火曜日, 5月 13, 2025
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【トピック】発電するガラスって何? パナソニックに聞いた「窓で発電」の可能性- 家電 Watch


「発電するガラス」の利用イメージ(CG)

太陽光発電といえば、屋根の上や、広大な土地に並んだ黒いパネルが一般的。一方で、いまパナソニック ホールディングス(以下:パナソニックHD)が開発を進めているのは、窓などのガラスに太陽電池を組み合わせた「発電するガラス」といえるものだ。

オフィスビルや住宅などに多く使われる透明なガラス窓で、実は発電もできるとなればとても魅力的だが、いったいどんな技術なのだろうか。現在のソーラーパネルとの違いや、今後の実用化への計画などを、パナソニックHD ペロブスカイトPV開発部の金子幸広さんに聞いた。

パナソニックHD ペロブスカイトPV開発部の金子幸広さん

「軽くて曲がる太陽電池」がガラスと一体に

今回の「発電するガラス」で、ガラスと組み合わせて使われているのが「ペロブスカイト太陽電池」というものだ。

まずペロブスカイト太陽電池は、原子がどんな形で並んでいるかという構造を指す「ペロブスカイト構造」が名前の由来。特徴は軽くて柔らかい太陽電池として使えるという点で、「曲がる太陽電池」といった表現もされる。日本発の技術であり、低コストで作れることも利点だ。

曲がる太陽電池を作れるのは、ペロブスカイト太陽電池になる結晶が、有機材料と無機材料のハイブリッド構造だから。

ペロブスカイト太陽電池は、有機材料と無機材料のハイブリッド構造

「有機材料ってどんなものかというと、ビニールなどの柔らかいものをイメージしてください。加工性や柔軟性が高いのが特徴です。一方の無機材料は鉄板など硬いものです。この有機と無機の2つの特性を併せ持っているのがペロブスカイトです」(金子さん)

無機材料としての特性があるため発電性能が高く、有機材料の特性を持っているため、フィルムなどに塗れば薄くて軽くて曲げられる。液体が原料のため、何かに塗ればそれが太陽電池として機能するのだ。

「ちなみに現在、一般的に皆さんがよく目にしている、屋根に載っている結晶シリコンの太陽電池は、硬くて曲げられない無機材料です。非常に変換効率が高いのだけれど、塗って気軽に作ることはできないといったデメリットがあります」(金子さん)

建材として使うことをめざす。今まで太陽光パネルを導入できなかった場所に導入する

ペロブスカイト太陽電池は、世界中の様々な企業が研究開発している。その中で金子さんが目指しているのは、窓などのガラスに内包させて、建材として利用できるようにすることだという。

ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池

「様々な企業のお客様とお話ししていると、企業として脱炭素にどう取り組むかを課題としている声をよく聞きます。そのため、例えばビルをお持ちの大企業の場合は、屋上などに太陽光パネルを設置することを考えます。けれども屋上に上ってみると、既にエアコンの室外機などがたくさん置かれていて、太陽光パネルを置くスペースがありません。『それでは、どうすればいいの?』という企業が少なくありません。そこで、ビルの窓ガラスを、ペロブスカイト太陽電池に置き換えればよいのではないか、というのが我々の提案です」(金子さん)

太陽光パネルは、既に日本中の様々なところに設置されている。新規に太陽光パネルを設置する大規模なスペースが、日本には多くないのだ。そこで、今まで太陽光パネルを設置できなかった窓ガラスに、新設していこうという話だ。そして、こうした垂直面に設置する太陽光パネルとして、現状での最適解はペロブスカイト太陽電池だろうというのが、同社の見解だ。

では、ビルの窓ガラスを、ガラスに内包したペロブスカイト太陽電池に置き換えた場合に、どれだけの効果が見込めるのか。同社による10階建てのビルに太陽電池を設置した場合の試算がある。

まず屋上の余剰スペースには、135m2の従来型の結晶シリコンの太陽光パネルを設置する。これは、従来型の方が発電効率が高いからだ。だが、屋上の太陽光パネルの発電効率は、昼の12時がピークとなる。現状、ほとんどの太陽光パネルは、同じように昼前後にたくさん発電するよう設置されている。買う側の電力会社からすれば、晴れた日の真昼の電気は十分に賄えていることから、発電したビル側が売電しようとしても、価格が低く設定されてしまう。

10階建てのビルに太陽電池を設置した場合の条件

前図のビルにおける、1日の発電量の推移。真昼以外にも発電できる

そこで、東面と西面の窓ガラスにペロブスカイト太陽電池を導入する。すると、発電のピークは、屋上や平地に置かれている太陽光パネルとは異なる時間帯にシフトできる。午前中はビルの東面で発電し、昼下がりには西面で発電できるからだ。

「発電効率は、従来の結晶シリコン方式の太陽光パネルよりも低くなるかもしれませんが、売電を考えた場合には有利になる可能性が高まります。また、ビル内での電気の自給自足を考えた場合にも、朝から夕方まで一定量の発電が見込めるため、これまでの真昼ピークの発電ソリューションよりも、用意する蓄電池が少なく済む可能性も高いです」(金子さん)

従来の太陽光パネルは黒いけれど、ペロブスカイトは透明でもOK?

ビルの窓ガラスにペロブスカイト太陽電池を設置するという提案は、とても良さそう。だが現在、屋根に設置されている結晶シリコン方式の太陽光パネルは、表面が真っ黒だ。ビルなどの窓ガラスにペロブスカイト太陽電池を使うと、太陽光が遮断されて、部屋が暗くなってしまうのでは? との疑問も生まれる。

「太陽の光を一番吸収するのが、黒なんです。そのため太陽のエネルギーを集めるのには、太陽光パネルを黒にするのが最も効率的です。この点は、ペロブスカイト太陽電池も同じです。ただし、もちろん窓として使うためには、黒いままでは部屋が暗くなってしまいます。そのため、ペロブスカイト太陽電池をストライプ状に塗って、あたかも透明なガラスのように見せることができます」(金子さん)

同社が開発しているペロブスカイト太陽電池は「透明でも発電できる」のではなく、黒い部分と透明な部分を少しずつ作り、「あたかも透明に見せることができる」というイメージだ。

こうしてストライプ状にすることで、ガラス面の反対側が見えるようにできるのも、インクのように塗れば発電するペロブスカイト太陽電池だからこそ。従来の結晶シリコンの太陽電池では難しい加工なのだ。

ガラス型ペロブスカイト太陽電池の描画の自由度の高さを生かしてアートを表現したプロトタイプを2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に展示している

結論としては、パネルを真っ黒にした方が発電効率は高い。ただし、ペロブスカイト太陽電池を工夫して塗れば、それほど発電効率を落とさずに反対側が透けて見えるように作れるということ。

「例えばオフィスビルへの導入を考えた場合には、窓ガラスの目線の高さなどには透明度が求められると思います。一方で足元の方は、透明度が求められないと考えています。そうしたグラデーションをつけられるのも、ペロブスカイト太陽電池のメリットです」(金子さん)

オフィスビルへの導入イメージ

一般住宅向けにもペロブスカイト太陽電池は有用なのか?

ペロブスカイト太陽電池を、ビルへ導入した場合のメリットは、かなり具体的に分かってきた。それでは一般住宅向け、例えば戸建て住宅の屋根に設置すると、どれだけ有用なのだろうか?

ペロブスカイト太陽電池の一般住宅への導入メリットはあるのか?

「現状では、個人宅用途のペロブスカイト太陽電池に関しては。お使いいただきたいというお客様は導入できますが、はたしてどれだけのメリットがあるかと考えると、難しいのが実情です」(金子さん)

従来の結晶シリコンの太陽電池は、導入されてから数十年の技術的な積み重ねがある。発電効率も高く、現在進行形で発電効率が高められている最中だ。そのうえ、一般的な戸建て住宅の屋根には、設置スペースが十分にある。金子さんの見解によれば、現状ではコストが高く、結晶シリコン方式よりも発電効率が低いペロブスカイト太陽電池は、屋根の耐久性に問題のない戸建て住宅であれば、ビルへの設置に比べて導入するメリットは少ないとのことだ。

「ただし集合住宅への導入は、非常に価値があるだろうと考えています。というのも集合住宅の場合は、バルコニーが共用部であるためです。またバルコニーであれば、透過性もそこまで求められません。そうした場所でお使いいただくのには、良いと考えています」

もちろんペロブスカイト太陽電池の研究開発が急激に進めば、話は変わってくるのだろう。ペロブスカイト太陽電池の開発は、従来の結晶シリコン方式と比べれば、まだ始まったばかり。それにも関わらず、研究開発段階でのエネルギーの変換効率は、結晶シリコン太陽電池に匹敵するものができたという発表が同社からもあった。パナソニックHDのペロブスカイト太陽電池のテストマーケティングは、来年の2026年度から始まる予定という。今後、ますます変換効率が高まっていき、個人でも導入メリットが感じられるくらいに進化することを期待したい。



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