金曜日, 5月 23, 2025
ホームレビュー映画【ネタバレあり】若さと美しさを追い求める狂気に女性に向けられる社会の目を生々しく感じつつ、あの薬を作ったのは絶対アンブレラ社だろうと思った『サブスタンス』シネマロ

【ネタバレあり】若さと美しさを追い求める狂気に女性に向けられる社会の目を生々しく感じつつ、あの薬を作ったのは絶対アンブレラ社だろうと思った『サブスタンス』シネマロ

🧠 あらすじと概要:

映画『サブスタンス』のあらすじ

この映画では、元トップ女優エリザベス(デミ・ムーア)が、50歳を超えたことで若さや美しさを求める狂気にとらわれます。彼女は再生医療である<サブスタンス>を接種し、若い自分“スー”(マーガレット・クアリー)に生まれ変わります。エリザベスとスーは共存しながらも、1週間ごとに身体を入れ替えなければなりません。しかし、スーでいる間の名声や賞賛に快感を覚えたエリザベスは、タイムシェアリングのルールを破り始めます。そして、その選択がもたらす悲劇的な結末へと進んでいきます。

記事の要約

『サブスタンス』は、社会が女性に対して持つ美しさへの厳しい目線をホラーの形で描き、若さの執着がもたらす狂気を浮き彫りにします。エリザベスは再生医療によって若さを取り戻しますが、見た目が変わることで周囲の扱いが一変する様子が過剰に表現されています。彼女が美しさを求め続けることで、最終的には命に関わる危険な状況に陥るというストーリーが展開されます。この記事では、女優たちの体当たりの演技や、女性が直面する社会的プレッシャーについても触れられています。ラストは驚きの展開を迎え、現代社会の虚しさも問う作品となっています。

【ネタバレあり】若さと美しさを追い求める狂気に女性に向けられる社会の目を生々しく感じつつ、あの薬を作ったのは絶対アンブレラ社だろうと思った『サブスタンス』シネマロ

記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

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シネマロ

2025年日本公開映画で面白かった順位:14/53  ストーリー:★★★★★ キャラクター:★★★★★★★★★★     映像:★★★★☆     音楽:★★★★☆

映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:The Substance  製作年:2024年  製作国:イギリス・フランス合作   配給:ギャガ 上映時間:142分 ジャンル:ホラー元ネタなど:なし

公式サイト:https://gaga.ne.jp/substance/

【あらすじ】

元トップ人気女優エリザベス(デミ・ムーア)は、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”(マーガレット・クアリー)。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。

一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。

【感想】

※以下、ネタバレあり。男である自分が語っていいのか一瞬ためらいますが、この映画は「女性であること」が社会からどう見られてきたかをホラーという手法でえぐり出す内容でした。なので、ぜひ女性の感想を知りたいですね。

<ベテラン女優の体当たり演技に度肝を抜かれる>

この映画、序盤からアクセル全開です。エリザベスを演じたデミ・ムーアがとにかく凄くて。作中では50代の設定ですが、現実の彼女は還暦を過ぎています。それでもなお、一糸まとわぬ姿で自らの肉体を完全にさらす覚悟。そこがもう映画序盤から一気に引き込まれるポイントでした。『ベイビーガール』(2024)のニコール・キッドマンもそうでしたが、その女優魂に頭が下がります。

<女性というだけで社会からどう見られているか>若さと美しさを失ったエリザベスは再生医療のサブスタンスに手を出します。摂取すると体が細胞分裂を繰り返し、背中から脱皮したかのように若い自分が出てくるんですよ。知識や経験はエリザベスのままで、姿形だけ若返った彼女は自らをスー(マーガレット・クアリー)と名乗り、世間を圧巻していきます。エリザベスを陰でババアと罵り、お払い箱にしたプロデューサーのハーヴェイ(デニス・クエイド)は手の平を返したように夢中になり、男たちは媚び、世界が180度変わりました。中身は同じエリザベスなのに、見た目が違うだけでこうも対応が変わるなんて、それだけ女性は見た目で判断されてきたということをまざまざと見せつけられます。まあ実際問題、男性にしろ女性にしろ、見た目が美しい人はそうでない人と同じ対応をされるかと言うと答えはノーだと思いますが。

<若さや美しさへの執着は社会が仕向けたもの>

ただ、このサブスタンスには注意事項がありました。それは、7日ごとにエリザベスとスーの体を交代しなければならないというものです。お互いの血液を交換することで精神が引き継がれる設定なのですが、徐々にエリザベスはスーである間のまわりからの賞賛に快感を覚え、そのルールを破ってしまうんですね。おそらく、女性というだけで生まれたときから男性以上にまわりから見た目のことを言われ、さらにそれを売り物にしているエリザベスからしたら、スーのままでいたいと思うのはよくわかります。しかし、スーでいる時間が長引くと、母体であるエリザベスの体にダメージが蓄積されていきます。初めは右手の人差し指がミイラのようになってしまい、エリザベスも焦りを覚えるのですが、それでも彼女のスーでいたいという執念は止まらず、最終的には『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001-2003)のゴラムのような姿に……。「そこまでして若さを求めるのか?」と笑ってはいけません。そうまでしてしまうように仕向けたのは(男性中心の)社会なのではないかと僕は思います。現に、スーになった途端、隣人の男は下心を見せ、スーのときに知り合った男はエリザベスを見て暴言を吐いていました。それがすべてではないでしょうか。唯一、エリザベスの昔のクラスメイトという男性だけが、ありのままの彼女を美しいと言ってくれましたが、一時、エリザベスも彼とデートをしようと思ったものの、スーと比べた自分に自信が持てず、デートをドタキャンしてしまいます。ありのままの自分を肯定できないなんて、社会は個人を殺す側面もあると思い知らされました。

<狂気を極めた終盤の展開>結局、スーで長くいたために彼女すらも劣化が始まり、ついにエリザベスは禁止されていたサブスタンスの二度打ちを行います。そして、スーの背中から現れたのは、見るもおぞましい異形の怪物でした。『バイオハザード2』(1998)のG生物のような巨大で歪んだ肉体に複数の顔、不気味な乳房。美しさを追い求めた成れの果てがこれです。

大晦日のスペシャル番組の司会に抜擢されていたスーは、若い頃のエリザベスのポスターの顔部分を切り取って貼り付け、無理矢理ドレスを着こんで会場に向かいましたが、そこで待っていたのは地獄絵図。いびつな形をした体は脆く、ちぎれた腕からは火事に放水するかのとごく血が噴き出し、観客が真っ赤に染まります。もうホント、ドリフのコントかってぐらいにビッシャビシャになって。最後も『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(1987)のクランゲのような顔から触手が生えただけの姿になってしまい、正直、B級ホラーノリに思わず笑ってしまいました。サブスタンス、絶対アンブレラ社が作りましたよね、、、?このまま『バイオハザード』に引き継がれてもおかしくない設定です(笑)<そんなわけで>ラストだけものすごく茶番でしたけど、若さと美しさへの執念の凄まじさは存分に伝わってきました。果たして、スーでいることをやめられなかったエリザベスは哀れなのでしょうか。僕としては、彼女は社会の犠牲者のようにも感じられました。先にも書きましたが、ありのままの彼女を美しいと言ってくれたかつてのクラスメイトの言葉も届かないほど、エリザベスは美醜に囚われてしまったんです。仕事柄余計にそう感じてしまう部分はあるにせよ、やはり女性って若くて美しい方がもてはやされるんですよ。それなのに、人は「見た目じゃない」とか「ありのままでいい」なんて口では簡単に言えますけど、実際、それがどれほど虚しいかは現代を生きていればわかります。美容整形が一般化し、SNSの流行で簡単に他人と比較できるようになった今、ありのままの自分を愛せる人がどれだけいるでしょうか。この映画はその虚しさをホラーという形で表現しています。見た目について何かと言われ続けてきた女性たちからしたら、この映画で描かれる狂気と執念こそ、大なり小なり自分たちがずっと内包してきたものだと感じるかもしれません。

シネマロ

映画が好きで時間さえあれば映画ばかり観ています。ここでは新作・旧作問わず「映画館で観た作品」の感想を書いています。★は基本5点満点ですが、ずば抜けて心躍った場合は限界突破して10個以上つくことも。他のSNSでも感想書いていますが字数制限があるので、が完全版です(笑)



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