🧠 概要:
概要
この記事は、株式会社ベルク(9974)の事業内容や財務状況、成長戦略、リスク要因、株価バリュエーションに関する詳細な分析を行い、投資に対する魅力を検討したものです。特に、現在の経済環境や業界の激しい競争に対するベルクの対応策や未来の成長ポテンシャルが焦点となっており、投資家向けに有益な情報を提供しています。
要約(箇条書き)
- 企業概要: ベルクは埼玉県を中心とする食品スーパーマーケットで、地域密着型の店舗運営とローコストオペレーションが強み。
- 経営理念: 「Better Life with Community」を掲げ、地域社会への貢献を重視。
- 業績・成長戦略:
- 2025年2月現在、144店舗を展開。
- 増収増益を達成し、新規出店やM&Aを通じた成長を模索。
- 市場環境: 食品スーパーマーケット業界は人手不足や原材料高騰などの課題に直面している。
- 収益モデル: 効率的な仕入れと物流、統一した店舗フォーマットにより、コストを抑えつつ競争力を維持。
- 財務健全性: 高い自己資本比率(54.8%)を維持し、キャッシュフローも安定。
- リスク要因: 外部環境、競争の激化、原価上昇などに敏感で、これらのリスク管理が重要。
- 株価評価: 現在の株価水準や将来の成長シナリオを考慮した投資判断が求められる。
この記事は、ベルクの多角的な分析を行い、将来の投資機会についての洞察を示しています。
本記事は、株式会社ベルク(証券コード:9974、以下「ベルク」または「同社」)の事業内容、財務状況、成長戦略、リスク要因、そして株価バリュエーションを多角的に分析し、同社への投資妙味を深掘りすることを目的としています。食品スーパーマーケット業界に関心のある投資家、特に中長期的な視点での投資を検討されている個人投資家の方々にとって、有益な情報を提供することを目指します。本分析は、ベルクが2025年5月22日に提出した有価証券報告書(以下「本報告書」)を主要な情報源としつつ、最新の市場動向や関連ニュースを加味して行います。
1.2. 株式会社ベルクの概要と現在の注目点
ベルクは、埼玉県を主な事業基盤とし、首都圏(埼玉県、群馬県、千葉県、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県)で食品スーパーマーケットを展開する企業です。1959年の創業以来、「Better Life with Community(地域社会の人々に、より充実した生活を)」を経営理念に掲げ、地域密着型の店舗運営と効率的なローコストオペレーションを強みとして成長を続けてきました。2025年2月28日現在、144店舗(うちクルベ3店舗)を展開しています(本報告書 p.22)。
近年の食品スーパーマーケット業界は、消費者の節約志向の高まり、人手不足による人件費の上昇、原材料価格やエネルギーコストの高騰、そしてドラッグストアやECサイトなど異業種との競争激化といった厳しい事業環境に直面しています。このような環境下において、ベルクは「Better Quality & Lower Price」をスローガンに、品質と価格のバランスを追求し、積極的な新規出店と既存店活性化、プライベートブランド(PB)「くらしにベルク kurabelc」の強化、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による効率化などを通じて、持続的な成長を目指しています。
特に注目すべきは、その堅実なドミナント戦略と、厳しい環境下でも増収増益を達成している収益力です。また、2006年にはイオン株式会社と業務・資本提携を締結し(本報告書 p.4, p.21)、商品供給や販売促進施策での連携も図っています。2024年6月には株式会社マルイチ水産LTDの株式を100%取得し(本報告書 p.4)、生鮮部門の強化にも乗り出しています。これらの戦略が今後の成長にどう結びつくのか、そして現在の株価水準は投資対象として魅力的かどうかが、本記事の分析の核心となります。
1.3. 分析のアプローチと記事構成
本記事では、まずベルクの企業概要とビジネスモデルを整理し、事業の全体像を把握します。次に、過去の業績推移と直近の財務状況を詳細に分析し、同社の収益力と財務健全性を評価します。続いて、食品スーパーマーケット業界の市場環境と競合状況を踏まえ、ベルクのポジショニングと競争優位性を考察します。
さらに、同社が掲げる成長戦略(新規出店、既存店活性化、商品戦略、DX推進、M&Aなど)を個別に検証し、成長のドライバーとなる要素を明らかにします。同時に、事業を取り巻く様々なリスク要因についても詳細に検討し、潜在的な懸念材料を洗い出します。
これらの分析を踏まえ、株価バリュエーションの評価を行い、ベース、ブル、ベアの3つのシナリオを設定して将来の株価レンジを試算します。最後に、これまでの分析結果を総合的に評価し、ベルクへの投資妙味について筆者の見解と具体的な示唆を提示します。
2. 企業概要とビジネスモデル
2.1. 株式会社ベルクの基本情報
2.1.1. 会社概要
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会社名: 株式会社ベルク (Belc CO., LTD.)
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本店所在地: 埼玉県鶴ヶ島市脚折1646番(本報告書 p.1)
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設立: 1959年5月(株式会社主婦の店秩父店として設立、1992年3月に株式会社ベルクに商号変更)(本報告書 p.4)
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代表者: 代表取締役社長 原島 一誠(本報告書 p.1)
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資本金: 3,912百万円(2025年2月28日現在)(本報告書 p.3)
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上場市場: 東京証券取引所 プライム市場(本報告書 p.30)
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事業年度: 3月1日から翌年2月末日まで(本報告書 p.1)
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従業員数: 連結 2,752名(臨時従業員数 7,832名)、提出会社 2,685名(臨時従業員数 7,482名)(2025年2月28日現在)(本報告書 p.6)
2.1.2. 経営理念:「Better Life with Community」
ベルクは、「Better Life with Community(地域社会の人々に、より充実した生活を)」を経営理念として掲げています(本報告書 p.8)。この理念に基づき、顧客に支持され信頼される店づくりを進め、スーパーマーケットとしての社会的役割を果たすことを経営の基本方針としています。
2.2. 事業内容とビジネスモデルの解剖
2.2.1. 食品スーパーマーケット事業の展開
ベルクグループは、親会社である株式会社ベルクと、連結子会社である株式会社ホームデリカ(惣菜を中心とした加工食品の製造)、株式会社ジョイテック(販売用資材・消耗品等の供給、店舗清掃業務等)、非連結子会社である株式会社マルイチ水産LTD(水産物の加工・販売)の4社で構成されています(本報告書 p.5)。
事業の核となるのは、埼玉県を中心とする首都圏(埼玉県、群馬県、千葉県、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県)における食品スーパーマーケットのチェーン展開です。生鮮食品(青果、鮮魚、精肉)、加工食品、惣菜、日配品、日用品等を主な取扱商品としています。2025年2月28日現在、ベルク141店舗、クルベ(小商圏対応の小型店舗フォーマット)3店舗の合計144店舗を運営しています(本報告書 p.22)。
2.2.2. 主力商品とサービス
ベルクの店舗では、日常生活に必要な食料品や日用雑貨を幅広く取り揃えています。特に、鮮度の高い生鮮三品(青果・鮮魚・精肉)と、店内で調理される出来立ての惣菜に力を入れています。また、プライベートブランド(PB)商品として「くらしにベルク kurabelc」を展開し、ナショナルブランド(NB)商品との組み合わせで、顧客に価格と品質の両面で価値を提供しています(本報告書 p.22)。
サービス面では、ポイントカードシステムの導入、クレジットカードや電子マネーといった多様な決済手段への対応、ネットスーパー「ベルクお届けパック」、移動スーパー「とくし丸」といった買い物支援サービスも提供し、顧客の利便性向上に努めています(本報告書 p.22)。
2.2.3. バリューチェーンと収益構造
ベルクのビジネスモデルは、効率的な仕入れ、物流、販売体制の構築によるローコストオペレーションを基本としています。
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仕入れ: メーカーや卸売業者からの直接仕入れや市場買い付けに加え、連結子会社のホームデリカが惣菜を、マルイチ水産が水産品を供給する体制を構築しています。イオンとの提携による共同仕入れなども活用していると考えられます。
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物流: 自社で物流センター(埼玉県大里郡寄居町に第1センター等)を運営し、店舗への効率的な商品配送を実現しています(本報告書 p.19, p.28)。これにより、配送コストの削減と商品の安定供給、鮮度維持を図っています。
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販売: 標準化された店舗フォーマットによる効率的な店舗運営と、パート・アルバイト従業員を中心とした人員配置により、人件費をコントロールしています。POSシステムを活用した販売データ分析に基づき、発注精度の向上や売れ筋商品の把握、販促活動の最適化を図っています。
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収益構造: 商品販売による売上高が主な収益源です。売上総利益(粗利益)から販売費及び一般管理費(人件費、賃借料、水道光熱費、減価償却費など)を差し引いたものが営業利益となります。
2.2.4. 子会社の役割と連携
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株式会社ホームデリカ: 惣菜を中心とした加工食品の製造を行い、ベルク各店舗へ供給しています。ベルクのインストアベーカリーや惣菜コーナーの品質向上と商品力強化に貢献しています。(本報告書 p.5, p.6)
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株式会社ジョイテック: ベルクへの販売用資材、消耗品等の供給、店舗及び関連施設の清掃業務等を行っています。グループ全体の運営効率化とコスト削減を支援しています。(本報告書 p.5, p.6)
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株式会社マルイチ水産LTD: 2024年6月に株式の100%を取得した非連結子会社です(本報告書 p.4)。水産物の加工・販売を手掛けており、ベルクの鮮魚部門の商品力強化や調達力向上への貢献が期待されます。
これらの子会社との連携により、商品開発力の強化、サプライチェーンの効率化、コスト競争力の向上を図っています。
2.3. 沿革:成長の軌跡と重要なマイルストーン
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1959年6月: 創業者である原島善一氏が埼玉県秩父市に「株式会社主婦の店秩父店」を設立し、宮側店を出店(本報告書 p.4)。セルフサービス方式の小売業としてスタート。
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1983年3月: 商号を「株式会社主婦の店ベルク」に変更。
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1991年11月: 埼玉県熊谷市に生鮮センターを開設。
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1992年3月: 商号を「株式会社ベルク」に変更。
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1994年6月: 日本証券業協会に株式を店頭登録。
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1999年1月: 埼玉県大里郡寄居町に物流センターを開設。
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2004年12月: 株式会社ジャスダック証券取引所に株式を上場。
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2006年7月: イオン株式会社と業務・資本提携契約を締結(本報告書 p.4, p.21)。
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2008年2月: 株式会社東京証券取引所市場第二部に株式を上場。
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2009年2月: 株式会社東京証券取引所市場第一部銘柄に指定。
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2015年2月: 本社事務所を埼玉県鶴ヶ島市へ新設・移転(本報告書 p.4)。
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2022年4月: 東京証券取引所の市場区分見直しによりプライム市場へ移行。
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2024年6月: 株式会社マルイチ水産LTDの株式100%を取得(本報告書 p.4)。
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2025年2月現在: 144店舗を展開(本報告書 p.4)。
セクションサマリー:ベルクは埼玉県を地盤とする食品スーパーで、「地域社会への貢献」を理念に掲げています。効率的なローコスト運営と子会社連携による商品供給体制を特徴とし、堅実な成長を遂げてきました。イオンとの提携も事業展開に影響を与えています。
2.4. コーポレート・ガバナンス体制
2.4.1. 機関設計と役員構成
ベルクは監査役会設置会社です。2025年5月22日現在、取締役14名(うち社外取締役6名)、監査役3名(全員社外監査役)の体制となっています(本報告書 p.36)。取締役会の議長は代表取締役社長である原島一誠氏が務めています。取締役会は毎月1回の定例開催に加え、必要に応じて適宜開催され、経営上の重要事項の審議・決議および業務執行状況の監督を行っています。2025年2月期には取締役会を15回開催しています(本報告書 p.36)。
また、経営の透明性と客観性を高めるため、任意の諮問機関として「指名・報酬委員会」を設置しています。同委員会は代表取締役社長と社外取締役を含む取締役6名(うち独立役員4名)で構成され、取締役の選解任や報酬等に関する方針について審議し、取締役会に助言・提言を行っています(本報告書 p.36)。
さらに、執行役員制度を導入しており、2025年5月22日現在、5名の執行役員が任命され、業務執行を担っています(本報告書 p.36)。
2.4.2. リスク管理体制
ベルクは、全社的なリスク管理体制の整備を重要な経営課題と位置付けています。代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、経営資源の保全、社会的評価、ステークホルダーへの影響を与えうるリスクに対して迅速かつ的確に対応することを目的としています(本報告書 p.9, p.37)。2024年1月からは、サステナビリティを巡る課題への対応もリスク管理委員会の所管事項としています(本報告書 p.9)。
リスク管理委員会は、サステナビリティ課題を含むリスクに関する方針策定、担当取締役の任命、リスクと機会の特定、指標・目標設定、取組計画の承認、進捗状況の監督等を行います。2025年2月期には7回開催され、その議事内容は取締役会に報告され、連携が図られています(本報告書 p.9)。
内部統制システムについては、取締役会で「内部統制システムの基本方針」を定め、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令等遵守、資産の保全を図るための体制整備を行っています。内部監査部門として社長直轄の監査室(4名で構成)を設置し、監査基本計画書に基づき、経営諸活動全般にわたる内部監査を実施しています。監査結果は代表取締役社長および常勤監査役に報告されるとともに、取締役会にも毎月報告されています(本報告書 p.46)。
セクションサマリー:ベルクは監査役会設置会社であり、社外役員を複数名登用し、指名・報酬委員会を設置するなど、ガバナンス体制の強化に努めています。リスク管理委員会や内部監査室を通じて、全社的なリスク管理と内部統制の有効性確保に取り組んでいます。
3. 直近業績と財務分析
3.1. 主要経営指標の推移(過去5ヶ年)
本報告書p.2およびp.3に記載されている連結経営指標および提出会社の経営指標に基づき、過去5期間の主要な数値を整理します。
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売上高(連結):
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第62期(2021年2月期): 281,656百万円
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第63期(2022年2月期): 297,019百万円
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第64期(2023年2月期): 305,561百万円
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第65期(2024年2月期): 346,072百万円
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第66期(2025年2月期): 381,440百万円
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安定した増収基調が続いています。特に第65期、第66期は二桁近い伸びを示しています。
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経常利益(連結):
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第62期: 12,675百万円
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第63期: 13,885百万円
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第64期: 14,297百万円
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第65期: 14,972百万円
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第66期: 17,388百万円
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売上高の増加に伴い、経常利益も着実に増加しています。
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親会社株主に帰属する当期純利益(連結):
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第62期: 8,828百万円
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第63期: 9,187百万円
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第64期: 9,614百万円
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第65期: 10,677百万円
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第66期: 12,385百万円
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こちらも順調な増加傾向にあります。
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3.1.1. 収益性指標の動向
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売上高経常利益率(連結):
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第62期: 4.50%
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第63期: 4.67%
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第64期: 4.68%
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第65期: 4.33%
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第66期: 4.56%
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概ね4.5%前後で安定的に推移しており、同社が目標とする4.5%以上を第66期には達成しています(本報告書 p.8)。
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自己資本利益率(ROE)(連結):
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第62期: 12.1%
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第63期: 11.5%
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第64期: 11.0%
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第65期: 11.2%
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第66期: 11.8%
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10%を超える水準を維持しており、資本効率は良好と言えます。
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3.1.2. 安全性指標の動向
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自己資本比率(連結):
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第62期: 55.9%
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第63期: 54.6%
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第64期: 53.9%
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第65期: 54.2%
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第66期: 54.8%
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50%を超える高い水準を維持しており、財務の安定性は高いと評価できます。
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3.1.3. 効率性指標の動向
効率性指標の直接的な記載は少ないものの、後述する販管費分析などから、ローコストオペレーションを追求していることがうかがえます。
セクションサマリー:ベルクは過去5年間、安定的な増収増益を達成しています。収益性、安全性ともに良好な水準を維持しており、特に売上高経常利益率は目標とする4.5%以上を確保しています。
3.2. 第66期(2025年2月期)連結業績ハイライト
本報告書p.22およびp.25に基づき分析します。
3.2.1. 増収増益の要因分析
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営業収益(売上高及び営業収入): 387,779百万円(前期比10.2%増)
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売上高: 381,440百万円(前期比10.2%増)
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要因:仕入原価上昇に伴う適時適切な値上げ、積極的な販売促進活動、ポイントカード販促、前期出店6店舗の年間稼働、当期新規出店7店舗の寄与。
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営業利益: 17,011百万円(前期比17.4%増)
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経常利益: 17,388百万円(前期比16.1%増)
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売上高対経常利益率: 4.6%(目標4.5%を達成)
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親会社株主に帰属する当期純利益: 12,385百万円(前期比16.0%増)
小売業界が原材料価格やコスト高騰に直面する中、的確な商品政策と販促、そして新規出店効果により、大幅な増収増益を達成しました。
3.2.2. 商品別売上高の状況
本報告書p.24「商品別売上状況」より(連結)。
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生鮮計: 162,910百万円(前期比11.5%増)
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青果: 51,782百万円(前期比13.8%増)
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海産: 28,285百万円(前期比8.9%増)
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精肉: 40,521百万円(前期比10.7%増)
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デリカ: 42,320百万円(前期比11.6%増)
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グロサリー計: 218,530百万円(前期比9.3%増)
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一般食品: 141,517百万円(前期比10.1%増)
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菓子: 63,649百万円(前期比9.0%増)
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雑貨: 12,303百万円(前期比2.4%増)
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グロサリーギフト: 1,059百万円(前期比2.7%増)
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合計: 381,440百万円(前期比10.2%増)
生鮮食品、特に青果とデリカが二桁の高い伸びを示し、全体の増収を牽引しました。
3.2.3. 販売費及び一般管理費の分析
本報告書p.25より。
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販売費及び一般管理費: 92,408百万円(前期比8.1%増)
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売上高対販売費及び一般管理費率: 24.2%(前期24.7%から0.5ポイント改善)
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主な増加要因:賃金上昇及び人員数増加による給与手当の増加(前期差3,146百万円増)、電気料金単価上昇に伴う水道光熱費の増加(前期差772百万円増)。
コスト増圧力がある中で、売上高の伸びがコスト増を上回り、販管費率は改善しました。効率的な店舗運営が寄与していると考えられます。
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セクションサマリー:第66期は、新規出店効果や既存店の堅調な伸び、適切な価格政策により、売上高・各利益ともに大幅な増加を達成しました。特に生鮮食品の好調が目立ち、コストコントロールも効いて販管費率は改善しています。
3.3. 財政状態の分析
本報告書p.22-23およびp.53-54(連結貸借対照表)に基づき分析します。
3.3.1. 資産構成とその特徴
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総資産: 200,717百万円(前期末比16,353百万円増)
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流動資産: 40,017百万円(前期末比3,109百万円増)
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主な増加要因:現金及び預金(805百万円増)、商品及び製品(1,931百万円増)。
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固定資産: 160,699百万円(前期末比13,244百万円増)
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有形固定資産: 138,207百万円(前期末比9,956百万円増)
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主な増加要因:建物及び構築物(3,389百万円増)、土地(3,330百万円増)、建設仮勘定(2,626百万円増)。新規出店や店舗改装による設備投資が継続していることを示しています。
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投資その他の資産: 20,124百万円(前期末比3,328百万円増)
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主な増加要因:差入保証金(1,848百万円増)。こちらも新規出店に伴うものと考えられます。
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資産の大部分を有形固定資産(店舗・土地など)が占めており、小売業特有の資産構成となっています。
3.3.2. 負債構成と有利子負債の状況
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負債合計: 90,797百万円(前期末比6,398百万円増)
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流動負債: 49,205百万円(前期末比3,760百万円増)
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主な増加要因:買掛金(1,900百万円増)。事業規模拡大に伴うものです。
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固定負債: 41,592百万円(前期末比2,638百万円増)
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主な増加要因:長期借入金(2,268百万円増)。設備投資資金の調達と考えられます。
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有利子負債(短期借入金なし、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、長期借入金、社債、リース債務の合計と推察):
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本報告書p.20には第66期末の有利子負債残高が36,767百万円と記載されています。これは連結総資産の18.3%に相当します。
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内訳として、長期借入金(1年内返済含む)が34,452百万円で、主に固定金利による借入であるため、金利変動リスクは比較的少ないとされています。
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3.3.3. 純資産と自己資本比率
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純資産合計: 109,920百万円(前期末比9,955百万円増)
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主な増加要因:利益剰余金(9,965百万円増)。当期純利益の計上によるものです。
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自己資本比率: 54.8%(前期末54.2%)
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依然として高い水準を維持しており、財務の安定性は確保されています。
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セクションサマリー:ベルクの財政状態は、積極的な設備投資を継続しつつも、自己資本比率50%超を維持しており、健全性が高いと言えます。有利子負債は総資産の2割弱であり、主に固定金利であることから金利変動リスクも限定的です。
3.4. キャッシュ・フローの分析
本報告書p.23およびp.58-59(連結キャッシュ・フロー計算書)に基づき分析します。
3.4.1. 営業キャッシュ・フロー
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営業活動によるキャッシュ・フロー: 22,690百万円(前期比1,631百万円増)
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主な増加要因:税金等調整前当期純利益の増加。
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安定的にプラスの営業キャッシュ・フローを生み出しており、事業の本源的な収益力を示しています。
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3.4.2. 投資キャッシュ・フロー
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投資活動によるキャッシュ・フロー: △21,719百万円(前期比△5,491百万円、支出増)
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主な要因:有形固定資産の取得による支出(17,814百万円)、差入保証金の差入による支出(3,534百万円)。
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新規出店や既存店改装など、将来の成長に向けた積極的な投資を継続していることがうかがえます。
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3.4.3. 財務キャッシュ・フロー
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財務活動によるキャッシュ・フロー: △165百万円(前期比△3,216百万円、支出減)
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主な要因:長期借入れによる収入(11,199百万円)、長期借入金の返済による支出(△8,445百万円)、配当金の支払額(△2,419百万円)。
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借入と返済をバランス良く行いつつ、株主還元も実施しています。
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現金及び現金同等物の期末残高: 17,833百万円(前期末比805百万円増)
セクションサマリー:ベルクは、本業で安定的にキャッシュを生み出し(営業CFプラス)、それを原資に成長投資(投資CFマイナス)を行い、残りを借入金の返済や配当(財務CFマイナス)に充てるという、成長企業の典型的なキャッシュ・フローパターンを示しています。
3.5. 収益構造とコスト構造の詳細分析
3.5.1. 売上総利益率の変動要因
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第66期連結の売上高は381,440百万円、売上原価は278,359百万円であり、売上総利益は103,081百万円となります。
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売上総利益率は 103,081 ÷ 381,440 = 27.02% (本報告書p.25では27.0%と記載)
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第65期連結の売上高は346,072百万円、売上原価は251,907百万円であり、売上総利益は94,165百万円。
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第65期の売上総利益率は 94,165 ÷ 346,072 = 27.21%
(本報告書p.25には第65期売上総利益率27.0%の記載はないが、第66期売上総利益率27.0%に対し、営業総利益率は前期比で0.2ポイント低下したとの記述から逆算すると、第65期営業総利益率(粗利率+テナント収入等)が28.7%+0.2%=28.9%。仮に営業収入の対売上高比率が第65期と第66期で同程度(1.6%-1.7%)であれば、売上総利益率はやや低下している可能性がある。)
本報告書p.25には、「売上総利益率は27.0%となりました」とあり、前期比較の具体的な数値の記載はありません。しかし、仕入原価の上昇が続く中で、適切な値上げを実施しつつも、この水準を維持している点は評価できます。PB商品の構成比向上なども寄与している可能性があります。
3.5.2. 販管費の主要項目と対売上高比率
本報告書p.64(連結損益計算書関係の注記)より、第66期の販売費及び一般管理費の主要な費目を抜粋。
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給料及び手当: 32,204百万円(対売上高比率 8.44%)
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賞与引当金繰入額: 1,423百万円(対売上高比率 0.37%)
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地代家賃: 8,904百万円(対売上高比率 2.33%)
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減価償却費: 7,255百万円(対売上高比率 1.90%)
これらの主要費目が販管費の大部分を占めています。人件費関連(給料手当、賞与引当金)が最も大きく、対売上高比率で約8.8%です。地代家賃も大きな割合を占めます。
第66期の売上高対販売費及び一般管理費率は24.2%であり、前期の24.7%(85,453百万円 ÷ 346,072百万円)から0.5ポイント改善しています。これは、売上高の伸びが人件費や水道光熱費などのコスト増を吸収し、相対的に効率性が向上したことを示唆しています。
セクションサマリー:ベルクは、原価上昇圧力がある中で売上総利益率を概ね維持し、販管費のコントロールにも成功して売上高対販管費率を改善させています。人件費と地代家賃がコストの主要部分を占めていますが、効率的な運営により収益性を確保しています。
3.6. 同業他社との財務指標比較
ベルクの財務指標を理解する上で、同業他社との比較は有効です。ここでは、首都圏を地盤とする代表的な食品スーパーであるヤオコー(8279)、ライフコーポレーション(8194)、オーケー(非上場ですが参考として)などを念頭に置きます。詳細な数値比較は割愛しますが、一般的な傾向として、ベルクは以下のような特徴を持つと考えられます。
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収益性(売上高経常利益率など): 業界平均と比較して高い水準にある可能性が高いです。ローコストオペレーションとドミナント戦略が寄与していると考えられます。ヤオコーも高収益企業として知られています。
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安全性(自己資本比率など): 50%を超える自己資本比率は、業界内でも比較的高い水準であり、財務基盤の安定性を示しています。
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効率性(販管費率など): 販管費率の低さはベルクの強みの一つであり、効率的な運営体制を反映しています。オーケーは徹底したローコスト運営で知られており、比較対象として興味深いです。
(注:具体的な同業他社比較を行うには、各社の直近決算短信等を参照し、会計基準の差異等も考慮する必要があります。)
セクションサマリー:ベルクの各種財務指標は、業界内で比較しても良好な水準にあると考えられます。特に、安定した収益性と高い財務健全性は同社の競争力を示すものです。
4. 市場環境と競合ポジショニング
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