火曜日, 5月 20, 2025
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【レビュー】“手が届く平面型”SENDY AUDIO「Apollo」と「Aiva 2」でアニソン聴いてみた – AV Watch


左からSENDY AUDIOの「Apollo」と「Aiva 2」

かつて平面型ヘッドフォンは、高価で鳴らしにくいマニア向けのヘッドフォンの代名詞だった。しかし最近では低価格化が進み、鳴らしやすくなり、より一般市場に広がってきた。これに伴い、平面型は解像力が高いが低音が弱く、正座してクラシックやジャズを聴くもの……というイメージも変わりつつある。そこで、SENDY AUDIOの平面型ヘッドフォンから10万円以下の最新2モデルをピックアップ、最近のアニソンを聴いて個性を競わせてみた。

コスパの高いブランドとして、SENDY AUDIOやSIVGAという名前はしばらく前から国内でもマニアの間では知られていたが、現在は正式な国内流通が開始されたので販売ルートが広がって入手しやすくなった。

名が知られている割にはブランドについての情報は限られていたのだが、昨年ポタフェスで開発者に会った時に詳しく聴くことができた。

SENDY AUDIOから、左はCEOの周さん、右は開発のパンさん

まず、会社の名前としては「SIVGA」であり、「SENDY AUDIO」はそのハイエンド製品のブランド名ということだ。つまりSENDY AUDIOは5万円以上のハイエンドヘッドフォンがメインで、対してSIVGA名の製品はそれよりも下の価格でコンシューマを対象としている。SENDY AUDIOのブランドの特徴としては、平面磁界型ドライバーを主軸製品とし、木製のハウジングや金属製のフレームなど手に取った質感にもこだわりがあるということだ。

今回取り上げるのは10万円以下の平面磁界型ドライバー搭載モデル「Apollo」(実売約5万円前後)と「Aiva 2」(同約8万円前後)だ。面白いことに両者は単なる兄弟機ではなく設計思想が異なっている。そこでまず両モデルの特徴から解説していこう。

「Apollo」

「Aiva 2」

設計思想が違うApolloとAiva 2

ApolloはSENDY AUDIOの低価格のエントリーモデルで、太陽神アポロをモチーフとしたデザインを採用している。特徴はフラッグシップ機譲りの「クアッド・フォーマー(QUAD-FORMER)技術」を搭載している点だ。

クアッド・フォーマー(QUAD-FORMER)技術

従来の平面型ヘッドフォンの振動板が上下に振動して音を出すとき、実際には上下に正確に振動するわけではなく、左右にぶれてしまうという。そしてこのぶれが歪みの原因になる。そこで、SENDY AUDIOでは振動板上のコイルパターンの他に、四隅にこのぶれを抑えるための独立したコイルパターンが設けられている。これがクアッド・フォーマー技術だ。フラッグシップのPeacockではこれが4基設けられており、Apolloでは2基設けられている。効果としてはオーケストラなどの大音量時での歪みが特に減少するということだ。

パンさんに書いてもらったQUAD-FORMERの模式図。Peacockの場合はこうなっており、赤丸が独立コイルだ

Aiva 2は初代Aivaの振動板や仕様を改良した最新型モデルであり、人魚の鱗をモチーフとしたデザインを採用している。

特徴は97mm×76mmという大型楕円形の超薄振動板を搭載した点だ。Aiva 2はクアッド・フォーマー技術を採用していないが、これはドライバーを可能な限り大きな面積とするために、クアッド・フォーマー技術の独立コイルを搭載しなかったことによるものだ。つまり言い換えるとAiva 2ではクアッド・フォーマー技術を搭載するよりも面積を大きくするアプローチを選択したわけだ。このように一見すると兄弟機に見えても設計思想が違う点が面白い。

ApolloとAiva 2でアニソンを楽しむ

それぞれ実機を使用して音を聴いてみた。手に取ってみると、両製品とも価格の割に金属の高級感が際立つ。さらにAiva 2ではウッドハウジングの木の質感もより高くなり、高級ヘッドフォンらしい質感が感じられる。

「Apollo」

「Aiva 2」。どちらもウッドハウジングだが、Aiva 2になると木の質感もより高くなり、高級ヘッドフォンらしさが漂う

「Aiva 2」のバンド部分。金属パーツもふんだんに使われている

ヘッドフォンアンプは価格的にこれらと好適のShanling「EH2」を使用した。EH2は低価格ながらディスクリートのR2R DACを搭載したユニークなヘッドフォンアンプだが、DACをOSモードに切り替えることで平面型のような高性能ヘッドフォンにも対応できる。

Shanling「EH2」

まず「推しの子」の主題歌であり、一時期はアニメも曲もかなり話題となったYOASOBIの「アイドル」を聴いてみた。

「Apollo」

Apolloではややヴォーカルが埋もれがちであり、バックの打ち込みサウンドの迫力や鋭いパンチが前に出てくることで、まるでロックバンドの曲のように華やかでパワフルに曲を楽しめる。

Aiva 2の場合にはバックのサウンドは鋭いパンチを保ちながらも、ヴォーカルが前に出てきて声が明瞭に聴こえる。あくまでもヴォーカルがスターのお星様で、バックがヴォーカルの引き立て役Bになっているということがよく分かる。

次は「鬼滅の刃」でもヒットを飛ばしたLiSAの歌う「ブラックボックス」を聴いた。アニメ版のニーア・オートマタ第二期テーマソングだ。

初めはゆったりと始まり低音成分が控えめであり、Apolloでも歌に低域が被らずに歌詞が明瞭に聴こえてくる。やがてドラムスが加わってくると低音のパンチが力強く、躍動感が伝わる。ニーアの作品世界のダイナミックさに引き込まれてしまい、ヨルハ部隊の地球降下作戦の興奮が伝わるようだ。

「Aiva 2」

Aiva 2ではまず冒頭のピアノが鮮明で美しい。ヴォーカルの明瞭感も高く彼女の声の美しさがよく伝わってきて、「スペースシップ」という繰り返しが心に残る。ドラムスの低音は控えめだが平面型らしい小気味良いパンチが良い仕事をしている。ヨルハ部隊が壊滅して鬱展開になっていく時に心に染み入るだろう。

米津玄師の「プラズマ」は今一番話題の機動戦士ガンダム・ジークアクスのテーマ曲だ。ファースト勢の筆者も毎週放送の際に「ララ音ってなんだよ」とか「まさかAMBACが出てくるとは」と庵野マジックに狂喜乱舞している。

この曲は男性ヴォーカルなのでApolloでもうまく歌の雰囲気は伝わってくる。バックのサウンドはパンチと量感があり、躍動感がひときわ高く感じられる。シャリア・ブルの渋さが重なる感覚だ。

Aiva 2は男性ヴォーカルではやや人魚らしい声の魅力が少なくなるが、独特の声質はよくわかる。そして打ち込みサウンドのテンポがよく、全体の躍動感がとても高い。「飛び出していけ宇宙の彼方」というサビの部分ではMAVダンスが頭に浮かぶほど盛り上がる。

「ロックは淑女の嗜みで」はインストのガールズバンドというユニークなテーマのアニメだ。劇中では実際のロックバンドの曲がアレンジして使われていて、ここではLITE「Ghost Dance」(原曲)を聴いてみた。

「Apollo」

Apolloでは平面型らしからぬ太くて量感たっぷりのベースサウンドやドラムスが楽しめ、ギターのリフも気持ちよく聴きやすい。ドラムスは重さがあり、相手を支配したくなるオトハのようなパワー感が楽しめる。

「Aiva 2」

Aiva 2では少し軽めのドラムスとベースサウンドにはなるが、その分で安心してボリュームを上げていくと鋭いベースの切れ味がよく分かる。スピード感が一際高く感じられるのはリリサのギタースタイルを彷彿とさせ、後半エキサイティングして相手を不燃ごみと罵りたくなる気持ちがわかるほどに盛り上がっていく。

そして、紅白出場を果たしたインディーズ出身バンド「たま」の曲を、栗コーダーカルテットがカバーした「宇宙人ムームー」のエンディングテーマ「さよなら人類」を聴いてみた。

Apolloでは、低音成分が控えめのため、ヴォーカルとアコースティック楽器の組み合わせでもクリアで明瞭感が高く、楽器音の鳴りの細かさもよく伝わってくる。途中でバスクラリネットが入ると低音の量感がとても心地よく、不可思議で気持ちの良いたまの曲世界に彷徨い込める。

Aiva 2ではアコースティック楽器の音の端切れがよく透明感がとても高い。低音はちょうど良いくらいで強調感は少ない。声も楽器も再現性がリアルで、ヴォーカルの声優さんの声音の変化がわかりやすい。たまの不条理で皮肉な歌詞の世界を堪能できる。

個性で選びたいApolloとAiva 2

左からSENDY AUDIOの「Apollo」と「Aiva 2」

最後に少しまとめると、アニソンでは特に女性ヴォーカルの時にAiva 2が光り、人魚のように女声に独特の魅力がある。例えば上坂すみれの「ハートをつければかわいかろう」の早口で捲し立てるフレーズでは、声優ならではの滑舌の良さが解像力の高いAiva 2では存分に楽しめる。「ある魔女が死ぬまで」のエンディングである手嶌葵の「花咲く道で」を聴くと、手嶌葵らしい掠れゆく独特の声質の魅力にちょっと感動してしまう。

純粋にロックサウンドに近くなるとApolloの良さが光ってくる。たとえばガールズバンドクライの「空白とカタルシス」では、ルパさんが唇舐めてから畳み掛けてくるのが見えるような冒頭の攻撃的なベースラインから、一気にバンドサウンドが広がるところではぞくりとするほど迫力がある。Apolloは平面型らしからぬ低音の強さが魅力ではあるが、一方で中高域への低音の被りが多めなのでその点では曲によって向き不向きが出る点はある。

このようにApolloとAiva 2では個性が異なるので、価格の上下よりは自分の好きな音楽の好みで決めるのが良いだろう。声優さん好きでアニソンが聴きたいユーザーはAiva 2が良いし、男声ヴォーカルが多いボップ音楽やメタルなどを好むユーザーはApolloに惹かれるだろう。

平面型ヘッドフォンも最高の音質を競い合う流れから、普通のダイナミック型ヘッドフォンのように気軽に個性を比較して選べるようになってきたことは好ましいことだ。平面型ヘッドフォンの普及価格帯でのさらなる発展が楽しみだ。





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🧠 編集部の感想:
SENDY AUDIOの「Apollo」と「Aiva 2」は、平面型ヘッドフォンの新たな選択肢として注目されています。特に、価格帯が手頃で解像度が高く、アニソンにおいてもそれぞれ異なる個性を発揮する点が魅力的です。音楽ジャンルに応じて選ぶ楽しさが広がり、平面型ヘッドフォンの普及に期待が高まります。

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