🧠 概要:
概要
株式会社wevnalが主催したセミナー「電話もチャットも今が変革期!!〜AI駆動型開発チームの軌跡。爆速事業立ち上げ〜」では、生成AIを活用した新規プロダクト「BOTCHAN AI」と「BOTCHAN AICALL」の開発事例について説明されました。ビジネスサイドと開発サイドがどのように連携してAIを活かし、少人数で効率的に開発を進めているかについて、事業責任者の森川智貴とCTOの鈴木和男が講演しました。
要約(箇条書き)
- セミナーの目的: 生成AIをフル活用する方法と事業開発体制を紹介。
- 新規プロダクト: オンライン接客AIエージェント「BOTCHAN AI」と電話接客AIエージェント「BOTCHAN AICALL」の開発事例を紹介。
- 少数精鋭チーム: ビジネスサイド1名、開発サイド3名で構成。
- 役割の兼務: ビジネスサイドが市場リサーチやプロダクト開発の役割を多岐にわたって担当。
- 生成AIの活用:
- 市場調査には「Felo」や「Zoom」を使用。
- プロトタイプの開発には「Vercel v0」を活用。
- 本番実装には「Cursor」と「Devin」を利用。
- 開発生産性向上: AIを活用することで生産性が2〜7倍に向上。
- エンジニアの重要性: AIを使いこなすことがエンジニアの今後の生存戦略として重要。
- レベルへの段階: 自らコードを書く段階からAIを利用して協働する段階までの成長を促進。
- 質疑応答: ビジネスと開発の連携の重要性や、チームメンバーへのAI活用の啓蒙方法について言及。
- 今後の模索: 体制をさらに強化すべく、社内での生成AIの活用度向上の取り組みを続行中。
このセミナーは、生成AIを活用した開発の実践例として、他の企業や開発チームにも示唆を与える内容となっています。
ビジネスにおけるAI活用が急速に進む昨今、wevnalではAI駆動型開発によって、オンライン接客AIエージェント「BOTCHAN AI」と電話接客AIエージェント「BOTCHAN AICALL」という2つの新規プロダクトを開発しました。
今回は、この2つのプロダクト開発の事例をもとに開催したエンジニア向けセミナー「電話もチャットも今が変革期!!〜AI駆動型開発チームの軌跡。爆速事業立ち上げ〜」での講演内容をお届けいたします。
当日はAIエージェント事業責任者の森川智貴とCTOの鈴木和男が登壇。生成AI時代の事業開発体制や生成AI駆動型開発のポイント、生成AI時代のエンジニア生存戦略についてお話ししました。
<プロフィール>
森川 智貴
AIエージェント事業開発室 部長慶應義塾大学卒業後、医療ITコンサルティング会社へ新卒入社。IoT×Healthcareの「未病ハウス」実証実験、自社開発心電図ウェアラブルデバイスのマーケティング等に従事。2018年8月、「BOTCHAN」立ち上げメンバーとしてwevnalへジョイン。現在は、生成AIを活用したSaaS事業「BOTCHAN AI・BOTCHAN AICALL」の事業責任者へ就任。AI論文解説に特化したメディア「AI-SCHOLAR」を立ち上げ、日本一のAI論文専門メディアへ。*個人インタビューはこちら
鈴木 和男
執行役員CTO早稲田大学を卒業後、ERPパッケージベンダーにて大企業向け会計ERPパッケージの設計/開発や、プロジェクトマネジメントに従事。 その後不動産テックベンチャーでのカスタマーサクセスプラットフォームの立ち上げを経て、株式会社wevnalに入社し、現職に就任。 現職では技術戦略の策定/遂行とエンジニアの組織、採用戦略の策定/遂行、情報セキュリティ戦略の策定/遂行を担当。
生成AI時代の事業開発体制(話者:森川)
wevnalにおける生成AIを活用した0→1フェーズの事業開発体制は、ビジネスサイド1名、開発サイド3名と少数精鋭のチーム編成です。
私が担うビジネスサイドでは、市場リサーチからプロダクトロードマップの策定までを担うため、一人でプロダクトオーナーやPdM、セールスなど複数の役割を果たしていると言えます。
これほどまでに多くの役割を兼務できるのには、生成AIの存在が大きいです。現在ではさまざまな特徴を持った生成AIがあるため、目的やビジネスシーンによってしっかりと使い分けることが大事と言えるでしょう。
例えばリサーチの段階では、どの程度の市場規模があるのか、どんな課題があるのかを「Felo」で調べ、ドメインエキスパートに「Zoom」で生の知見をインタビューします。その内容を「ChatGPT o1 Pro」に読み込ませて、顧客ニーズや課題を整理します。
開発においては「何を開発するのか」をある程度明確にしておいた方が、開発メンバーは爆速に着手できるので、ビジネスサイドでプロトタイプの開発をしています。ここでは「Vercel v0」を活用してUIモックアップを作成しました。
最後に開発サイドが「Cursor」と「Devin」で、データベースやAPIのつなぎ込みなどを含め本番実装するのが、wevnalにおける生成AI駆動型開発実装です。
私は“非エンジニア”ですが、3回に渡るドメインエキスパートへのインタビューを経て、2日間でモックアップを作成できました。
途中、約60回の修正をかけましたが、おかげで各種タイルがどのような目的でアウトプットされているかが、どんな職種の人でもひと目でわかるようなUIUXに仕立て上げることができたと自負しています。
しかしこれは、あくまでフロントエンドの作り込みで、見える部分のみに過ぎません。本当にお客様に提供するためには、セキュリティやインフラ、データベース、APIなどの作り込みが必要で、そこには開発サイドの協力が必要です。
では、開発サイドでどのように生成AIを活用しているのか、鈴木に話してもらいます。
生成AI駆動型開発のポイント(話者:鈴木)
現在、私たちは「極力、AIに仕事をさせる」開発体制を構築しています。
これにより、チームの開発生産性は2〜7倍に向上しました。この数字は、GitHub上におけるコミット数、変更コード量の推移を根拠にしています。以前はあまり変動がなかったのですが、現在の開発体制にした2024年12月以降は明らかに生産性が向上し、コミット数と変更コード量が増えています。
具体的には以下のポイントを押さえ、効率を高めています。
まず、AIにドメイン知識を与えます。これによりAIが稼働しやすくなり、ドキュメントの集約によって新メンバーが入ってきたときにもオンボーディングが容易になります。次に、開発タスクの内容によって「Devin」を使うか「Cursor」でVibe Codingにするかを決めながら開発タスクを進行。そして、「GitHub Copilot Code Review」と「Devin」を用いたAIでのダブルチェック後、さらに人間がチェックしてマージします。
今回の開発プロセスにおいてコードとレビューで「Devin」を使用していますが、実は私たちは日本でトップクラスのDevin活用企業で、Devin開発チームともコミュニケーションをとっています。当社で使用した内容をフィードバックして改善に活かしてもらうことで、ポジティブな関係性を築いているのです。
生成AI時代のエンジニア生存戦略(話者:鈴木)
NVIDIAのCEOであるJen-Hsun Huangが2023年の台湾大学の卒業式で話していた言葉が印象に残っているので紹介します。
「AIが人の仕事を奪うのではなく、AIをうまく使える人が人の仕事を奪う」
例えばイラストレーターの仕事を奪っているのは、画像生成AIではなく、それを使いこなせるAI絵師と呼ばれる人たちです。同様の現象がほかの業界でも起きており、より進行していくことが予想されるので、エンジニアにおいてもAIを使いこなせるようになることは大切と言えるでしょう。
AIを使いこなすにあたり、まずは自分がどのレベルにいるのかを確認しつつ上を目指した方が良いと考えます。
Level 1は自分で調べながらコードを書いていた状態から、AIをNavigatorにしてペアプロができるようになること。この段階でも意外と少ないのですが、やり方さえ身につければ到達できます。
これよりやや難易度が高いのが、AIをDriverにしてペアプロができるLevel 2。ここまでできればだいぶ生産性が上がります。より生産性を上げたいのであればLevel 3以降を目指しましょう。
Level 4になると、一人でユニコーン企業を作ることができるという人もいます。AIをしっかり活用すれば少人数でプロダクト開発の全行程ができるので、AIをかなり使いこなせるエンジニアとして怖いものなしになるでしょう。
質疑応答
Q. 「ビジネスサイドである程度の成果物を作ろう」という動きは、ビジネスサイドが主体的に動いていたのか?開発側のサポートもある程度あったのか?自分のチームでもそんな動きもあればいいと思いつつ、最初のハードルが高いように感じています。
森川:
ビジネスサイドが主導しつつ、開発チームの強力な後押しもありました。
きっかけですが、当初私たちはマルチプロダクト戦略のもと、既存プロダクトへの“選択と集中”のため「新規プロダクトは作らない」という方針でしたが、生成AIの波で「再び攻めよう」と経営判断を転換しました。
ビジネス側(私)がどの市場の何の課題をどうやって解決したいのか、「何を作るか」を定義し、開発側(鈴木)がDevinを使って高速にコード化するという役割分担です。
最初のハードルは、要件を明確にし、AI開発ツールの操作を独学で習得することでした。動画学習と実機検証で乗り越え、短期間で試作品を完成。実践してみて、無知と知の差は大きく、知ってしまえば学習コストはそこまで高くないことを実感しました。
その後、2025年1月に社内研修を実施し、ノウハウを共有。触発されたメンバーは積極的に生成AIを活用し始め、Notionに活用DBが蓄積され、Slackチャンネルで活用事例や業務削減時間の発表など、コミュニティとしての活性化も始動したことで横展開が進みました。
つまり、「ビジネスが旗を振り、開発がエンジンを積む」といった形の二人三脚で初速を出し、社内研修と知恵の蓄積とコミュニティ形成で裾野を広げた形です。
Q. チームメンバーにAIを使ってもらう啓蒙はどのように実施すればよいですか?手段として「ただコードを書けるだけではやばい」という焦らせ型や「みんなで使い始めましょう」という協力型があると思うのですが。
鈴木:
ただ「生成AIを利用してコードを書け」という伝え方は、ハレーションが起きるのでやめたほうが良いと思っています。私は「こういう風に使うと良いよ」とアドバイスをし続け、社内にフォロワーを増やしていきました。
例えば、私はwevnalに「Devin」を持ち込みましたが「Devinを使ったらこんなことができるよ」と伝え続けたところ、「Devin」でUber Eatsを注文するなど、ユーモアのある使い方をきっかけに、みんなで少しずつ慣れていってくれました。
生成AI活用体制を強化するためさらなる模索中
wevnalには30〜40人のエンジニアがおり、体感では現在10〜20%のエンジニアが「Devin」を積極的に活用して使いこなしてくれています。当社でもドキュメントなどを準備したり、教育体制を強化したりと、社内での生成AIの活用度向上のために模索中です。
AIを使った事業や開発に興味のある方はぜひ今のタイミングで仲間になってほしいです。お気軽にお声がけください!
Views: 0