🧠 あらすじと概要:
あらすじ
「女の中にいる他人」は、成瀬巳喜男監督が1966年に発表した作品で、心理サスペンスの要素を持つドラマです。物語は、中年サラリーマンの夫が昔の友人の妻と不倫関係になり、情事の際の過失で彼女を殺してしまうという事件から始まります。夫はこの罪を隠し通そうとするが、心理的な苦悩に苦しみ、自首しようと決意します。それに対して、妻は家庭を守るために行動を起こし、夫を守るために彼の選択を揺さぶります。
記事の要約
この映画は、夫婦間の心理劇を中心に展開し、成瀬監督の女性に対する深い洞察が光ります。夫の浮気が引き起こす試練や、妻の苦悩を描きつつ、個人主義と家庭の和の対立も探求しています。古風な価値観に基づく妻の行動は、戦後の社会に対する批評とも見て取れ、タイトルの意味にもつながります。全体的に、深い人間ドラマと社会的テーマが融合した作品として評価されています。
成瀬巳喜男監督の、1966(昭和41)年の東宝作品「女の中にいる他人」。
成瀬監督晩年の作品で、女性を描かせたら右に出る者はいない同監督だけど、殺人に手を染めた、小林桂樹演じる中年サラリーマンの心理を中心に展開するサスペンス・ドラマであった。
基本は、夫婦間の心理劇であり、夫が浮気してその相手を殺してしまったと告白された、新珠三千代演じる妻の苦悩も描かれるけど。
子煩悩で真面目なサラリーマンだった夫が、夫の昔からの友人の妻に誘惑されて関係を持ってしまう。情事の興奮を高めるために首を絞めてと誘われて誤って殺してしまうのだ。
しかし、夫に警察の手は伸びず、事件は未解決となりそうだったが、夫は情緒不安定となって、妻や友人にも殺人を告白、自首しようとするものの、妻も友人も大反対する。それでも良心の呵責に耐えきれなくなった夫は自首しようとするが、妻は夫が準備してた毒薬を盛って…。
夫の現状と家庭を守るため、妻の友人の理解もあって、事件を忘れさせようとする妻。殺された友人の妻は常日頃、夫がいても男遊びを止めなかったし。しかし、隠してることに耐えきれなくなった夫が法の裁きを選ぶと、子供の将来を守り、夫との良い思い出を維持するために、夫を亡き者にする。
妻にとっては平凡な日常の中にある小さな幸せが何よりも優先されることだったのだ。妻は、一歩身を引く古風なタイプの女性ではあるが、戦後の個人主義の台頭に抗い、非常識・不道徳であっても、あえて家庭の和を大切するともいえ、成瀬監督の、当時の風潮に対するアンチテーゼのようにも思えた。そこで、このタイトルなのかもしれない。
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