🧠 あらすじと概要:
あらすじ
「ガールウィズニードル」は、第一次世界大戦後のコペンハーゲンを舞台に、貧困に苦しむお針子カロリーネの物語です。彼女は工場長と恋に落ちるも、身分の違いから捨てられ失業してしまいます。妊娠していたカロリーネは、養子縁組を手伝う女性ダウマと出会い、彼女との間に強い絆を築きますが、次第にカロリーネは恐ろしい真実に直面します。
記事の要約
本作は、戦争の影響を受けた女性たちの苦悩と決断を描いた反戦映画であり、モノクロの映像がその生々しさを際立たせています。カロリーネの周辺に存在するダウマの行為は極悪とされつつも、持たざる者に手を差し伸べる優しさを含んでいます。カロリーネの母性の目覚めや、母性が果たして絶対的なものか相対的なものであるのかという問いが投げかけられ、観客はさまざまな感情に揺さぶられます。ラストでは、カロリーネが本当の母へと成長し、戦争の終焉を迎える過程が描かれ、深いメッセージが込められています。
大人になってから本作を見返すと清田と節子を追い詰めた彼女もまた戦争の被害者であることが分かる。
銃弾が飛び交う戦場を描かずして
生み出された反戦映画の傑作。
「火垂るの墓」がそう賞賛される理由が僅か数分の食事シーンからも垣間見える。本作「ガールウィズニードル」はモノクロによるグロテスクな作風で残酷な描写ばかりが話題になりがちだがその奥にはこのような高尚な演出により
人間そのものを描き出すアプローチが見えてくる。
作品概要
ガール・ウィズ・ニードル(2024)Pigen med nälen / The Girl with the Needle2025/5/16上映、 123分、デンマーク/ボーランド/スウェーデン監督:マグヌス・フォン・ホーン脚本:マグヌス・フォン・ホーン、 Line Langebek Knudsen
キャスト:ヴィクトリア・カルメン・ゾンネ、トリーヌ・ディルホム、ベシーア・セシーリ
Filmarks
あらすじ
第一次世界大戦後のコペンハーゲン。お針子として働くカロリーネは、アパートの家賃が支払えずに困窮していた。やがて勤め先の工場長と恋に落ちるも、身分違いの関係は実らず、彼女は捨てられた挙句に失業してしまう。すでに妊娠していた彼女は、もぐりの養子縁組斡旋所を経営し、望まれない子どもたちの里親探しを支援する女性ダウマと出会う。他に頼れる場所がないカロリーネは乳母の役割を引き受け、二人の間には強い絆が生まれていくが、やがて彼女は知らず知らずのうちに入り込んでしまった悪夢のような真実に直面することになる。
公式サイト
子供を産めば誰もが母親なのか?
出産した赤子を養子に出す。
観る人によっては、この罪深い行為が引き金となって連鎖反応的に次々とカロリーナに“天罰”が降りかかっていく、
といった構造が見えるかもしれない。
「ガールウィズニードル」より
だが、本作の本質はそうでは無い。この作品は一人の女性が幾つもの苦渋の決断を経て本当の母親になる物語だ。彼女は社会保障や愛した男、そして運に見放された被害者であり常に苦渋の決断を余儀なくされた被害者である。本作の舞台となる第一次大戦後の社会では他者を思いやる余裕を失い、カロリーナのような持たざる者たちは過酷な暮らしを強いられている。過酷なまでの非情なまでの貧困暮らしは
彼らに非常な行為を強制する。
そういった真実が生々しく描き出されていた。そしてモノクロであることが
更に映像の生々しさを際立たせていた。
もう一人の主人公
本作にはもう一人の主人公がいる。さまざまな登場人物の中でただ一人、カロリーナに手を差し伸べる
砂糖屋の女店主ダウマ。
「ガールウィズニードル」より
その正体は闇で養子縁組を行う人物なのだがやがて恐ろしい行為を行なっていることが判明する。本作では数々の残酷な行為が描かれるが彼女のそれは映画史に残るほどの残酷さである。そんな彼女はカロリーナをはじめとする自分の子供を預けにきた母たちに
こんな言葉をかける。
「あなたは正しいことをした」ダウマの行為は紛れもない犯罪なのだが彼女はサイコパスでも極悪人でも無くむしろ持たざる物に手を差し伸べ続ける本作における最大にして唯一の良心でもある。目を覆いたくなるほどの彼女の行為を目撃して軽蔑と怒りを覚えた私たちは物語のラストで考えさせられる。
ダウマが正しいことをした可能性について。
そして私はふと「火垂るの墓」に登場する
あの叔母を思い出していた。
母性は絶対的か?相対的か?
自分の子供を養子に出したカロリーナは束の間の安定した暮らしの中で他人の養子に乳をやることになり、やがて母性に目覚めていく。この変化を目の当たりにした私たちは母性とは妊娠と出産による絶対的な感情ではなく実は相対的なものなのだと気付かされる。そして物語の後半でカロリーナはこの芽生えた母性がゆえに共に暮らす少女に手をあげることになる。その姿は冒頭で出会った子供に暴力をふる酷い母親と重なるのだが、カロリーナはそのことに気づかない。母性とはエゴなのか?母性は普遍的で尊いものとして捉えられてきたが暴力を正当化してしまう側面を持つ。自分の子供と他人の子供を残酷に隔てる
この感情の正体は何なのだろうか。
決して女性に限った話ではない。
宗教で語られる博愛や人類愛と言った
尊い感情を持つことの難しさを痛感させられる。
最後に
ネタバレを避けるため曖昧な表現に留めるがカロリーナはラストシーンで本当の意味で母になりようやく彼女の戦争を自らの決断により終える。針は人を傷つけることも出来るが暖かい服を作ることも出来る。センセーショナルなシーンが続く作品だが
その奥には深いメッセージが込められている。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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