BD790i X3D。ぱっと見従来のBD795iなどと区別が付かない

 MINISFORUMが3月末より出荷開始した「BD790i X3D」は、直販で9万9,980円でありながら、大容量L3キャッシュ“3D V-Cache”を搭載したAMDのゲーム向けモバイルCPU「Ryzen 9 7945HX3D」をオンボードで搭載したMini-ITXマザーボードだ。今回サンプルを入手したので、簡単にレポートしていきたい。

 同社の「BD7xx」シリーズは、2023年末から販売開始しているモバイルCPUを搭載したマザーボードである。Ryzen 7 7745HXを搭載した「BD770i」を皮切りに、さまざまなバリエーションを展開。デスクトップCPU+自作向けマザーボードと比較すると、最大TDPが低いためクロックが低く、オーバークロックも不可能なため絶対性能は劣るが、コア数は同等であるため、圧倒的に高いコストパフォーマンスを実現できる。

 2025年の今ではRyzen 9000世代が登場しているため、本シリーズはいずれも「最新世代CPU」ではないのだが、Ryzen 7000シリーズも十分現役と言える性能を有しているのは間違いない。そのBD7xxシリーズがここに来て、シリーズ最強、かつRyzen 9 7945HX3D搭載モデルが登場した格好だから、期待しないわけにはいかないだろう。

【表】BD7xxシリーズの比較
モデル BD770i BD795i BD790i SE BD795i SE BD795M BD790i X3D
CPU Ryzen 7 7745HX Ryzen 9 7945HX Ryzen 9 7940HX Ryzen 9 7945HX Ryzen 9 7945HX3D
メモリ DDR5-5200 SO-DIMM 2基(最大64GB) DDR5-5200 SO-DIMM 2基(最大96GB)
拡張スロット PCIe 5.0 x16 1基 PCIe 4.0 x16 1基(金属補強) PCIe 5.0 x16 1基
M.2スロット PCIe 5.0 x4 2基 PCIe 4.0 x4 2基 PCIe 5.0 x4 2基
SATA 6Gbps 非搭載 2基 非搭載
SSDヒートシンク 搭載 非搭載 搭載
無線LAN Wi-Fi 6E+Bluetooth 5.3 非搭載 Wi-Fi 6E+Bluetooth 5.3
フォームファクタ Mini-ITX microATX Mini-ITX

 ちなみに日本で発売されたRyzen 9 7945HX3D搭載システムはASUSの「ROG Strix SCAR 17」程度でかなりレアな存在であるため、手にしたこのとあるユーザーはかなり少ないだろう。

AMDによる3D V-Cache技術搭載がよく分かるパッケージ

 BD7xxシリーズは、BD770iとBD795iが発売された後に、「BD790i SE」という無線LAN/PCIe 5.0対応/SSDヒートシンクを省いたモデルが登場したのだが、BD790i X3Dは無線LAN付き、PCIe 5.0対応、SSDヒートシンク搭載ということで、性格的にはBD770iやBD795iに近いものになっている。

 ただ、BD790i SEで導入された金属で補強されたPCIeスロットは非搭載。一方でBD790i SEにあったCPUヒートシンク外側フィンの補強機構は継承……といった辺りで、性格的には“基板はBD795iをベースにCPUをX3Dに変更して、CPUヒートシンクはBD790i SEのものとなりました”的な雰囲気である。

 また、筆者に届いたサンプルだけかもしれないが、無線LANモジュールはBD795iがIntelの「Killer Wi-Fi 6E AX1675」だったものの、BD790i X3DではIntelの「Wi-Fi 6E AX210」となっていた。このため「Killer Performance Suite」が使えなくなっていた(実利用ではほぼ無影響だが)。

ファンの接続ピンヘッダなども従来と共通だ

 最後に“X3D化”のメリットを見るために、ベンチマークをしてみた。今回はメモリ32GB(Micron DDR5-5600 16GB SO-DIMM×2を5200で動作)、Radeon RX 7800 XT、Samsung PM981、OSにWindows 11 Home(24H2)などの環境でテスト。参考として従来のRyzen 9 7945HXを搭載したモデルBD795iも同じ構成にして比較した。

【表】テスト環境
マザーボード BD790i X3D BD795i
メモリ DDR5-5600 SO-DIMM 16GB×2(DDR5-5200で動作)
最大96GBまで拡張可能
SSD Samsung PM981 512GB(PCIe 3.0 x4接続)
ビデオカード Radeon RX 7800 XT(16GB)
OS Windows 11 Home(24H2)
電源 LEADEX VII PLATINUM PRO 1200W
モニター ARZOPA A1 GAMUT MINI 2K(2,560×1,600ドット)

 広く知られている通り、多くのゲームではキャッシュメモリの大容量化による性能向上の効果が見込める。しかし、Ryzen 7000世代の3D V-Cacheは8コアが1つになっているダイ=CCDの“上”に載る構造になっており、CCDの発熱による3D V-Cache動作への影響を抑えるためにCPUコアの動作クロックが抑えられ、クロック低下によってある程度そのメリットがスポイルされる(3D V-Cacheを“下”に敷くことでこの問題を解消したのがRyzen 9000のX3Dシリーズ)。

 BD790i X3Dに関して言えば、CPU全体のTDP制限は従来のBD7xxシリーズと同じく100Wに設定されている。このため3D V-Cacheが載っていない方のCCD側のCPUでは最大4.5GHz程度のクロックを維持できる。しかし3D V-Cacheが載っている方のCCD側のCPUは、おおよそ4.25GHzになるようだ(ちなみにほんの一瞬ではそれぞれ5GHz、5.4GHzまで上がる)。

 ただ、3D V-Cacheの効果は高い電力制限下でこそ発揮されやすく、本製品はデスクトップ向けのX3Dより、その特性を生かしたものだと言える。

AMDが提示した資料。3D V-Cacheの効果はより低いTDPでこそ性能が発揮される。グラフはちょっと分かりにくいが、つまりTDP 70Wに設定した場合、3D V-Cacheによる性能向上は11%だが、40Wだと23%向上するというものだ

 ちなみにこの3D V-Cacheを駆使するためには「3D V-Cache パフォーマンス・オプティマイザードライバー」と呼ばれるAMD配布ドライバをインストールする必要があり、導入によってゲーム動作時は3D V-Cache搭載CCDを動かし、そうでない時は非搭載CCDを動作させるようになる。今回のテストでは導入した状態で実施している。

 「PCMark 10」、「3DMark」、「Cyberpunk 2077」、「モンスターハンターワイルズ」では、ほぼ僅差となった。「Cinebench R23」では3D V-Cache搭載CCDのCPUクロック低下の影響も見られるが、そもそもクロック差が250MHz程度の違いのため、スコア低下は比較的少ない。

 このように、多くのベンチマークでは実は大きな差がないところもあるため、BD795iやその後継のBD790i SE/BD795i SEを既に導入しているユーザーが乗り換えるほどのものでもない。ただ、「より高いX3Dを選んだのに、クロックの差でCPU演算性能で損した」気分にはならないだろう。

 一方、今回テストした中では「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー」では3D V-Cacheによる恩恵が見られた。また、今回は公式でベンチが用意されていないのでテストしていないが、Microsoftの「Flight Simulator」、「VALORANT」、「フォートナイト」などでも効果が大きいことが知られている。そのため、当初よりゲーム目的でコンパクトなPCを組む予定であれば、BD790i X3Dはかなり有力な選択肢になるのではないだろうか。

16コアRyzen X3D搭載で9万円台のマザーだと!? ガマンできないので小型ゲーミングPCを作りました【4月15日(火)21時ライブ配信】

 Ryzen 9 7945HX3Dは、人気のゲーミングCPU「Ryzen 7 7950X3D」のモバイル版といった仕様で、7950X3D同様に16基のZen 4コアとゲームに効く3D V-Cacheを組み合わせています。そして7950X3Dは今でも12万円近くする高級モデル。つまりBD790i X3Dってめちゃ買い得では!?

 ゲーマー、クリエイター、ロマン派、そして純粋にパフォーマンスを求めるみなさんのために、劉デスクがBD790i X3Dの検証レポートをお届けします.



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