ大分時間が掛かりそうである。当たり前の話で、ここから検証を延々を実施する必要があるからだ。

 ま、それは本題ではない。このプレスリリースの写真(5,000×3,152ドット)のウェハ部分を等倍で切り出したのがこちら(写真2)。超解像でサイズを2倍にし、角度補正を掛けたのがこちら(写真3)。とりあえずどう見てもウェハ表面にガウスぼかしをガッチリかけてくれていて、もう何がなんだかさっぱり分からないのだが、右上の方を見るとウェハ上にダイの境目と思しき部分(写真4)がある。残念ながら横方向のみで、縦方向の境目は確認できなかったのだが、どうもこの境目を見ると、Venice CCDの縦方向の高さは15mm前後になるものと思われる。

【写真2】うーむ……

【写真3】まぁガウスぼかし掛けたものに超解像掛けてもぼかしが解除できるわけではないので……

【写真4】左側もよく見ると境目が残っている部分もあるのだが、右側の方が分かりやすい。縦方向の境目は全然分からなかった

 Zen 5 CCDの寸法は9.33×7.83mmほどなので、この15mmが長辺側と仮定しても1.5倍のサイズになることになる。まだZen 6世代のCCXの構成が不明(12コア/CCXとか16コア/CCXとかの噂が飛んでいるが、いずれも飛ばしの可能性がある)なので断言はできないが、Zen 6世代はちょっとCCDが大型化するようだ。

 ……なんていう分析をされるのを嫌がってAMDはガウスぼかしを掛けて写真を出したのかもしれない、とちょっと反省してみたり。

MRDIMM Gen2

 4月21日、CadenceがMRDIMM Gen2のIPを発表した。既にTSMC N3を利用した評価チップが稼働していることも示されている(写真5)。

【写真5】メモリそのものは既存のDDR5-6400をそのまま利用できるのがメリットとされるが、さて

 このMRDIMM Gen2向けのソリューションとしては、2024年11月にルネサスエレクトロニクスもMRDIMM Gen2向けに必要となるMRCD(Multiplex Registered Clock Driver)やMDB(Multiplex Data Buffer)、PMICなどを発表しており、もちろんこのあと検証は必要にしても、一応MRDIMM Gen2 DIMMのサンプル出荷は可能な状況になりつつある。

 むしろ問題なのはホスト側の方である。今のところMRDIMMに対応するのはP-CoreのXeon 6のみであり、E-Core Xeon 6は未対応である。AMDは「非標準のメモリはサポートしない」という姿勢を崩しておらず、現時点では対応製品がなし。Armベースのサーバー(Ampere以外に、AWSのGravitonを始めとするHyperscalerの自社向けArmチップを含む)もMRDIMMの発表を打ち出したところはなく、それもあってMicronなどは昨年からMRDIMMモジュールを発売しているものの、それほど大きくマーケットが広がっているという感じになっておらず、むしろ何か古のDRDRAMとかFB-DIMMを連想させるような状況になっている。

 ただJEDECは昨年6月にMRDIMMの標準化作業を行なっていることを公式に発表しており、この際にGen2の12.8Gbps/pinまでターゲットを視野に入れていることを明らかにしているから、ルネサスやCadenceの発表はこのJEDECの方針に則って先行出荷を行なっている格好だが、さすがにそろそろGen1(つまり8.8Gbps/ピン)については標準化が完了しても良さそうな時期なのに、未だにそうした気配が見えないのが気になるところである。

 このままだと数量が出ずに価格が高止まりし、結局使われないソリューションとして消えかねない可能性もあるが、ただDDR6の標準化はさらに時間が掛かるので、何とかしてMRDIMMをモノにしないと、また暫くサーバーの性能が(メモリがボトルネックで)性能が停滞することになりかねない。今年8月にサンタクララで開催されるFMS(the Future of Memory and Storage)で何かしら進捗の発表があることを期待したいのだが。



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